2024.06.19
50代のリストラ対策のひとつは、若手の指導です。「あの人、若手を育てるのがうまいよね」「あの人に預ければ、育ててくれるよね」と社内で評判が立つのは、リストラを防ぐ有効な手立てとなります。
50代のリストラ対策のひとつは、若手の指導です。
「あの人、若手を育てるのがうまいよね」「あの人に預ければ、育ててくれるよね」と社内で評判が立つのは、リストラを防ぐ有効な手立てとなります。
逆は、やっぱり危ないですから。人を育てられなければ、管理職から外されますし、外された後でも「あの人のところに若手を預けると辞めるんだよね」「人を任せられないよね」といった悪評が立つと、リストラの要因にもなりかねません。
たとえ管理職でなくても、「俺は部下がいないから育てる相手はいねえんだよ」みたいな態度はNGです。指導の機会があれば、自ら率先してやるべきでしょう。
人材育成は、私たちの世代の重要な役割です。管理職であってもなくても、若手の指導機会があるなら有効に活かして育ててほしいですね。
では、若手の指導を上手に行うには、どうしたらいいのでしょうか?
今回は、人材育成の5つのポイントについてお伝えします。
人材育成で重要なのは、次の5つの要素に分解して考え指導することです。
①キャリアビジョン
②ライフビジョン
③コンピテンシー
④スキル・ナレッジ
⑤モチベーション
①キャリアビジョン
まず大事なのは、相手のキャリアビジョンを確認すること。その若手は3年後、5年後にどうなりたいのか。ここから始めないと、指導の方向性がズレてしまいます。
たとえば、経営者になりたいのか、スペシャリスト(専門職)になりたいのか。本人の意向によって育て方も変わってきます。その認識がズレていると、「こういう人材に育てたい」と思って指導をしても、その時点で話が噛み合いません。
まずは本人に「どうなりたいのか」と聞いてみて、「こうなりたいんです」というキャリア上の目標があるなら、そのために必要なことを伝える。
ただし「なりたいものがありません」という若手も多くいます。そういう場合は、会社の等級制度を活用しましょう。相手が2等級だったら「3等級を目指そうぜ」、3等級だったら「4等級を目指そうぜ」と具体的な目標を示してあげる。
等級制度は会社が望むキャリアステップです。「今は2等級だけど3等級になってチームをまとめられるくらいになろうか。どう思う?」と本人の意志も確認しながら、その意向に合わせた能力開発をしていく。これが人材育成の基本となります。
②ライフビジョン
もうひとつ確認しておきたいのは、ライフビジョンです。その若手は、どんな人生を送りたいと思っているのか。私生活にあまり深入りする必要はありませんが、仕事に関係しそうな重大なプライベートの情報は知っておいたほうがいいでしょう。
たとえば、親の介護があるとか、子供が生まれるとか、そうしたプライベートの事情は、働き方に大きく影響してくる場合があります。
「何か仕事に関係するプライベートなこととかライフイベントがあったら教えて」と伝えて、それも考慮に入れた指導をしていきます。
キャリアビジョンとライフビジョンを確認したら、本人の志向に添った能力開発をしていきます。ここで重要なのは「コンピテンシー」と「スキル・ナレッジ」です。
③コンピテンシー
コンピテンシーとは、成果につながる行動です。たとえば、1人で仕事が回せるようになり「今度はチームを任せられるようになろう」が次の目標だったら、チームのPDCAを回す行動が必要になってきますよね。目標設定、計画立案、進捗管理といったコンピテンシーが必要ですし、チームワークや動機づけ、傾聴力も求められます。
次に獲得すべき行動を具体的に示したら、ティーチングとコーチングを交えて指導していきます。ティーチングとは、まずは自分でやってみせ、本人にもやらせてみて、修正し、身につけさせていくこと。コーチングとは、都度「どう思う?」と問いかけながら、本人に考えさせること。
社員には等級ごとに求められている行動があります。次に必要となる具体的な行動を示して「次はちょっとプレゼンうまくなろうか」「問題分析もできるようになろうか」などとアドバイスしながら、ティーチングやコーチングをしていきます。
