2023.12.04
年収とパフォーマンスが一致していない人は要注意 コロナ禍以前から増えてきた、45歳以上の早期退職・希望退職という名のリストラ。その候補となっているのは、パフォーマンスより年収が高い人です。それはどういうことなのか、詳しく説明しましょう。
コロナ禍以前から増えてきた、45歳以上の早期退職・希望退職という名のリストラ。その候補となっているのは、パフォーマンスより年収が高い人です。それはどういうことなのか、詳しく説明しましょう。
年功序列の企業では、勤続年数が長い人ほど給与が高くなります。40代から50代は、最も給与水準が高くなる層です。もちろん年収1000万円の人が1000万円の価値を出しているのであれば、何の問題もありません。給与とパフォーマンスが一致していれば、45歳でも50歳でもリストラされることはありません。
ところが、年功序列の企業では、実力とは関係なく、ただ会社に長くいるだけで、給与が自動的に上がっていきます。すると、どうなるのでしょうか?
年収1000万円をもらっているのに、400万円の価値しか出していない。そういう人たちが増えていきます。そのうえ、40代・50代は、人口のボリュームゾーンです。最も人数が多い世代に、最も高い給料を出していたら会社は潰れてしまいます。
パフォーマンスに見合わない、高い給料をもらっている中高年が多い。これが近年、企業の重石となってきたのです。
「じゃあ、その人たちの給料を下げればいいじゃん」
そう思う人もいるでしょう。そうなんです。400万円の価値しか出していないのなら、年収も400万円にすればいい。年功序列をやめて、価値に応じた給料にすればいい。それだけの話です。なにもリストラする必要なんてないのです。
実際、年を取ったら給与が高くなる「後払い」の制度を廃止して、成果や行動に応じた「時価払い」の制度にする企業が増えています。年功序列については、給与だけでなく、現在はあらゆる場面における弊害が指摘されています。グローバル化、外国人の活用、テレワーク、DX、同一労働同一賃金など、近年の潮流とも合い入れません。
しかし、多くの企業はそれができません。長く続いてきたシステムを変えるには、時間も手間もかかります。だったらリストラしたほうが手っ取り早い。だから45歳以上の早期退職・希望退職を募り、中高年をリストラする企業が増えているのです。
さらに、もうひとつ困った問題があります。それは「給与とパフォーマンスが一致しているかどうか」を、本人が自覚するのは難しいことです。
リストラ候補は、「人事評価が低い人」だけではありません。標準評価がAだとしたら、B評価・C評価の人だけでなく、A評価の人たちもリストラされています。
企業取材を精力的に行い、『非情の常時リストラ』(文春新書)で2013年度日本労働ペンクラブ賞を受賞した人事ジャーナリストの溝上憲文さんによると、大手や老舗企業では、A評価をもらっているのに肩叩きにあっている人が非常に多いといいます。
標準より低いB評価・C評価の人なら「頑張らないとリストラされてしまうかも」と、ある程度の覚悟はできているでしょう。でもA評価の人たちは「自分は評価されているんだ」「優秀なんだ」「会社に貢献しているんだ」と人事評価を信じています。それなのに、いきなり肩を叩かれ、クビを斬られてしまうのです。
理不尽な仕打ちにショックを受け、心のケアから始めなければ再スタートできない人が、とても多いといいます。なぜ、こんなことになってしまうのでしょうか?
大変残念なことですが、実は人事評価を厳密に行っている会社は多くないのです。評価基準も明確ではなく、上司の好き嫌いを含んだ主観的な評価を行っている会社がほとんど。改善点をきちんと指摘するフィードバックがなされている会社もごくわずかです。
納得できる評価制度が整った企業は、日本の会社全体の1割程度。上場企業でようやく3分の1。それが私の実感です。「給料とパフォーマンスが合っていないから、〇〇を改善してください」。もしそう言ってくれる上司がいるなら、とてもいい会社です。
厳しい指摘をしたら仲良く働けなくなるから、なあなあで評価して、いざとなったらリストラ。そういう会社が一般的なのです。
こんな状況を少しでも改善したい、評価基準を明確にし、適切なフィードバックを行い、成果や行動に応じた給与制度にして、不幸を生むリストラを減らしたい。私が人事コンサルタントとして起業を志したのも、そんな危機感を持ったからでした。
45歳以上の希望退職・早期退職でリストラされてしまった人は、古い体質の人事制度を見直してこなかった日本社会の犠牲者ともいえるのです。
最近は年功序列を廃止する企業も増えてきましたが、社会全体が変わるには、まだまだ時間がかかります。45歳以上の人たちは、リストラされないように、あるいはリストラされても、しっかりと生きていけるように自衛策を講じる必要があります。
たとえ人事評価が高くても、真に受けてはいけません。高い評価をもらっていても、リストラされることはあるのです。
では、会社の人事評価がアテにならないとしたら、自分の年収がパフォーマンスと一致しているかどうかを、どのように判断したらいいのでしょうか?
