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第8回 「有害」「不要」認定した社員に送られる、会社側の残酷なサインとは

会社はあなたを不要と判断したとき、どんな動きをするのか。前回は中高年のリストラ回避法についてお伝えしましたが、今回はこのテーマについてもう少し深掘りしてみましょう。 この人は給与に見合った働きをしていない、このまま会社にいてもらっては困る。会社がそう判断したときの最初の動きは、「解任」と「異動」です。

第一の動きは「解任」「異動」

会社はあなたを不要と判断したとき、どんな動きをするのか。前回は中高年のリストラ回避法についてお伝えしましたが、今回はこのテーマについてもう少し深掘りしてみましょう。

この人は給与に見合った働きをしていない、このまま会社にいてもらっては困る。会社がそう判断したときの最初の動きは、「解任」と「異動」です。

50代になると、部長や課長などの役職についている人が多くいます。役職を解任されるのは、「このままでは、あなたを不要と判断しますよ」という会社からの警告と考えてください。

自己申告制度を導入している会社では、社員の満足度などを調査し、問題のある部門や部署を発見しやすくしています。例えば「大阪支社の満足度が低い」となったら人事が内偵に入りますが、「満足度が低いという状態にしていることが、そもそも管理職として能力がないよね」と判断されます。

自己申告制度がなくても、「〇〇さんの部署って若手が辞めてるよね」「異動希望を出している人が多いよね」「人を育てることができないよね」といった情報は、会社も当然、把握しています。経営と人事で「こんな状態ですけど、どうします?」と話し合い、「厳しいね」となったら、解任となります。

解任されても「担当部長」「部長補佐」など別の肩書きが与えられる会社もありますが、ヒラに落とされることも多く、そのままその部署には居づらいだろうな、ということで異動してもらったりします。

このような場合の異動は、「場所が変わったら活躍してくれるんじゃないか」「パフォーマンスを上げてくれるんじゃないか」「変わってくれるんじゃないか」と、覚醒を促すことが目的です。

それでもダメだったら、もう一回、異動させて、だんだん閑職になっていきます。それが、いわゆる窓際族です。けれど、窓際族を置いておけるほど余裕のある会社は減ってきています。そのまま退職勧奨される場合も少なくありません。厳しいですが、これが第一の動きとなります。

第二の動きは「評価を下げる」「給与も下げる」

第二の動きは、「評価を下げる」です。それにともない、給与も下がり、ボーナスも下がります。これも、「このままじゃダメですよ」「行動を改めてくださいね」という会社からのメッセージです。

本当に不要と判断されたら退職勧奨になりますが、「評価が下がる」「給与が下がる」は、その前段階として「このままだと不要と判断しますよ」「退職勧奨になりますよ」という予告です。

評価制度が整っていない会社では、上司はあまり低い評価はつけません。低い評価をすると、理由を説明したり、フィードバックをするのが面倒だからです。

このような場合は、人事から上司に「この評価でいいんですか?」とプレッシャーをかけます。「だけどさあ、しのびないじゃん」「娘が来年、大学受験だしさぁ」などと言われたりしますが、「いやいや、しのびないとか言っているから、こうなっちゃったんでしょう? ダメなものはダメなものと言いましょうよ」と適切な評価を促します。

評価や給与が下がった理由について、きちんとフィードバックしてくれる会社だったら、指摘を真摯に受け止めましょう。行動を変えれば、復活できます。評価や給与が下がっても何も言ってくれない会社だったら、そのまま何もしなければ、退職勧奨になってしまいます。

上司に「私の課題を教えてください」とお願いする。上司が何も言ってくれない場合は、同期や周囲の人に「俺ってどう?まずいところがあったら教えて」と聞いてみる。こうした行動が必要です。

経営陣や部門長が集まる評価会議では、「給与分の仕事をしていない」と判断された社員はリストアップされています。「この人、イエローカードだね」「もう2回目ですよ」「じゃあレッドカードだね」といった話し合いが行われ、レッドカードになれば、退職勧奨です。

評価が下がり、給与が下がったら、カラータイマーが点滅しています。早急な対処が必要です。

第三の動きは「希望退職・早期退職」

第三の動きは、「希望退職」「早期退職」のお誘いです。博報堂では早期退職、フジテレビでも希望退職の募集が発表されました。会社が早期退職や希望退職の制度を導入し、「これに応募してみませんか?」と声をかけてきたら、「お辞めになりませんか?」という遠回しな退職勧奨です。

退職勧奨とは、会社があなたを不要と判断したときの最も重い措置です。

前回もお伝えしたように、会社は社員を簡単にはクビにできません。社員を解雇できる正当な理由は、度重なる欠勤・遅刻などの労働契約不履行、もしくは不正くらいしかありません。

それ以外の理由は不当解雇にあたり違法となりますが、退職勧奨は「お辞めになりませんか?」と「おすすめ」しているだけですから、違法ではないのです。

「3ヶ月間は有給扱いにしますから転職活動してみませんか?」「今だったら退職金をたくさん払いますよ」といった条件面の提案も行われます。同意すれば、労働契約の合意解約となり、「あなたも合意して、お辞めになりましたね」という形をとって労働契約を解消します。

退職勧奨はあくまで会社からの提案ですから、拒否すれば退職にはなりません。なりませんが、評価や給与が下がったり、職場に居づらくなっていきます。

会社が早期退職・希望退職の制度を導入したら、「不要な人には辞めていただきたい」という意思表示と受け止めてください。おもなターゲットとなる45歳以上の人は、特に注意しなくてはいけません。

第四の動き「退職勧奨」を防ぐには?

会社が不要と判断するのは、「有害」な人です。給与に見合った活躍をしない、ハラスメントをするなど、他の社員や組織に悪影響を与えることが「有害」と考えられます。

このような人には、いなくなってもらうか、変わってもらわないと、周りがしんどくなります。本人の問題だけでなく、他の社員が辞めたり、病んだりするので、会社としては手を打たないとまずいのです。

次は「無害」な人です。無害とは、いてもいなくても一緒ということ。マイナスもないけれど、プラスもない。無害な人材でも許容してくれる会社ならいいですが、早期対象・希望退職を導入する会社が増えているのは「無害では困る」というメッセージです。「有益」な人材にならなくてはいけません。

無害なままでも会社が許容してくれるのであれば、定年まで逃げ切るのもひとつの方法ですが、やはり心機一転、頑張ることをお勧めします。

「50代は変わらない」とよく言われますが、変われる人もいます。年功序列の評価制度を変えて、ダメな点はきちんとフィードバックしてもらうようにすると、今まで言われていなかったことを指摘されて、「初めて気づきました!」と驚く50代の人が多くいます。

リストラの対象になりがちな「パフォーマンスより給与が高い人」は、今まで何も言われていなかったから、自分の課題に気づいていないことが多いのです。フィードバックを受けると、すねる人、まったく気にしない人、反応しない人もいますが、気づいて変われれる人もいます。

人はいつでも変われるのです。50代だから変われない、なんてことは決してありません。

会社から不要と判断されてしまったことを真摯に受け止め、働き方を改めたほうが、あなたも幸せだし、周りもだし、家族も幸せです。変わるべきなら変わったほうが、みんながハッピーになれます。

解任・異動になる、評価・給与が下がる、希望退職・早期退職を勧められる、こうした場合は、自分を変える機会と受け止め、ピンチをチャンスに変えましょう。

次回につづく

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