④スキル・ナレッジ
スキルとは技術、ナレッジとは知識。成果につながる行動をしていくためには、そのための技術や知識を身につける必要があります。
たとえば営業には、アプローチ、ラポール、ヒアリング、企画提案、クロージングといった基本的なスキルや商品や顧客に関する知識が必要です。掴みの会話から入り、お客様と共感し、自己紹介を簡潔に行い、相手の課題を掘り下げていく。このような専門的な技術や知識で足りないものはないかを確認し、不足しているものがあったら補っていく。
スキルに関していえば、「自らやってみせる」と「本人にやらせてみる」が特に大事です。たとえば、営業同行で自らやっている姿を見せて本人にもやらせてみる。できていることは褒める。「いいじゃん、センス持ってるね」と褒め、足りない点は「ここはもっと頑張ろう」と指摘して励ます。
ティーチングは、褒めるべき点を見つけること、コーチングは「どう思う?」と都度問いかけることが大切です。年を取ると、どうしても教えたがりになり、ああしろ、ここしろと言いがちです。「こういう考えもあると思うけど、どう思う?」と投げかけ、本人に考えさせることが重要です。
⑤モチベーション
最後に、もうひとつ大事なポイントが「モチベーション」です。モチベーションとは、仕事に意欲を持って取り組むための動機ですね。モチベーションには、「仕事型・職場型・組織型・生活型」の4つのリソースがあると言われています。
<モチベーション:4つのリソース>
・仕事型…仕事の目的や内容など、仕事そのもの
・職場型…上司の評価、仲間との協働や競争意識
・組織型…組織への帰属意識、組織内での地位や責任
・生活型…家族からの期待や応援、生活の向上
その若手が仕事をするための動機となっているものは何か。そのリソースを知っておくことも、若手の指導においては特に大事なポイントです。
仲間と働くことが楽しい職場型の若手に、仕事の目的や内容を伝えるだけでは響きません。プライベートが大事な生活型の若手に、組織への帰属意識を力説してもモチベーションにはなりません。その若手は何のために働いているのか、どういうことにやる気を感じるのかを理解し、それに沿った助言をしましょう。
キャリアビジョン、ライフビジョン、コンピテンシー 、スキル・ナレッジ、モチベーション、このように5つに分解して考えると若手の指導がしやすくなります。
知識も技術もあるけど、行動が不足している。動機はあるけど、知識や技術がない。仕事上の目標はあるけど、私生活で気になることがあり仕事に集中できない…。
若手が成長できない場合、どこかに必ずエラーがあります。その原因は、仕事内容なのか、人間関係なのか、動機なのか。技術や知識が不足しているなら、具体的な指導をしたり、役立つ本を薦めてみる。人間関係だったら相談に乗ってあげる。モチベーションが阻害されているのなら、その理由を探って一緒に解決策を考える。
指導者たる者、「なんとなくダメなんだよ、こいつ」ではNGです。相手の話を聞いて、5つの要素に分解し、適切なアドバイスをする。若手の指導は、このようにしてみてください。また、何かを教えるときは、簡潔に伝えることも忘れないようにしましょう。
次回につづく
人事という職に就いたならば、読む“義務”がある1冊
成果主義、職務主義、年俸制、人事部廃止… 90年代から変わらぬ「人事」の構造、変わらぬ平均給与額が、日本を世界トップクラスの「社員が会社を信頼しない国」へと導いたのです。
なぜ変革が進まないのか、その背後に潜む「考え方」の欠如とは何でしょうか?
中学時代に習ったこと、覚えてますか?
多くの人にとっては、すべての勉強の基礎になっている大事な「当たり前」のことですが、思い出せと言われても思い出せる方は少ないでしょう。
この「この一冊ですべてわかる 人事制度の基本」には、人事の当たり前が詰まっています。
ー「なぜ、あの人が?」
なぜ多くの企業で「評価基準」が曖昧になっているのでしょうか。
どうすれば給与が上がるのでしょうか。
11,000人超の人事担当者から絶大な支持を得るコンサルタントが、今まで9割の会社が明かさなかった「絶対的な指標」を初公開!
