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失敗しがちな「MBO」の2つの原因

PDCAサイクルを回しメンバーの成果評価につなげていく際、大きな効果を発揮する仕組みがMBO(目標管理制度)です。ただし、適切に運用するには2つの注意点があります。人事評価をするすべてのマネージャーの必携書『この1冊ですべてわかる 人事評価の基本』(西尾太/日本実業出版社)から、その改善策を紹介します。

MBO(目標管理制度)とは?

あなたの会社にはMBO(目標管理制度)が導入されているでしょうか。ある調査では、78%を超える企業で導入されているといいます。マネージャーもしくはメンバーがPDCAを年次・半期(場合によっては四半期)で適切に運用し、成果の評価につなげていくためのシステムがMBOです。この仕組みをタスクマネジメント及び「成果の評価」に活用している企業は多いということでしょう。

ただし、その趣旨や意味合いが十分に理解されずに運用されているケースも散見されます。そもそも「目標管理」とは、どのようなものなのでしょうか。

目標管理(Management by Objectives and Self-control:MBO)は、1954年に経営学者ピーター・F・ドラッカーが著書『現代の経営』の中で提唱した、工場での肉体労働を主体とした命令に基づくマネジメントではなく、知的労働に適したマネジメントの手法です。

MBOとは「目標と自己統制によるマネジメント」という意味で、命令や強制ではなく、自主性や自己統制に基づいて目標を達成していく仕組みとされています。ですから本来的には「メンバーが自ら目標を定め、そこに向けて自身でプロセスを管理していく(セルフコントロール)」ためのものです。

目標管理では、組織のメンバーそれぞれが自身の所属する組織の目標を自身のものとして理解し、それを達成するために自身がどのような目標を設定したらよいか考え、上司と、あるいはチームで相談した上で目標を決定します。
そして、メンバーそれぞれが自身で立てた目標を達成するための計画を立案し、自ら進捗を管理し、目標を達成することにより、組織の目標も達成される、というものです。

しかし、残念ながら、うまくいっていないケースが多く見受けられます。それには主に2つの原因があると私は考えています。

「目標が上から落ちてくる」「目標の達成基準が不明確」

原因① 目標がズドンと上から落ちてきて、メンバーが自ら考えたものではない

前述したように、MBOとはそもそも「命令」や「強制」ではなく、「自主性」や「自己統制」に基づいて、目標を達成していく仕組みです。これにより目標は、「上から押し付けられたもの」ではなく、「メンバーが自身で考え納得したもの」になるため、モチベーションを高く保って仕事に取り組むことができるのです。

しかし実際には、目標が上からズドンと落ちてきて、メンバー自らが考えたものではないケースが多く見られます。したがって、メンバーは主体的になれず、やる気もおきない、というわけです。これではMBOを導入している意味がありません。このようなパターンが、MBOのよくある失敗例の1つです。

メンバーそれぞれが自身の所属する組織の目標を自身のものとして理解し、それを達成するために自身がどのような目標を設定したらよいか考える。つまり「メンバーが自ら考える」という部分こそが、MBOの肝なのです。あなたの会社では、どのように運用されているのか。いま一度振り返ってみてください。

原因② どうなったら目標達成なのか、「目標の達成基準」が不明確

目標というのは、「達成基準が明確であれば明確であるほどよい」ものです。達成基準とは、「どうなったら目標達成であるといえるのか」という基準を意味します。いつまでに、どこにいくか、ということが明らかであれば、そこに到達するための計画や道筋が明確になってきます。

一方、漠然とした目標では、後で達成できたかどうかの評価ができなくなります。私がよく用いるたとえ話ですが、「西に向かって頑張って走ります」という目標では、「いつまでにどこに行けばいいのか」がわかりません。さあ評価しようという段になって「どこにいるの?」「名古屋です」「えっ、大阪じゃないの?」「名古屋だって西ですもん」といった不毛な議論に陥ってしまいます。

「来月15日にJR新大阪駅の中央口の新幹線改札口に集合する」といった、達成できたかどうかの判定が明確になるものが達成基準にすべき目標です。到達点を明らかにすればするほど、目標は達成しやすくなるのです。

MBOは、何を目標として何をするのか、社員それぞれが考えて行動することが求められる、とても意義ある仕組みです。原因①と②、この2つの状況に陥らないよう、運用においては十分に留意する必要があります。

目標管理の「3つの考え方」と「期待される効果」

目標管理には、基本となる3つの考え方があります。

① 社員の能力・行動意欲を信頼する(性善説)
人は「やらされる」という気持ちより、「やろう」という気持ちのほうが、大きな力を発揮するものです。主体性・納得性を通じ、目標達成のために自ら創意工夫することが期待できます。

② 期待する成果を明確にする(貢献を引き出す)
あらかじめ期待する成果を明確にして実施することが、メンバーに「仕事を通じて貢献している」という実感を持たせることになります。個々人の貢献が認められることによる満足感が、組織全体の成果をさらに押し上げることにつながるのです。

③ 全体目標と個人目標の調和・統合を図る
人間の「成長」や「やりがい」「認められたい」「チャレンジ」などの個人的な欲求と、「より大きな業績をあげたい」という組織の目標とを統合し、同じベクトルに向かって仕事をしていくことができます。

MBOはしっかり運用されれば、次のような効果が期待できます。

マネージャーは、「なぜこれを行うのか」をしっかりと認識し、メンバーに伝える必要があり、その実践のためにはPDCAを回す必要があります。PDCAを回していくためのツールとしてMBOを活用し、業績向上を目指していきましょう。

拙著『この1冊ですべてわかる 人事評価の基本』(西尾太/日本実業出版社)では、目標管理制度における目標設定や目標管理の手順と指標、成果評価の留意点なども紹介しています。こちらも参考にしてみてください。


『この1冊ですべてわかる 人事評価の基本』
西尾太(日本実業出版社)

「人事評価」をするすべてのマネージャーの必携書。本書を読めば、人事評価制度の意義と目的、評価者としての正しい態度・考え方、組織に合った評価指標の選び方、タスクマネジメントや目標管理の手法 、評価面談と評価会議の進め方、部下のポテンシャルを引き出すコミュニケーション方法などが一気通貫に理解できます。

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