これには、2つの方法があります。ひとつは、転職活動をしてみること。実際に転職しなくてもいいのです。人材紹介会社に登録して「私は年収700万円なんですけど、同じ年収で転職先は見つかりますか?」と、コーディネーターに聞いてみてください。
適切な年収をコーディネーターが判断できるかどうかは、その人の力量次第ですが、紹介が来るかどうかで、自分の市場価値を知ることができます。年収700万円を提示する企業の紹介が来れば、あなたには700万の市場価値があるということです。
ただし、紹介が来なかったら要注意です。
中途採用のお手伝いをしていると、「年収1100万円です」「1200万です」という大手企業の方も面接にやって来ますが、実際にやっている仕事内容を伺うと、世の中の相場感では800万円、700万円といったケースが少なくありません。
年功序列で上がった給料では、自身の価値を正しく測ることはできません。ひとつの会社だけでなく、他社や世間の価値観に触れてみることが重要です。
人材紹介会社の人に「私の年収はどれくらいが適切でしょうか?」と聞いてみたり、自身のキャリアや実績に対して他の企業がどんなレスポンスを示してくれるのか確認して、自分の市場価値を測ってみてください。
もうひとつの方法は、世の中の「年収基準」を知ることです。
日本のほとんどの企業では、等級制度や職位制度と呼ばれる仕組みが導入されており、給与は等級や職位によっておおよそ決まっています。
等級・職位とは、新人、メンバー、課長、部長といった社内におけるポジションのこと。給与水準は、業種・規模・地域・企業ステージ(創業期・成長期・成熟期・衰退期)などによって異なりますが、一般的な基準となる標準的な金額はあり、モデル年収とも言われています。
年収が一般的な基準より高い人は、「パフォーマンスより年収が高い人」と判断され、リストラ候補になっている可能性があります。そうした場合は、現在の年収・立場で求められていることを確認し、自分に足りないものを身につけなくてはいけません。
例えば「課長」だったら、タスクマネジメントとヒューマンマネジメントです。ミドルマネージャーには、「目標設定」「計画立案」「計数管理」「人材育成」などが求められ、そのスキル・経験・レベルによって500〜700万円などと年収が決まります。
拙著『人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準』(アルファポリス刊)では、世の中の「年収基準」を詳しく解説し、それぞれの立場やスキルに応じた適切な年収を知ることができるチェックリストを掲載しています。こうした本も参考にして、自分の市場価値を測ってみてください。
リストラ時代を生き抜くためには、今の自分の市場価値を知ることが必要です。「昔はこれをやっていた」とか「会社で表彰された」とかではなく、今の時代に何ができるのか、何が武器なのか、それにはどれくらいの価値があるのか。そして現在の自分に足りないものを何かを把握し、それを獲得することを目標にしてください、
年収とパフォーマンスが一致している状態になれば、何も怖くはありません。
たとえリストラされてしまっても、あなたを必要とする企業が必ずあるはずです。それは、40代でも50代でも変わりありません。自分自身について客観的に理解すること。これがリストラ時代を生き抜く重要な戦略になります。
次回につづく
人事という職に就いたならば、読む“義務”がある1冊
成果主義、職務主義、年俸制、人事部廃止… 90年代から変わらぬ「人事」の構造、変わらぬ平均給与額が、日本を世界トップクラスの「社員が会社を信頼しない国」へと導いたのです。
なぜ変革が進まないのか、その背後に潜む「考え方」の欠如とは何でしょうか?
