2025.09.24
人員計画の策定は、人事担当者にとって非常に重要な職務です。的確な人事異動を実施することによって、社員の成長を促し、業績を上げる最大の仕掛けとなります。そこで検討したいのが、「自己申告制度」の導入です。自己申告制度は、エンゲージメントを高め、離職率を下げる効果も期待できます。
人員計画は、中長期的に人員はどれだけ必要なのか、それに対して現在どれだけの人員がいるのか、これらを雇用形態別、職種別、階層別(役職別)に作成します。誰をどこに配置し、期間内の変動予測計画を立て、これを踏まえて代謝(採用)計画を作ります。まずは単年度でしっかり作ることが大切です、
会社によって人員計画や人材費予算の組み方はさまざまで、それを主管する(主に担当する)部門も、経営企画部だったり、経理部だったり、または人事部だったりします。自社がどのように人員計画を組んでいるのか、しっかりと把握しておいてください。
3月決算の会社であれば、11月頃から人事部門が各部門にヒアリングを行い、来期に向けての状況を確認するのが一般的。併せて各メンバーの来期以降の育成方針や異動方針、あるいは課題などを聞きます。各部門の来期予算案を提出するのが年内12月頃まで。2月初旬までに来期予算、組織、主要な人事(部長人事など)の策定が行われ、2月中旬から3月上旬までに人員計画の策定と人事異動調整を行います。
私は人事部時代に人員計画を担当し、毎年2月中旬から4月まで調整と根回しで非常に多忙な時期を過ごしましたが、人事担当の醍醐味はこういうところにあるんだなぁと感じました。
なかでも「人事異動」は、社員を成長させる最大の仕掛けです。そして的確な人事異動を実施するためには「自己申告制度」が必須であると実感しました。自己申告制度は、社員のエンゲージメントを高め、離職率を下げる効果も高いです。人事異動と自己申告制度について、ここで改めて整理しておきましょう。
人事異動は、狭い意味では「転属・転勤・任免」のみを指すこともありますが、広い意味では社内において、それぞれの社員の地位や勤務状態などを変更することを指します。具体的には、以下のものが挙げられます。
●転属…所属する部署が変わること
●転勤…勤務地が変わること
●任免…役職への任用や解任
●昇格・降格…等級制度における等級の上下変動
●応援…業務の繁閑に応じて他部門で一定期間働くこと
●駐在…所属部門の転属なしに、別の拠点で働くこと
●出向…自社との雇用契約を結んだまま、別の会社で働くこと
●休職…一定期間労務提供を免除すること
●復職…出向・休職から戻ること
人事異動は、大きく分けると、新年度においての組織変更に伴い大きく配置転換を行う「定期人事異動」、期中にさまざまな状況の変化を受けて配置転換を行う「臨時人事異動」の2つがあります。これらは会社によって考え方や対応が違います。自社が人事異動をどのように考えているのかを確認しておきましょう。
的確な人事異動を実施するために、私は「自己申告制度」の導入を推奨しています。自己申告制度とは、社員個々人の現在の仕事の状況、キャリアプラン、異動希望などを書面で申告してもらう仕組みです。
自己申告制度には「上司を通じて申告するもの」と「人事部門に直接申告するもの」がありますが、上司を通じて行う場合は、部下としては異動希望を言い出しにくいケースがあると考えられます。社員の本音を把握するためには、直接人事部門に申告する形態が良いでしょう。人事担当者は、その申告をしっかり読み込み、そこに書かれた異動希望やその理由についての情報を基に「異動案」を作っていきます。
異動の決定権は、各部門の責任者が有しています。人事部門が決定するわけではありませんが、自己申告の情報を基にした異動案はある程度説得力を持ちますから、中長期的な観点から異動を働き掛けることが可能になります。
短期的に見ると、異動はさせないほうが個々のパフォーマンス上がります。やったことのない仕事をすれば、当然パフォーマンスは下がりますよね。そのため短期的には異動を少なくしたほうが個人の成果や会社の生産性は上がりやすくなるのですが、「中長期で見たらどうなのか」ということもよくよく考えておかないといけません。
会社の未来を担うコア人材は、異動を繰り返し視野や経験の幅を広げたほうが将来のためになります。一方、同じ部署で専門性を高めていったほうが本人のためにも、会社のためにも良い場合もあります。人事担当者は、そういうところまでよく見て、人材配置を考えていく必要があります。
各部門は短期的な業績も負っているため、重要な戦力の社員ほど他部門に異動させることに抵抗感を持ちがちです。しかし、その結果、人材育成が遅れてしまったり、本人の希望が通らず退職してしまったりすることもあります。異動希望を出している社員がいたら、その部門の責任者を説得していくことも人事の重要な役割となります。
