2025.12.09
人材獲得の中心的な手段といえば、やはり新卒採用。少子高齢化が進み、採用難が続く現在においても、それは変わりません。しかし、だからこそ問い直しておきたいのは「なぜ新卒採用をするか」という根本的な部分です。そして「消耗率」についても、しっかりと想定しておく必要があります。

新規学卒者の採用には、大学卒・大学院卒、専門・短大卒、高専卒、高卒採用があります。ただし、人手不足が深刻化する現在では、いずれの場合も一部の有名企業以外は採用難が年々進んでいます。そのため改めて考えておきたいのは「なぜ新卒採用をするか」です。
実は、この問いに対して明確に答えられる経営者や人事担当者はさほど多くありません。よく聞くのは「他社を経験していないので真っ白だから」「定着がいいようだから」といった理由ですが、それは本当でしょうか。新卒は3年以内に3割が離職するという「3年3割問題」は、もう長いこと日本社会の課題の1つとなっています。
近年では大企業であっても離職する若い世代も増え、ますます人材の流動化が進んでいます。新卒社員は「真っ白」「定着率が高い」というのは、単に中途採用者に対しての理念浸透策や入社後のフォローが行き届いていないだけではないでしょうか。
一度に入社してくる新卒社員には、比較的長期間で手厚い研修を組んでも、都度入社してくる中途入社者への教育は半日程度の入社時説明ぐらいしか行っていない。そんな話をよく聞きます。「真っ白」と「定着」は、単なるイメージのように思えてなりません。いま一度、新卒採用の意味を社内で考え、深めてもらいたいと思います。
新卒採用について、私は次のように考えていました。目的は、「将来のコア人材の確保と育成」です。「コア人材の育成は、複数の部署や職種を経験させ、広い視野と高い視点を持たせる数年以上の育成期間が必要となる。その間は高いパフォーマンスを期待できないため、育成期間が確保できる、最も人件費の安い層は『新卒』である」。悩んだ末、このような結論に至ったのです。
そして、それを学生たちにも伝えていました。採用の目標を明確に示したことで入社を決めてくれた学生も多く、成功でした。新卒採用だけでなく、中途採用においても、採用の目的をしっかり伝えることが「採用力」の向上につながっていくはずです。
また、長期的な視点での採用になる新卒採用の場合、「消耗率」を想定することが重要なポイントになります。これまでの実績、過去の新卒採用者が何年目でどのくらい退職しているかの傾向を確認してみてください。
有効な人事施策、特に人事制度の確立と運用が成功すれば、消耗率は下がることも想定できます。しかし、それでもさまざまな事情で退職者は出ます。転職、結婚、出産、留学、起業などを理由に、退職は避けられないと考えておくべきです。
私はベンチャー企業に在籍していましたので、22歳で採用した新卒社員が30歳になる入社後8年での消耗率を50%と想定しました。20人採用して10人残れば成功、と考えていたのです。企業規模を想定し、新卒採用したコア候補が30歳ぐらいになり、10人が事業、部門間の横のつながりを形成していれば、会社にとって大きな力になると考えました。
もちろん、もっと残ってくれればありがたいのですが、先は読みづらいものです。人材育成に成功しても、優秀な人材ほど遠心力が働きますから、他社でも十分に活躍できるように成長すれば、退職する可能性は十分にあります。人事部門はもっぱら、彼らに対しての求心力を磨く施策を打ち続けるしかありません。
避けなければならないのは、〇〇年入社の新卒社員が1人もいなくなった、という事態です。これでは新卒採用の意味がありません。したがって、数年後の必要人数から逆算して入社者を確保する必要があるのです。現場に新卒採用の要望人数を聞くと、少なく申告してくる傾向があります。私は役員から「新卒が来ても育てられないから」と言われたこともありました。そのため現場の申告と併せても、ごく少数の採用人数になりがちでした。
一方、社長に聞くと、「まとまった数を取らなければ将来の成長はないだろう」と現場の申告数の倍以上の数字を提示してきました。私としては「ごもっとも、乗った!」と思ったものです。自社で最も長期的な視点を持っているのは、やはり社長です。現場には「育てるのが仕事ですから」と言って通しました。
新卒採用の人数は、長期的視点で消耗率を想定する。そして社長の判断を仰ぎ、ときには現場を説得する。人事担当者には、このような行動が必要になってくるのです。
一方、必要な人材を比較的早く採用することができるのが中途採用です。その多くは、社会人経験のある人の採用になります。
採用の目的は、会社の事情によってさまざまですが、「即戦力の確保」「教育期間の短縮」「社内にない知見を得る」「とにかく欠員補充のため人手が必要」などがあるでしょう。採用する部署の状況にもよりますが、人員構成のバランスなどを考慮し、採用ターゲットを絞り込みます。
採用のチャネルも、インターネットの求人サイトを活用するか、人材紹介会社に依頼するか、ハローワーク(公共職業安定所)に求人を出すか、社員紹介(リファラル)採用を活用するなど、さまざま考えられます。RPO( Recruitment Process Outsourcing )と呼ばれる、採用業務の代行サービスもそのひとつです。
人材採用の有効な手段は年々変化しており、効果的な採用手法やノウハウを蓄積することが難しくなってきました。そのため煩雑になった採用業務の一部、あるいはすべてをプロにアウトソーシングする会社も増えています。中途採用は、採用ターゲットの年代、経験値などによって適した手法があります。自社にとって最適な採用手段を研究していただきたいと思います。
中途採用においては、私は「この人に何年勤めてもらえるか」という想定をしていました。こちらも優秀な人材は容易に転職しますから、しっかりと処遇しないと離れていってしまいます。かといって、定年まで居座られても困るケースもあります。今求められる役割を全うした後どうなるのか、これも想定して応募者に伝えました。
例えば、人事部長候補者には「人事部長になってから5年、10年以上同じ仕事はできません。上に行くか、横に行くか、外に出るかを想定してください」と伝えていました。若い社員が成長してきたら、そのポジションは譲らなくてはなりません。転職した際の最初のポジションがゴールではないのです。その先を想定するように促すことも、人事担当者の重要な役割になります。
採用は、企業の未来を左右する非常に重要な仕事です。新卒、中途を問わず、あらゆる入社者のその後も想定した採用計画を作っていただきたいと思います。

