管理職にとって「難しい」という印象が強い人事評価。上司として部下をどのように評価したらいいのでしょうか。よくある失敗は、6つのパターンに分けることができます。人事評価をするすべてのマネージャーの必携書『この1冊ですべてわかる 人事評価の基本』(西尾太/日本実業出版社)から代表的な失敗例と防止策をご紹介します。

(1)ハロー現象
ハロー(halo)とは、後光や光背のことです。たとえば、体裁のきれいなレポートは内容までよく見えたりしますよね。人事評価における「ハロー現象」とは、評価される人の全体的印象(ハロー)によって幻惑され、個々の評価要素を歪んで判定してしまうこと。好印象の部下は仕事ぶりも良く見えたりしますが、必ずしもそうとは限りません。大事なポイントは、「好き嫌い」で判断しないことです。
防止策としては、「相手への先入観や偏見を取り除くこと」。同一のメンバーを一度に全評価せず、さまざまな要素ごとに複数メンバーを評価する、具体的な事実に基づき要素ごとに評価する、といった方法が挙げられます。
(2)寛大化・厳格化現象
評価には、甘辛がつきものです。「寛大化傾向」とは、甘くなりすぎること。これは「部下を高く評価してあげたい」という気持ちが強いときや、「評価者がメンバーをよく理解していないとき」などに起こりやすくなります。
それとは逆に、厳しく評価しすぎることを「厳格化傾向」といいます。これは寛大化傾向を意識しすぎるときに起こりがちです。また、仕事に厳しい人は、部下の評価も過度に厳しくなる傾向があります。
防止策としては、「具体的な事実に基づいて各要素に分解して評価すること」。また、「日常的に観察すること」「評価者訓練や評価会議などで他の評価者の評価と自己の評価を比較検討すること」などが挙げられます。他の評価者ならどのように評価するのか。他者の視点と目合わせすることも意識してみましょう。
(3)中心化傾向
中心化傾向とは、評価点が中心に集中すること。優劣の差があまり出ず、いわゆる「どんぐりの背比べ」の状態になることをいいます。要は、メリハリのない評価をすることですね。これは、評価者が評定差を出すことをためらい自信がない場合や、被評価者をよく知らない場合に起こりやすくなります。
防止策としては、日頃から部下の職務行動状況などに関して「具体的な事実」をメモしておくこと。また、部下との間にオープンマインドな人間関係をつくり、はっきりモノが言える職場環境づくりに努めることなど挙げられます。
(4)論理的誤差
論理的誤差とは、評価者が論理的に考えるあまり、関連のありそうな評価要素には統一、あるいは類似した評価を下してしまうこと。よくあるパターンは、「成果が出ているから行動もできているだろう」といった考えで同様の評価にしてしまうこと。「ここがよいから他もよし」はNGです。
防止策としては、「評価根拠となる事実をチェックし、同一根拠でしか評価し得ない要素についてはよく吟味すること」。また、「全被評価者をひとつの要素で一通り評価した上で次の要素に移ること」などが挙げられます。
(5)期末誤差
期末誤差とは、評価時期に近い「期末の出来事」だけを重視して評価してしまうことを指します。直近の出来事は印象に残りやすいため、期末のみ頑張った被評価者はずっと以前から頑張っていたと錯覚してしまいがちです。
防止策としては、「日頃から部下の職務行動状況などを具体的にメモしておくこと」。また「評価期間全体で評価判断をすること」や「直近の出来事だけに惑わされないこと」が大事なポイントです。
(6)対比誤差
対比誤差とは、評価者の専門的分野については厳しく、非専門的分野については甘くなる傾向をいいます。要は、自分がよく知っていることは厳しく評価し、知らないことは甘く評価すること。大事なポイントは、「自分」を基準にしないことです。
防止策としては、「評価者自身が自己の能力・特性について客観的に認識すること」。自分と反対の特性を持つ部下や、自分と同じ経験を有する部下の評価については、特に公正性に注意するようにしましょう。
クライアントの評価会議でよく見るのは、「寛大化・厳格化傾向」や「中心化傾向」です。「厳しい評価はつけづらい」とおっしゃる評価者は多いものです。「ビビっている」評価者も多く見かけます。部下が怖くて厳しい評価ができなくて、甘すぎる「寛大化傾向」やメリハリのない「中心化傾向」になってしまうことが多いようです。
また、「部下の評価に自信がない」「メンバーのことがよくわからない」という人も、寛大化・中心化傾向になりやすい傾向があります。
「いやー、厳しい評価をするとモチベーションが下がってしまうでしょうから」とおっしゃる方が多くいますが、「そういうあなたがモチベーションを下げているんですよ」と言いたいところです(実際申し上げます)。
その一方で、「いま高い評価をつけたら次からハードルが上がってしまうので」「高い評価をつけたら天狗になってしまうので」といった理由で、過度に厳しい評価をつける人もいます。「いやいや、優れているなら、しっかりそれを評価してくださいよ」と言いたくなります(実際申し上げます)。
さらには、すべての項目に「A」(OK)という評価をつけている評価者もよく見かけます。人はそれぞれ「よい点」と「課題点」があるものです。にもかかわらず、すべての項目を「それでOK」と評価してしまっているのです。それでは、人事評価そのものが、まったく意味のないものになってしまいます。
部下の多くが求めているのは、「公平・公正」な評価です。これを実現するためには、日常のマネジメントが重要。普段から部下をよく観察し、理解し、定期的に面談などをしていないと、適切な評価につながりません。上記の「6つのエラー」を意識し、自身の評価の仕方を改めて振り返ってみましょう。
拙著『この1冊ですべてわかる 人事評価の基本』(西尾太/日本実業出版社)では、評価者としての正しい態度・考え方、組織に合った評価指標の選び方、評価面談や評価会議の進め方なども詳しく紹介しています。こちらも参考にしてみてください。

『この1冊ですべてわかる 人事評価の基本』
西尾太(日本実業出版社)
「人事評価」をするすべてのマネージャーの必携書。本書を読めば、人事評価制度の意義と目的、評価者としての正しい態度・考え方、組織に合った評価指標の選び方、タスクマネジメントや目標管理の手法 、評価面談と評価会議の進め方、部下のポテンシャルを引き出すコミュニケーション方法などが一気通貫に理解できます。

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