2020.01.24
「頑張っていること」を評価したい、
という気持ちを持つのは悪いことではありません。
しかし、その気持ちを本当に評価に反映してしまうと、
社員の不満の元になってしまいます。
とある企業の営業部に所属しているAさんは、勤続年数は長いものの、成績は常に横ばいでした。また、自身のスキルアップも上手くいっていません。決して落ちこぼれになっているというわけではありませんが、誰の目から見ても成長しているとも言えませんでした。
ただ、本人は本を読んで勉強をしていたり、まめに営業先にコンタクトをとったりなど、決して怠けていたわけではありません。Aさんの所属している企業は「成果と行動を評価の対象にする」という人事ポリシーを掲げていましたが、しっかり努力をしている様子を見た評価者は、「頑張ってるし…」と給与を上げようと考えました。
上記は単なる例に過ぎませんが、実際にあなたが評価者だとしたらどのようにするでしょうか。もしかしたら「人事ポリシーに反しているのだから給与を上げるわけがない!」と強く思われるかもしれません。
しかし、Aさんの同僚はどんどん給与が上がり、昇進していっています。Aさんがその状況を見て自分も頑張らなきゃと努力していることも知っています。そしてAさんは社内でも良き後輩、良き同僚、良き先輩として立場を確立しており、悪い噂は聞きません。そのような状況でも、「頑張っていること」を評価しないでいられるでしょうか?
いささか後出しの条件を出してしまいましたが、Aさんがどのような人物が想像しやすい、という方は多いと思います。もしかしたら身近にいる、という方もいらっしゃるかもしれません。どのように評価するのが正しいか、迷い始めてきたのではないでしょうか。
答えを申し上げると、人事ポリシーに反しているのであれば給与を上げるべきではありません。せっかく策定した人事ポリシーや、それに則って作られた評価基準に反することは社員の不信感に直結します。「なんだ、結果を出さなくても結局給与上げてもらえるんだ」とモチベーションが下がる原因にもなります。
もしかしたら、中には「頑張っていることを評価することもある」と人事ポリシーに盛り込んでいたら、評価に加えていてもいいのだろうか?と考える人もいるでしょう。その通り、人事ポリシーに盛り込んでいるのであれば、「頑張っていること」を基準に評価しても良いでしょう。
しかし、どのような条件付きであっても「頑張っていることを評価する」と人事ポリシーに盛り込むことはあまりお勧めしません。なぜなら、「頑張っている」という評価は個人の主観や感情が多分に入っているからです。それは公正な評価とは言えないため、社内で不満が生まれる可能性が高くなります。その場合でも結果として社員全体のモチベーションが下がる原因に。パフォーマンスを上げることより評価者に気に入られることを重視するものも出てくるかもしれません。企業にとって不利益な結果にしかならないと断言して良いでしょう。
もちろんAさんはしかたがないからこのままで、と割り切らなければならないかというと、そうではありません。部署の異動や社内研修の実施など、様々な対策が考えられます。大切なことは、「評価者の主観であると思われる基準で評価をしないこと」です。
「頑張っていることを評価すること」のいささか極端な例をお出ししましたが、「あいつは頑張っているから」とひとりの社員をひいきしてしまった結果、企業が危機に陥ったという事例は意外と少なくありません。とくに、ワンマン社長が仕切っている中小企業では極めて危険です。どんどん昇進していった結果、成長しないまま実力に見合わない地位を手に入れるとどうなるか――想像に難くないでしょう。最悪の事態を防ぐために、評価において「頑張っている」という言葉は禁句にすることをおすすめします。
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ー「なぜ、あの人が?」
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自社に即した人事ポリシーによって意識をすり合わせることができれば、
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この状況を改善しようとよくやりがちなのが補填的採用。
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最近の検証で、職場に「ホーム感」を抱いている人材は、
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・「ホーム感」とは何なのか
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この記事では以上の2点を解説していきます。
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優秀な人材を見つけても選考途中の辞退や内定の辞退が発生する企業が存在します。
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