2026.04.28
人事マネージャーには、最低限持っているべきコンピテンシー、スキル、知識があります。なかでも重要なのは、チームのPDCAを管理する「タスクマネジメント」です。組織において必要なだけでなく、自身のキャリアを築いていくための礎ともなる<マネジメント>とは何か、ここで改めて整理しておきましょう。

マネージャーとは、小単位の組織を率いる、もしくは自己の専門性を活かしながら周囲を巻き込むレイヤー(階層)です。メンバーを率いる立場になりますから、当然「自分ひとり」では済まされません。周囲への影響力を発揮しながら、成果に責任を持てるレベルで判断していくことが必要になります。
では、マネジメントとは何か、ここで改めて整理してみましょう。マネジメントには、「タスクマネジメント」と「ヒューマンマネジメント」という2つのベクトルがあり、それぞれ求められる能力が異なります。
タスクマネジメントとは、目標達成に向け、計画を立案し、進捗を管理し、計数も管理しながら、成果を上げていくこと。チームのPDCAサイクルを回し、段取りよくタスクを実行していくこと。
ヒューマンマネジメントとは、メンバーそれぞれのキャリアビジョンやライフビジョンを把握し、適切にアドバイスを行い、人を育てること。マネジメントの全体像を図に表すと次のようになります。
※図:マネジメントの全体像( 『プロの人事力』P128参照)
組織の規模が大きくなるにつれて、タスクマネジメントとヒューマンマネジメントの双方において、より大きな影響力の発揮が求められるようになります。PDCAを回すタスクマネジメントは、「個人レベル」からより大きな「組織レベル」に。人に関するヒューマンマネジメントは、「協調性」→「主体性」→「育成」というステップで影響力を高めていくことになります。
マネジメント層は、人、モノ、契約、お金、情報など、さまざまなリスクについても管理しなければなりません。これらに関するしっかりとした知識を持つ必要があります。さらに、意思決定、コミュニケーション、人のストレスに関するマネジメント力も求められます。
さまざまなコンピテンシー・スキル・知識が必要になってくるわけですが、人事マネージャーにとって特に重要な役割とは何でしょうか。ここからは人事におけるタスクマネジメントについて見ていきましょう。
人事マネージャーの重要な役割は、メンバーのタスク管理です。マネージャー層は、目標設定・計画立案・進捗管理といった組織としてのタスクマネジメントに加え、新たに「目標達成」というコンピテンシーが求められます。ここでいう「目標達成」とは、組織やチーム、プロジェクトなどの目標を達成することを指します。
チームとしての目標を設定し、実現可能な計画を立て、メンバーの進捗状況を管理し、目標を達成するために、あらゆる手段を尽くす。
例えば、新卒採用では、採用計画を立案し、経営の承認をもらい、採用活動を始め、求人サイトをオープンし、説明会を行い、何人動員予定といった年間計画を具体的に示し、メンバーにそれぞれの役割を振り分けます。もしも採用計画が実現可能なものではなかったり、経営の承認をもらえなかったりしたら、採用活動を始めることができません。
あるいは、求人サイトの制作が遅れたら、すべてのスケジュールが変更になり、採用活動自体が遅れてしまうかもしれません。計画立案をする際には、5W2H(いつ・どこで・誰が・何を・どうする・なぜ・いくら)を明確にし、必ずメンバーと共有する必要があります。
新卒採用では、求める人材像を明確にしておくことも重要です。中長期戦略に基づき、その戦略を実現するためには、どのような人材が、どれだけ必要になるのか。それらの人材は、社内にいないのか。本当に社外から採用しなければならないのか。多角的に検証し、どのような人材が必要かを具体化していきます。
また、求める人材像は、経営や人事メンバーなど既存の社員だけでなく、採用場面で伝えていくことも大事です。自社サイトの採用ページ、求人サイト、企業説明会や面接場面などで「当社はこういう人に来てもらいたい」ということをしっかりと示す。これもまた人事マネージャーの重要な役割です。
人事マネージャーは、自身のPDCAサイクルを回すだけでなく、チームのPDCAを管理することが求められます。到達可能かつ達成基準が明確な目標と達成のための計画を立案し、実行、評価、改善を繰り返していく。
計画の進捗管理をするためには、マイルストーン(確認ポイント)を設定し、そのマイルストーンごとに常に検証を行う必要があります。計画と現実の乖離を把握し、その対応策も用意しておかなくてはなりません。緊急度・重要度などの優先順位を明確にして、不測の事態が起こった場合には、何を捨て、何を優先するのかを判断し、メンバーに指示をする。必要であれば、計画の修正を判断することも必要になるでしょう。
ミーティングを定期的に行い、現状がきちんとわかる仕組みづくりも必要です。メンバーのスケジュールを常に確認し、確実に実行できるよう働きかけていく。チームにおけるPDCAを管理し、目標を達成するためには、あらゆる方法や手段を尽くし、決して諦めず、最後の最後まで可能性を追求する姿勢も求められます。
企業人事は、人員計画・採用・配置・任免・等級・職位・評価・給与・規定・労務・教育など、多岐にわたる分野があり、それぞれのタスクもPDCAも異なります。これらも把握しておかなくてはなりません。
人事マネージャーは、人事部内に限らず、どの部門にも関わることが多く、社内全体に与える影響も大きいです。メンバーはもちろん、すべての社員のモチベーションが落ちないよう常に声をかけ、励まし、相互に助け合う風土を作り、チームや組織の総合力で目標を達成していく。これも人事マネージャーの役目です。
正直、大変な役割ですが、これらのスキルをしっかり身につけていけば、経営層まで上り詰めることも可能です。部下が育ってくれば人事だけを続けていくことは難しいかもしれませんが、自身の領域を広げれば、管理部門の責任者や役員になることができるでしょう。
実際、私の前職の人事部でマネージャーだった人たちは、経営企画部長やCFO(最高財務責任者)、営業本部長、あるいはCOO(最高執行責任者)になっています。また、人事のプロとして複数の会社を渡り歩くことも、私のように人事コンサルタントとして独立する選択肢も見えてきます。その出発点となるのが、人事マネージャーです。まずはしっかりとタスクマネジメントのスキルを磨くことから始めましょう。

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