2019.05.30
資金不足を理由に人事制度の策定を先延ばしにする企業は少なくありません。
しかし人事制度とは本来、資金の有無にかかわらず策定されるべきものです。
まずは会社にとって人事制度がどのような存在なのかを理解してください。
会社の規模が一定以上の大きさになると、規模感や会社の方向性などの現状にマッチした人事制度の存在が必要になります。しかし、「人事制度が必要なのはわかっているけど、まだ資金に余力がないため足を踏み出せない」と、資金不足を理由に人事制度の策定を先延ばしにしている企業は少なくありません。
資金不足を理由にした先延ばしは、会社経営という視点の中で人事制度の価値が低いことの裏返しです。私たちのような人事に関するプロはもちろん、人事制度の必要性を痛感している経営者や人事担当者は、人事制度の策定は何を置いてでもまず取り組むべき課題だと知っていますから、賃料の安いオフィスに引っ越してでも、経営者の給料を減らしてでも、銀行に融資を受けてでも、しかるべき時が来れば人事制度の策定に取り掛かります。こういった実例を見ていると、資金不足というのはただの言い訳に過ぎないことがよくわかります。
「会社経営という視点の中で、人事制度の価値が低い」。今回の記事はこの一文の集約されているのですが、まずはどういうことか、分かりやすくたとえ話を交えながら解説していきます。
例えば、あなたが旅行中に乗っていた飛行機が、機械トラブルで砂漠のど真ん中に不時着してしまったとしましょう。通信環境は劣悪で、早期の救助は難しそうです。飛行機に積んであった備蓄品も残り少なくなり、このままでは乗客全員に脱水症状による命の危機が迫っています。
その時、一人の男がヘリコプターから降りてきました。手には何の変哲もないペットボトルのミネラルウォーターが、1本だけ握られています。私たちの前に降り立つと、男は次のように言いました。
「何とか皆さんを救助したいのですが、あいにく今の私には500mlのミネラルウォーター1本しかなく、皆さんの命を平等に救うことは難しそうです。そこで、このペットボトルをオークションにかけて、最高額をつけた方に進呈いたしましょう。現金がない方は生還後にお支払いいただいても構いませんし、またローンを組んでいただくことも可能です。」
さて、この時私たちに何が問われているかお判りでしょうか?それは、「自分の人生にいくら出資ができるか」です。自分が生き残った後、その男にいくらを支払うことができるのか、あるいはいくら支払ってでも生き残りたいと思えるのかを推し量りながら、周囲の人たちとのオークションに参加することになるのです。
例えば隣の人が100万円の値を付けた時に身を引いてしまうようであれば、極端な話、あなたは自分のこれからに「100万円の価値はない」と判断したことになります。仮に上記のような状況に陥ったとして、100万円で身を引く方は少ないはずです。ローンを組んででも、最高額をつけようと努力するのではないでしょうか?
しかし、ここで考えてほしいのが、男の手に握られているミネラルウォーターはコンビニに行けば100円で買えるような普通のミネラルウォーターだということ。平常時であれば100万円はおろか、1000円の価値すらもない商品なのです。しかし、状況が変われば、あるいは真価をしっかりと理解できれば、なんとかそれを得ようとたとえ高額であっても手に入れようとします。極端ではありますが、これがお金と物の価値の関係です。
さて、話を人事制度に戻しましょう。人事制度は会社が従業員に求めるものや会社が目指す方向性などを明らかにする、非常に重要なツールです。逆になければ、社員の業務に対する姿勢がバラバラになり、大量離職や業績の悪化などが起こる可能性もあります。まさに会社の命といえる存在なのです。
資金不足を理由に人事制度の構築に二の足を踏んでいる経営者は、人事制度の有無が会社の存続の関わることを理解できていないため、優先順位が低くなってしまっているのです。「苦しい資金調達をしてまで、構築するべきものではない」と。
しかし、これは砂漠のど真ん中に取り残されているのに、「たかがミネラルウォーターに100円以上は出したくない」といっているようなもの。先ほども言いましたが、人事制度がないことによって懸念される問題は人材の大量流出や業績の急落など、いずれも会社の命に直結するものです。人事制度の真価をしっかりと理解できていれば、砂漠におけるミネラルウォーターの価値の急騰と同様、融資を受けてでも人事制度の策定を進めなければと感じるのではないでしょうか。
具体的に人事制度があると会社はどのような変わるのか、記事を紹介いたしますので、併せてご参考にしていただけますと幸いです。
人材育成と離職率の低下に必要不可欠な「キャリアステップ」。あるとどんなメリットがあるの?
