2024.09.11
40代・50代になっても、ビジネスパーソンは学び続けることが重要です。今回は、40~50代からでも十分学べる「リストラ回避」のためのスキルをお伝えします。まずひとつは、「ロジカルシンキング」です。ロジカルシンキングとは、物事を体系的に整理し筋道を立て、論理的に分析する思考法のこと。管理職研修でもよくお伝えしているのですが、管理職の役割は全体像を見ること。全体を見たうえで、何が大事で何は捨てても良いのかを考える、物事を俯瞰的に捉えるスキルが必要となります。
40代・50代になっても、ビジネスパーソンは学び続けることが重要です。今回は、40~50代からでも十分学べる「リストラ回避」のためのスキルをお伝えします。
まずひとつは、「ロジカルシンキング」です。ロジカルシンキングとは、物事を体系的に整理し筋道を立て、論理的に分析する思考法のこと。
管理職研修でもよくお伝えしているのですが、管理職の役割は全体像を見ること。全体を見たうえで、何が大事で何は捨てても良いのかを考える、物事を俯瞰的に捉えるスキルが必要となります。
これは20代・30代よりも、40代・50代のほうが優れている能力です。人工知能研究者・黒川伊保子さんの著書『成熟脳 ―脳の本番は56歳から始まる』(新潮社)によると、本のタイトルにもあるように、脳の本番は56歳から始まるといいます。
脳は人生最初の28年間であらゆる知識や感覚を得てピークを迎え、40代頃までは試行錯誤を繰り返します。40代・50代になると物忘れが多くなってきますよね。これは脳の衰えだと思いがちですが、実は必要なものを見極め、不要なものを捨てている「進化」なのだそうです。
加齢によって固有名詞を覚える力が衰えただけで、物事の構造や概念などを考える「コンセプチュアルスキル」に関しては、むしろ高まっているそうです。コンセプチュアルスキルとは、知識や情報などを体系的に組み合わせ、複雑な事象を概念化すること。物事の本質を把握する力です。
ロジカルシンキングを学び、コンセプチュアルスキルを磨く。物事を俯瞰して捉えて構造化したり、分析したりする力を高める。これは若い世代にはできない、40代・50代ならではのスキルです。
刑事ドラマを見ていると、ベテラン刑事がよく「刑事の勘だ」と言っていますよね。残念ながらビジネスの現場では「長年の勘だ」というだけでは、若い子はピンときませんし、信じてもらえません。
若い世代に何かを伝えるときは、「このように分析したら、〇〇という答えになるよ」とロジカルに分析し、答えを導き出す必要があります。
そのための方法が、ロジカルシンキング(論理的思考)です。ロジカルシンキングを学ぶことによって、問題分析のスキルが磨かれます。問題分析とは。多くの情報の中から必要な情報とそうでない情報を選り分け、問題を客観的かつ構造的に捉えること。
ロジカルシンキングの基本ツール(プロセス図、マトリクス、ロジックツリー、ピラミッドストラクチャーなど)を活用して、情報整理や問題分析をする力を高めましょう。
ロジカルシンキングの基本といわれる概念の1つに、「MECE(ミーシー)」があります。MECEとは、抜け漏れなく、物事の全体を網羅して考えること。
直感も大事ですが、40〜50代にはそれを裏付ける論理的思考が必要です。ロジカルシンキングを身につけることで、抜け漏れを発見しやすくなり、周りがやろうとしていることに対して「この部分を見落としているんじゃないか」といった指摘をしやすくなります。
若い人たちの小論文を読んでいると、やはりそこができていない人が多いです。「人が辞めるから採用します」「長時間労働だから残業を減らします」と短絡的な思考に陥っていることが多く、「そもそもなんで人が辞めるんだっけ」「なんで長時間労働になってるんだっけ」「なぜこれまでそれができなかったんだっけ?」といった視点が抜け落ちています。
物事は、対処療法だけやっていても、うまくいきません。重要なのは、俯瞰的に捉えて本当の原因に行きつくこと。それが得意なのが40代、50代です。