中学時代に習ったこと、覚えてますか?
多くの人にとっては、すべての勉強の基礎になっている大事な「当たり前」のことですが、思い出せと言われても思い出せる方は少ないでしょう。
この「この一冊ですべてわかる 人事制度の基本」には、人事の当たり前が詰まっています。
ー「なぜ、あの人が?」
なぜ多くの企業で「評価基準」が曖昧になっているのでしょうか。
どうすれば給与が上がるのでしょうか。
11,000人超の人事担当者から絶大な支持を得るコンサルタントが、今まで9割の会社が明かさなかった「絶対的な指標」を初公開!
テレワーク時代には「ジョブ型」に留まらず、「超ジョブ型人事」が不可欠。
その一番の理由は、テレワークをはじめとするこれからの働き方には「監視しない事が重要であるから」です。
人事の“必須科目”を押さえる
プロの人事力
次のステージに向けて成長するためのキホン
人事担当者に必要な知識・学び方、仕事に対する心構え、業務との向き合い方、さらには人事マネージャー、人事部長へとキャリアアップするために必要な能力・スキルを一挙公開
「ベテランはリストラの対象になりませんか?」ある人からそう聞かれました。今回は、この質問に答えてみたいと思います。ベテランとは、基本的には褒め言葉です。「あの人、ベテランだよね」「さすがだよね」と言われるのは、技術・技能に長けていて、知識も豊富で信頼が置ける人ですよね。
40代・50代になって、「専門職を極めていくか」「社内マネジメントに積極的に関わるか」といった今後の選択について悩んでいる人は多いのではないでしょうか?この二者択一は、リストラに関わる非常に重要な問題です。人事もまさにそこを見ています。40〜50代で何らかの専門性を持っていても、同程度の専門性を持っている20〜30代の人材がいるなら、会社はそちらを選びます。
私たち50代がリストラ時代を生き抜くために避けて通れないポイントは、若い世代から「老害」と思われないことです。 「50代はまだ老人じゃない」と思われるかもしれませんが、年齢は関係ありません。老害とは、自分より若い世代に迷惑をかけること。 30代であっても、20代に迷惑をかけていれば「老害」と呼ばれます。
「日立 全社員をジョブ型に」というニュースが日経新聞の1面トップになっていました。日立製作所は今年7月にも事前に職務の内容を明確にし、それに沿う人材を器用する「ジョブ型雇用」を本体の全社員に広げるということです。ジョブ型雇用、テレワーク、ワーケーション、週休3日制など、働き方の多様化が急速に進み、戸惑いを感じている人も多いでしょう。ですが、働き方が変わっても、大事なことは変わりません。
中高年のリストラが止まりません。東京商工リサーチ によると、2021年の上場企業における早期・希望退職の募集人数は約1万6000人。前年の2020年は約1万9000人でした。2年連続で1万5000人を超えたのは、ITバブル崩壊後の2001〜2003年以来だといいます。リストラを実施している企業は、赤字とは限らず、好業績でも早期・希望退職を募っているため、「明日は我が身」と不安になっている方も多いでしょう。では、会社での自分のポジションが、どうであったらヤバイ、どうであったらセーフなのでしょうか。今回は、その目安について、お伝えしたいと思います。
「年下上司と、どのように付き合ったらいいのでしょうか?」50代の方々から、このようなご相談をよくいただきます。かつての部下や後輩が出世して自分の上司になってしまう。たしかに悩ましい問題ですよね。そこで今回は「年下上司との上手な付き合い方」について、お伝えしたいと思います。
50代になると、地位の格差、立場の格差などが開いてきます。しかし役職の有無や、組織やチームの規模を問わず、リーダーシップが求められるようになります。 では、リーダーに求められる資質とは、どのようなものでしょうか。 私は企業のリーダー研修プログラムで「目指すべき人材像」を5つのポイントに分けて紹介しています。OK例とNG例を交えながら説明しましょう。
中高年の皆さん、暇ってありますか?もし暇な時間があるのでしたら、その活かし方こそが生きる道となります。中高年になると、仕事はそこそこでいいかなと考え、プライベートを充実させようとする人が増えてきます。それはそれで、いいことだと思うのです。プライベートが充実していれば、「暇」ではなくなります。