もちろん希望が出ているからといって、すぐに異動させることが必ずしも本人のためになるとは限りません。異動案は自己申告の情報だけでなく、人員計画策定時の各部門へのヒアリングによる上司の考え方や、人事評価の結果など、さまざまな情報を総合的に加味しながら作っていくものです。
とはいえ、社員一人ひとりの希望を把握しておくことは重要です。個々人の希望を聞いても必ずしも全員の願いを実現できるわけではありませんが、社員のうち20%でも願いが叶うのだとしたら「うちの会社って社員のことをちゃんと見てくれているんだ!」と、社員の自社に対する印象が変わます。
毎年希望者の2割ほどが望んだ仕事に就くことができれば、会社は間違いなく活性化します。私は実際にそういう現場を見てきました。「異動を願えば叶う可能性がある」と社員に示すことでエンゲージメントが向上し、離職者を減らすことにも成功しました。自己申告制度の導入、ぜひ検討してみてください。
人事という職に就いたならば、読む“義務”がある1冊
成果主義、職務主義、年俸制、人事部廃止… 90年代から変わらぬ「人事」の構造、変わらぬ平均給与額が、日本を世界トップクラスの「社員が会社を信頼しない国」へと導いたのです。
なぜ変革が進まないのか、その背後に潜む「考え方」の欠如とは何でしょうか?
中学時代に習ったこと、覚えてますか?
多くの人にとっては、すべての勉強の基礎になっている大事な「当たり前」のことですが、思い出せと言われても思い出せる方は少ないでしょう。
この「この一冊ですべてわかる 人事制度の基本」には、人事の当たり前が詰まっています。
ー「なぜ、あの人が?」
なぜ多くの企業で「評価基準」が曖昧になっているのでしょうか。
どうすれば給与が上がるのでしょうか。
11,000人超の人事担当者から絶大な支持を得るコンサルタントが、今まで9割の会社が明かさなかった「絶対的な指標」を初公開!
テレワーク時代には「ジョブ型」に留まらず、「超ジョブ型人事」が不可欠。
その一番の理由は、テレワークをはじめとするこれからの働き方には「監視しない事が重要であるから」です。
人事の“必須科目”を押さえる
プロの人事力
次のステージに向けて成長するためのキホン
人事担当者に必要な知識・学び方、仕事に対する心構え、業務との向き合い方、さらには人事マネージャー、人事部長へとキャリアアップするために必要な能力・スキルを一挙公開
採用に関する問題を解決していくためには、「自社が求める人材像」を明確にすることが必要です。今回は「心と能力」という観点に着目してみましょう。「心はきれいだけど、能力が低い人」と「心はきれいではないけれど、能力は高い人」、あなたの会社ではどちら採用しますか?
フォー・ノーツ代表の西尾が、
人事3年目の社員に求められる3つのことを紹介していきます。
1年目は仕事を理解し、2年目はできたところ、できなかったところを洗い出す。
これらを踏まえて臨む3年目には、いったい何が必要なのでしょうか?
創業したてのベンチャーから成長後期、大企業クラスの規模に至るまで、
会社には様々な変化があります。そしてそれは、人事部も同じ。
今回は各ステージごとの人事部の立ち位置の違いと、
人事が陥りがちなことをお伝えします。
日本企業はなぜ年功序列から脱却しなければいけないのでしょうか? 90年代のバブル崩壊からながらく脱年功序列、脱日本型雇用が掲げてられていましたが、結局ほとんどの企業は年功序列を脱し切れていません。企業を破滅に導く「年功序列」の弊害を改めて考えてみましょう。 総合人事コンサルティングのフォー・ノーツ株式会社の代表であり、『超ジョブ型人事革命』(日経BP )の著者・西尾太が、年功序列の現状と課題についてお伝えします。
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上層部と現場の板挟みという人事担当者って多いですよね。
この状態ではどんな施策を打っても現場で働く社員との溝は深まるばかり。
場当たり的な人事制度ばかりになってしまい、「ブレて」しまうからです。
ブレる人事制度を生み出さないためには、人事ポリシーの策定が欠かせません。
コロナ禍で黒字リストラが増える中、従業員シェアやワークシェアリングなどの雇用を守る取り組みが注目されています。どちらも有効な施策ですが、長期的に継続するかどうかが鍵となります。そこで今回は、人事のプロフェッショナル集団、フォー・ノーツ株式会社の代表であり、『超ジョブ型人事革命』(日経BP)の著者・西尾太が、雇用を守るために人事担当者がすべきことについてお伝えします。
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