若い世代から相談されたら「全体像を見ると、こうなっているだろう。ここが見えていないよ」と指摘できたら素晴らしいです。全体像を見て、物事を構造化する。構造化した中で、関連性を繋げて考える。こうしたことを改めて学ぶとしたら、ロジカルシンキングがいちばん役に立ちます。
さらに価値があるのは、将来どうなるかを見通す「戦略」のスキルを高めることです。過去と現在を見て、将来はこうなると考える。100%予見はできなくても、ロジカルシンキングのフレームワークを使えば、ある程度は見通すことができるようになります。
例えば、課長から部長に昇進するために最も必要となるスキルは「戦略策定」です。戦略とは、道筋を示すこと。会社のあるべき姿に向かう戦略を策定し、具体的な方針を示す。ある選択肢を示すということは、他の可能性を捨てることを意味し、その責任を取る覚悟が求められます。
戦略策定ができるかどうか。これが課長から部長になるための最大のハードルですが、ロジカルシンキングを学べば、戦略策定のスキルも身につけることができます。
ロジカルシンキングのフレームワークには、SWOTや3C、4Cなど様々な種類がありますが、どれもそれほど難しくありません。ロジカルシンキングの本もたくさん出ていますから、そんなに難しくなさそうな薄い本を1冊読むだけでもいいと思います。
そこから提案できることも生まれてくるでしょうし、現状を変えていく知恵も出てくるかもしれません。そもそも、なぜそんなにロジカルシンキングの本が出ているかというと、ビジネスに有用だからです。
フレームワークというのは、過去の立派な人たち、学者やコンサルが「こう考えたら全体が見えるよ」「先のことがわかるよ」と親切に考えて作ってくれたものです。それらを学び活用すれば、「あの人に相談すれば、ロジカルに答えを出してくれるよね」「3年先のことまで考えてくれるよね」などと信頼を得ることでき、さらにそこに自分の経験値を加えれば、より高い評価を得られるでしょう。
私が読んで面白かった本は、『ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件』(楠木建/東洋経済新報社)です。これはロジカルシンキングのマニュアル本ではありませんが、「大きな成功を収めた企業の戦略には共通点がある」という競争戦略の新しい視点を獲得できる本でした。
戦略とは、先のことを考え、「やること」と「やらないこと」を決めるスキルですから、50代は絶対に持っておかなくてはいけません。戦略を立てるには、やはりロジカルシンキングが必要です。
対人関係で学んでおきたいスキルは、「コーチング」です。コーチングとは、対話を通じて相手の内面にある答えを引き出し、自ら考えて行動する人を育てるためのコミュニケーションスキルです。
ティーチングは指導をすることですから、これまで自分が経験してきたことを教えればいいわけですが、それだけでは自分の経験から伝えことしかできません。そのため相手が学べる範囲が狭くなってします。学べる範囲を広げるためには、相手から答えを引き出すコーチングのスキルが必要です。
コーチングは、会社の中だけでなく、世の中全体に一定の需要があるので、定年後のビジネスにするために学んでいる人もいます。コーチングのプロとして活躍するのは難しいかもしれませんが、学んでおいて損のないスキルだと思います。
40〜50代の方々は、これまで培ってきた20年、30年ものビジネスの経験があります。その経験を背景にしながら、悩める部下や後輩の力を引き出していく。コーチングに関する本もたくさん出ていますし、社外のセミナーもあります。今からでも学びやすいという点でも、おすすめです。
ロジカルに物事を考えられる。部下や後輩の考える力を伸ばせる。企業もこのような人材をリストラしようとは思いません。ロジカルシンキングとコーチング、今からでも学んでみてはいかがでしょうか。
次回につづく
人事という職に就いたならば、読む“義務”がある1冊
成果主義、職務主義、年俸制、人事部廃止… 90年代から変わらぬ「人事」の構造、変わらぬ平均給与額が、日本を世界トップクラスの「社員が会社を信頼しない国」へと導いたのです。
なぜ変革が進まないのか、その背後に潜む「考え方」の欠如とは何でしょうか?
中学時代に習ったこと、覚えてますか?
