2024.09.24
40代・50代になって、「専門職を極めていくか」「社内マネジメントに積極的に関わるか」といった今後の選択について悩んでいる人は多いのではないでしょうか?この二者択一は、リストラに関わる非常に重要な問題です。人事もまさにそこを見ています。40〜50代で何らかの専門性を持っていても、同程度の専門性を持っている20〜30代の人材がいるなら、会社はそちらを選びます。
40代・50代になって、「専門職を極めていくか」「社内マネジメントに積極的に関わるか」といった今後の選択について悩んでいる人は多いのではないでしょうか?
この二者択一は、リストラに関わる非常に重要な問題です。
人事もまさにそこを見ています。40〜50代で何らかの専門性を持っていても、同程度の専門性を持っている20〜30代の人材がいるなら、会社はそちらを選びます。
なぜなら、お給料が安いから。これはマネジメントにおいても同様です。もちろん、どっちつかずが一番危ないのは、言うまでもありません。
専門職かマネジメント職か。今回はこのテーマについてお伝えしたいと思います。
まず「専門職を極めていく」とは、具体的にはどのように考えたらいいのでしょうか。大事なポイントは、次の3つです。
① 社内に自分と同程度、あるいはそれ以上の同じ専門性を持った人材はいないか
② 将来性はあるか。その専門性は5年後も社内で輝いていられるか
③ その専門性は、独立できるレベルか、社内だけでなく社外でも評価されているか
①は、特に下の世代に自分と同程度の専門性を持った人材がいないか考えてみてください。いるようであれば、それ以上の専門性を獲得しないと厳しいでしょう。
②は、慎重に見極める必要があります。自身が身につけた専門性を極めていっても、将来的に不要になってしまう技術・技能だったら意味がありません。
③は、独立はしなくても非常に重要です。専門性とは社外影響力を指します。社外でも評価されるレベルの専門性でなければ、社内で生き残るのも難しいかもしれません。
①〜③をクリアしていて、自身の専門性が本当に会社や世の中の役に立つのであれば、専門性を極めていくのがいいでしょう。専門性を極めれば、定年後も役に立つかもしれません。変に薄めず、今後も磨きをかけていくのが正しい選択です。
では、①〜③をクリアしていない場合は、どうしたらいいのでしょうか。その場合は、やはり社内マネジメントに積極的に関わっていくべきでしょう。
ただしマネジメント職は、専門技術がない人の逃げ道ではありません。そこには、しっかりしたロジックがあるし、やり方があります。
誤解している人が多いのですが、マネジメントは専門職のひとつです。マネジメントの3大要素、タスクマネジメント、ヒューマンマネジメント、リスクマネジメントがそれぞれある種の学問になるほど、極めて高度な技術・技能が求められます。
ドラッカーさんの『マネジメント』を考えてみてください。あの本は、相当分厚いですよね。マネジメントには、それぐらい奥深い、広範な知識が必要とされるのです。
キャプ)『マネジメント[エッセンシャル版] – 基本と原則』(ピーター・F・ドラッカー(著、上田惇生訳/ ダイヤモンド社)
マネジメントの道に進むなら、それこそまずは『マネジメント』をしっかり読んでから、マネジメントについて改めて勉強していくことが必要になります。
もうひとつ大事なことがあります。それは専門職を極める選択をしたとしても、マネジメント力が必要になることです。組織で働く以上、一定のマネジメント力がないと、専門性を発揮することもできません。
マネジメントとは、「経営資源を有効に活用し、最大の成果を上げること」。経営資源とは、「人・モノ・カネ・時間・情報」です。専門職であっても、これらをムダなく活用し、最短距離で目標を達成することが求められます。
「マネジメントは苦手」「嫌い」という人は少なくありませんが、専門職として生き残っていくのは、それ以上に困難という現実もあります。たとえ専門職であったとしても、専門性の勉強ばかりでなく、マネジメントの勉強もしておくべきでしょう。
たとえばCGの会社などで、制作をするうえで求められるのは、やはり20代・30代の若い感性・感覚だったりします。そのため40代・50代になると、ディレクションやマネジメントがおもな業務となり、専門性だけでやっていくのは厳しくなります。
あるいは、私が営業をしていたときの上司は、大学院に行き、キャリア論を学び、修士を取って、今は大学の先生をやっています。当時も優秀な営業マネージャーでしたが、営業力だけでずっとやっていくのは、難しいのかもしれません。
ですから40代・50代に必要なのは、専門性プラス中ぐらいのマネジメント力か、本当の大マネジメント力を身につけるか、そのどちらかを決めるという選択です。
どちらの道を選ぶとしても、マネジメントからは逃げられません。40代・50代の皆さん、今からでも遅くありません。マネジメントの勉強をしましょう。
「西尾さん、専門職を極めていくべきか、社内マネジメントに積極的に関わるべきか、人事が最も見ているのは、どんなことですか?」
よくこうした質問をいただきます。人事が最も見ているのは「将来的な専門性」です。
専門職なら、社内外で「ほかにいないよね、こういう人」と言われるくらいの専門性を身につけているか。マネジメント職なら、「あの人に任せれば、課は大丈夫だよね。部は大丈夫だよね」と言われるほどのマネジメント力を身につけているか。もしくは、身につけようとしているか。人事はそういう観点で人材を見ています。
ただ、それだけではありません。マネジメント力も含めて、40代・50代の社員には、さまざまなものを求めています。以下の表は、私が管理職研修などで実際に使っている「目指すべき人材像のイメージ」という資料です。
キャプ)目指す人材像のイメージ
「志向性」「意志」「考え方」「コンピテンシー」「知識・スキル」に分け、専門職とマネジメント職、どちらにも共通する、目指すべき人材像を示しています。
左側がNGな事例、右側なOKな事例です。
たとえば「考え方」でいえば、「何かをやるときは何かを捨てなきゃダメなんだよ」という「トレードオフ」や、「ケースバイケースだよね」で終わってしまう場当たり的な考え方はNG。「優先順位をつける」「ビジネスプロセスの体系化を行う」がOK。
「知識・スキル」でいえば、「全体として汎用的なビジネス知識が不足している」がNGで、「経営者が使うビジネス知識を備えており、それを前提とした会話ができる」がOKです。
これらは、専門職とマネジメント職、どちらを選択するとしても求められる要素です。こうした志向性を持つ人材に成長することも視野に入れ、今後の選択について考えてみてください。
次回につづく
人事という職に就いたならば、読む“義務”がある1冊
成果主義、職務主義、年俸制、人事部廃止… 90年代から変わらぬ「人事」の構造、変わらぬ平均給与額が、日本を世界トップクラスの「社員が会社を信頼しない国」へと導いたのです。
なぜ変革が進まないのか、その背後に潜む「考え方」の欠如とは何でしょうか?