テレワーク時代には「ジョブ型」に留まらず、「超ジョブ型人事」が不可欠。
その一番の理由は、テレワークをはじめとするこれからの働き方には「監視しない事が重要であるから」です。
人事の“必須科目”を押さえる
プロの人事力
次のステージに向けて成長するためのキホン
人事担当者に必要な知識・学び方、仕事に対する心構え、業務との向き合い方、さらには人事マネージャー、人事部長へとキャリアアップするために必要な能力・スキルを一挙公開
ここ数年、「50代についての意見を聞かせてください」というご依頼が増えてきました。当連載もそうですし、『人事の超プロが教える 会社員 50歳からの生き残り戦略』(PHPビジネス新書)という本も出させていただきました。やはり中高年を対象とした黒字リストラや早期退職・希望退職を募る企業が増えているからでしょう。今回も「人事は中高年を実はこう見ている」というリクエストをいただきました。私は人事部時代、中高年の社員をどう見ていたのか。今回はこうしたテーマで、率直な意見や感想をお伝えしたいと思います。
最近、日本の賃金が上がっていないことが話題になっています。日本の平均賃金は1990年代の半ばまで世界でもトップクラスでしたが、他国にどんどん抜かれ、現在はアメリカの半分程度。ドイツやフランスなどの欧米諸国はもちろん、韓国よりも低く、OECDの最下位グループになっています。
会社はあなたを不要と判断したとき、どんな動きをするのか。前回は中高年のリストラ回避法についてお伝えしましたが、今回はこのテーマについてもう少し深掘りしてみましょう。 この人は給与に見合った働きをしていない、このまま会社にいてもらっては困る。会社がそう判断したときの最初の動きは、「解任」と「異動」です。
「年下上司と、どのように付き合ったらいいのでしょうか?」50代の方々から、このようなご相談をよくいただきます。かつての部下や後輩が出世して自分の上司になってしまう。たしかに悩ましい問題ですよね。そこで今回は「年下上司との上手な付き合い方」について、お伝えしたいと思います。
東京商工リサーチによると、2021年に希望退職を募った上場企業は80社以上。上場企業の希望・早期退職募集は2019年以降、3年連続で1万人を突破。2021年の募集者数は判明しているだけでも1万5000人を超えています。 コロナ禍によって経営が悪化した企業もありますが、大手企業の多くは黒字経営にもかかわらず希望退職・早期退職という名目の大規模なリストラに踏み切っています。なぜこれほどリストラ増えているのか。いま一度、その背景を理解しておきましょう。
中高年のリストラが止まりません。東京商工リサーチ によると、2021年の上場企業における早期・希望退職の募集人数は約1万6000人。前年の2020年は約1万9000人でした。2年連続で1万5000人を超えたのは、ITバブル崩壊後の2001〜2003年以来だといいます。リストラを実施している企業は、赤字とは限らず、好業績でも早期・希望退職を募っているため、「明日は我が身」と不安になっている方も多いでしょう。では、会社での自分のポジションが、どうであったらヤバイ、どうであったらセーフなのでしょうか。今回は、その目安について、お伝えしたいと思います。
年収とパフォーマンスが一致していない人は要注意 コロナ禍以前から増えてきた、45歳以上の早期退職・希望退職という名のリストラ。その候補となっているのは、パフォーマンスより年収が高い人です。それはどういうことなのか、詳しく説明しましょう。
40代・50代になって、「専門職を極めていくか」「社内マネジメントに積極的に関わるか」といった今後の選択について悩んでいる人は多いのではないでしょうか?この二者択一は、リストラに関わる非常に重要な問題です。人事もまさにそこを見ています。40〜50代で何らかの専門性を持っていても、同程度の専門性を持っている20〜30代の人材がいるなら、会社はそちらを選びます。