なぜ人事評価制度がないのか。人事評価の基準を作ることのメリットとは?
人事という職に就いたならば、読む“義務”がある1冊
成果主義、職務主義、年俸制、人事部廃止… 90年代から変わらぬ「人事」の構造、変わらぬ平均給与額が、日本を世界トップクラスの「社員が会社を信頼しない国」へと導いたのです。
なぜ変革が進まないのか、その背後に潜む「考え方」の欠如とは何でしょうか?
中学時代に習ったこと、覚えてますか?
多くの人にとっては、すべての勉強の基礎になっている大事な「当たり前」のことですが、思い出せと言われても思い出せる方は少ないでしょう。
この「この一冊ですべてわかる 人事制度の基本」には、人事の当たり前が詰まっています。
ー「なぜ、あの人が?」
なぜ多くの企業で「評価基準」が曖昧になっているのでしょうか。
どうすれば給与が上がるのでしょうか。
11,000人超の人事担当者から絶大な支持を得るコンサルタントが、今まで9割の会社が明かさなかった「絶対的な指標」を初公開!
テレワーク時代には「ジョブ型」に留まらず、「超ジョブ型人事」が不可欠。
その一番の理由は、テレワークをはじめとするこれからの働き方には「監視しない事が重要であるから」です。
人事の“必須科目”を押さえる
プロの人事力
次のステージに向けて成長するためのキホン
人事担当者に必要な知識・学び方、仕事に対する心構え、業務との向き合い方、さらには人事マネージャー、人事部長へとキャリアアップするために必要な能力・スキルを一挙公開
いま再び注目を集めている「ジョブ型雇用」や「成果主義」は決して新しい考え方ではありませんが、これからの働き方を考える中では重要な要素です。 その実現のためにはジョブディスクリプション(職務記述書)が必要とされています。しかし、ジョブディスクリプションの策定や運用には、様々な課題も想定されます。 「働き方」「雇用のあり方」「管理のあり方」「評価のあり方」「給与・処遇のあり方」といった「考え方」そのものをどこまで変えるのか、といったことをよく考える必要があります。 今回は代表西尾から、これからの時代の働き方や評価についてお伝えしていきます。
若手・中堅クラスの社員に、会社はいったい何を求めているのでしょうか?
会社が求めているものを知れば、あなたの評価も上がるはずです。
人事制度の基本的な構成は「等級制度」「評価制度」「給与制度」の3つです。
面倒だからと策定を後回しにしている会社も多いですが、
社員を会社に必要な人材に育成するために、人事制度は欠かせません。
今回の記事で人事制度に意味を理解して、なるべく早いうちに策定しましょう。
人事は、様々な情報を取り扱います。
若手人事だとその万能感かプレッシャーからか、「勘違い」を起こすこともしばしば。
今回は、若手人事がうっかり陥ってしまう「勘違い人事」のパターンをご紹介します。
社員のモチベーションを上げたいと思った時、
効果的なのは社員が喜ぶ施策ではありません。
本当に必要なのは「働く考え方改革」であり、
仕事に対する意識の変革です。
社員から人事評価について不満が出てきた時、それは「問題点を洗い出すチャンス」でもあります。社員の側に立って話を聞くことで不満の原因はどこにあるのかを探し出します。伝えてもらえるのは良いことなのだと思い、しっかりと向き合うことが大切です。
働き方が多様化する中、週休3日制を導入する企業がでてきました。週休3日制は企業側としてメスを入れにくい「人件費」という大きなコストの削減を、印象を悪くすることなく実現する事ができます。また、社員側としても「会社以外で、他のキャリアを積むことが出来る」というメリットがあり、一見双方にメリットが有るように感じる施策です。さて、今回は、「週休3日制」のメリット、デメリットについて検証してみます。人事担当者は週休3日制を「どうやって運用」していくべきなのでしょうか?
働き方の変化に伴い、日本全体に副業という制度が広まりつつあります。
しかし、まだまだ副業人材を積極的に採用し始めている会社は少なく、普及したとは言い切れないのが実情です。なぜ、副業人材を採用する会社が少ないのか。
今回はその要因と、今後の人事部に必要なポイントについてご紹介いたします。