中学時代に習ったこと、覚えてますか?
多くの人にとっては、すべての勉強の基礎になっている大事な「当たり前」のことですが、思い出せと言われても思い出せる方は少ないでしょう。
この「この一冊ですべてわかる 人事制度の基本」には、人事の当たり前が詰まっています。
ー「なぜ、あの人が?」
なぜ多くの企業で「評価基準」が曖昧になっているのでしょうか。
どうすれば給与が上がるのでしょうか。
11,000人超の人事担当者から絶大な支持を得るコンサルタントが、今まで9割の会社が明かさなかった「絶対的な指標」を初公開!
テレワーク時代には「ジョブ型」に留まらず、「超ジョブ型人事」が不可欠。
その一番の理由は、テレワークをはじめとするこれからの働き方には「監視しない事が重要であるから」です。
人事の“必須科目”を押さえる
プロの人事力
次のステージに向けて成長するためのキホン
人事担当者に必要な知識・学び方、仕事に対する心構え、業務との向き合い方、さらには人事マネージャー、人事部長へとキャリアアップするために必要な能力・スキルを一挙公開
2021年は、黒字リストラが2020年の1.7倍に増えました。日本たばこ産業、KNT-CTホールディングス、LIXIL、オリンパス、アステラス製薬、藤田観光、博報堂などの上場企業を中心に希望退職・早期退職が実施され、1万人以上が退職に至っています。今後もさらに増えていくかもしれません。
40代・50代になっても、ビジネスパーソンは学び続けることが重要です。今回は、40~50代からでも十分学べる「リストラ回避」のためのスキルをお伝えします。まずひとつは、「ロジカルシンキング」です。ロジカルシンキングとは、物事を体系的に整理し筋道を立て、論理的に分析する思考法のこと。管理職研修でもよくお伝えしているのですが、管理職の役割は全体像を見ること。全体を見たうえで、何が大事で何は捨てても良いのかを考える、物事を俯瞰的に捉えるスキルが必要となります。
東京商工リサーチによると、2021年に希望退職を募った上場企業は80社以上。上場企業の希望・早期退職募集は2019年以降、3年連続で1万人を突破。2021年の募集者数は判明しているだけでも1万5000人を超えています。 コロナ禍によって経営が悪化した企業もありますが、大手企業の多くは黒字経営にもかかわらず希望退職・早期退職という名目の大規模なリストラに踏み切っています。なぜこれほどリストラ増えているのか。いま一度、その背景を理解しておきましょう。
最近、日本の賃金が上がっていないことが話題になっています。日本の平均賃金は1990年代の半ばまで世界でもトップクラスでしたが、他国にどんどん抜かれ、現在はアメリカの半分程度。ドイツやフランスなどの欧米諸国はもちろん、韓国よりも低く、OECDの最下位グループになっています。
50代のリストラ対策のひとつは、若手の指導です。「あの人、若手を育てるのがうまいよね」「あの人に預ければ、育ててくれるよね」と社内で評判が立つのは、リストラを防ぐ有効な手立てとなります。
ここ数年、「50代についての意見を聞かせてください」というご依頼が増えてきました。当連載もそうですし、『人事の超プロが教える 会社員 50歳からの生き残り戦略』(PHPビジネス新書)という本も出させていただきました。やはり中高年を対象とした黒字リストラや早期退職・希望退職を募る企業が増えているからでしょう。今回も「人事は中高年を実はこう見ている」というリクエストをいただきました。私は人事部時代、中高年の社員をどう見ていたのか。今回はこうしたテーマで、率直な意見や感想をお伝えしたいと思います。
50代になってくると、若い社員との世代間ギャップを感じることが増えてきます。世間話でテレビの話をすると、まったく通じないことも多く、「テレビ見ないんで」と言われて愕然としてしまったりします。これは私だけではないと思います。職場で世代間ギャップを感じている中高年の方は多いのではないでしょうか。そこで今回は、「世代間ギャップを超える中高年の技」についてお伝えしたいと思います。
年収とパフォーマンスが一致していない人は要注意 コロナ禍以前から増えてきた、45歳以上の早期退職・希望退職という名のリストラ。その候補となっているのは、パフォーマンスより年収が高い人です。それはどういうことなのか、詳しく説明しましょう。