人事という職に就いたならば、読む“義務”がある1冊
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なぜ変革が進まないのか、その背後に潜む「考え方」の欠如とは何でしょうか?

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ー「なぜ、あの人が?」
なぜ多くの企業で「評価基準」が曖昧になっているのでしょうか。
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新型コロナウイルスの影響で業績が悪化した企業による「内定取消」。 「よく耳にするから」「経営が厳しいからしかたない」とよく考えずにその選択肢を選んでしまっていませんか? 今回は「内定取消」に至る前に人事担当者がどのような認識と覚悟で向きあう必要があるのかお伝えします。
総合人事コンサルティングのフォー・ノーツ株式会社は、代表取締役社長・西尾太の著書『この1冊ですべてわかる 人事制度の基本』出版記念特別セミナー【聞いた後でジワジワくる‼西尾太の「地味な」人事の話】を2022年11月17日、TKP東京駅日本橋カンファレンスセンターにて開催いたしました。本記事は、このセミナーの内容を再構成・加筆をしてお届けしています。今回のテーマは、「年功序列は果たしてダメなのか?」です。
年功序列による評価制度が崩れつつある現在ですが、
20代には20代の、30代には30代の、40代には40代の求められているものがあります。
自分の年代に求められているものは何か、しっかりと把握して評価につなげましょう。
同じ会社で同じレベルの仕事をしているのに、評価される人とされない人が出てくる。
これは評価基準となる「45のコンピテンシー」を知っているかどうかの違いです。
最近の検証で、職場に「ホーム感」を抱いている人材は、
業務でのパフォーマンスも高い傾向が分かってきました。
・「ホーム感」とは何なのか
・なぜ職場に「ホーム感」を抱いている社員はパフォーマンスが高いのか
この記事では以上の2点を解説していきます。
会社にとって社長は意思決定者であり、常に先頭を走り続ける存在です。
それでも、いつでも正しい判断ができるわけではありません。
社長の指示や行動が会社の人事ポリシーに沿わない場合、
自信をもって「待った」をかけられる人事担当者になってください。
採用担当者は採用する側だから、優位に立場である。
そういった意識を持っている人事は少なくありません。
この少子化の時代、その意識を捨てて自社を売り込む立場の目線を持つことが大切です。