多くの人にとっては、すべての勉強の基礎になっている大事な「当たり前」のことですが、思い出せと言われても思い出せる方は少ないでしょう。
この「この一冊ですべてわかる 人事制度の基本」には、人事の当たり前が詰まっています。
ー「なぜ、あの人が?」
なぜ多くの企業で「評価基準」が曖昧になっているのでしょうか。
どうすれば給与が上がるのでしょうか。
11,000人超の人事担当者から絶大な支持を得るコンサルタントが、今まで9割の会社が明かさなかった「絶対的な指標」を初公開!
テレワーク時代には「ジョブ型」に留まらず、「超ジョブ型人事」が不可欠。
その一番の理由は、テレワークをはじめとするこれからの働き方には「監視しない事が重要であるから」です。
人事の“必須科目”を押さえる
プロの人事力
次のステージに向けて成長するためのキホン
人事担当者に必要な知識・学び方、仕事に対する心構え、業務との向き合い方、さらには人事マネージャー、人事部長へとキャリアアップするために必要な能力・スキルを一挙公開
「日立 全社員をジョブ型に」というニュースが日経新聞の1面トップになっていました。日立製作所は今年7月にも事前に職務の内容を明確にし、それに沿う人材を器用する「ジョブ型雇用」を本体の全社員に広げるということです。ジョブ型雇用、テレワーク、ワーケーション、週休3日制など、働き方の多様化が急速に進み、戸惑いを感じている人も多いでしょう。ですが、働き方が変わっても、大事なことは変わりません。
ここ数年、「50代についての意見を聞かせてください」というご依頼が増えてきました。当連載もそうですし、『人事の超プロが教える 会社員 50歳からの生き残り戦略』(PHPビジネス新書)という本も出させていただきました。やはり中高年を対象とした黒字リストラや早期退職・希望退職を募る企業が増えているからでしょう。今回も「人事は中高年を実はこう見ている」というリクエストをいただきました。私は人事部時代、中高年の社員をどう見ていたのか。今回はこうしたテーマで、率直な意見や感想をお伝えしたいと思います。
中高年のリストラが止まりません。東京商工リサーチ によると、2021年の上場企業における早期・希望退職の募集人数は約1万6000人。前年の2020年は約1万9000人でした。2年連続で1万5000人を超えたのは、ITバブル崩壊後の2001〜2003年以来だといいます。リストラを実施している企業は、赤字とは限らず、好業績でも早期・希望退職を募っているため、「明日は我が身」と不安になっている方も多いでしょう。では、会社での自分のポジションが、どうであったらヤバイ、どうであったらセーフなのでしょうか。今回は、その目安について、お伝えしたいと思います。
中高年の皆さん、暇ってありますか?もし暇な時間があるのでしたら、その活かし方こそが生きる道となります。中高年になると、仕事はそこそこでいいかなと考え、プライベートを充実させようとする人が増えてきます。それはそれで、いいことだと思うのです。プライベートが充実していれば、「暇」ではなくなります。
コロナ禍前後からリストラの対象となっているのは、おもに45歳以上の中高年です。しかし40代、50代になったからといって、誰もがリストラされるわけではありません。歳を取っても会社で生き残れる人には、3つの特徴があります。 1つは、マネジメント力があること。マネジメント力には、「タスクマネジメント」と「ヒューマンマネジメント」の2つのスキルがあり、どちらも重要です。
会社はあなたを不要と判断したとき、どんな動きをするのか。前回は中高年のリストラ回避法についてお伝えしましたが、今回はこのテーマについてもう少し深掘りしてみましょう。 この人は給与に見合った働きをしていない、このまま会社にいてもらっては困る。会社がそう判断したときの最初の動きは、「解任」と「異動」です。
私たち50代がリストラ時代を生き抜くために避けて通れないポイントは、若い世代から「老害」と思われないことです。 「50代はまだ老人じゃない」と思われるかもしれませんが、年齢は関係ありません。老害とは、自分より若い世代に迷惑をかけること。 30代であっても、20代に迷惑をかけていれば「老害」と呼ばれます。
50代のリストラ対策のひとつは、若手の指導です。「あの人、若手を育てるのがうまいよね」「あの人に預ければ、育ててくれるよね」と社内で評判が立つのは、リストラを防ぐ有効な手立てとなります。