2021.04.09
コロナ禍で社会が激変するなか、年功賃金制度の撤廃、成果主義やジョブ型の導入など、多くの企業が人事評価制度の改革に取り組んでいます。今の時流に沿った人事制度に見直したい。そんなときは、将来も見据えたアドバイスもしてくれる人事コンサル会社に相談してみましょう。今回は、人事のプロフェッショナル集団、フォー・ノーツ株式会社の代表であり、『超ジョブ型人事革命』(日経BP)の著者・西尾太が、そのメリットについて解説します。
人事評価制度を見直す場合には、大きく分けて3つの選択肢があります。
① 自社の社員で、制度の設計から運用まで、すべて行う
② 人事部長を中途採用する
③ 人事コンサル会社にコンサルティングを依頼する
それぞれにメリット・デメリットがありますが、まず理解しておきたいのは、人事は、法務や経理、総務などと同じように、一定の知見や経験が必要な専門領域であることです。
人事とひとくちにいっても、人員計画・採用・配置・キャリアステップ・評価・給与・教育・労務など、その領域は多岐にわたり、すべてが密接に関連しています。人事評価制度を導入するなら、これらすべてを見直す必要があり、単に「制度」だけを取り出して考えるわけにはいきません。
参考記事:人事制度を大幅に見直したいときに注意すべきポイントや構築手順とは?
たとえば「ジョブ型」を導入するなら、評価・給与・育成・配置など、すべての人事施策を見直さなくてはなりません。また、制度は作ること自体は実は比較的簡単ですが、運用するのは大変です。時間も労力もかかります。評価者研修やステップアップ研修等による周知徹底、導入後の目標設定会議や評価会議の方法など、5年後、10年後も見据えた運用の仕方を考えておかなければ、制度を導入しても機能せず、混乱を生むだけです。
そのため人事評価制度を導入する際には、人事全般の知識と評価制度の運用経験が必要になります。あなたの会社にそうした人材がいるなら、自社だけですべて行うことも可能でしょう。メリットは、コストがかからないことです。ただ、ある調査によると、人事担当者を育成する仕組みがある企業はわずか16.4%。8割以上の企業では、人事について体系的に学ぶ環境が整っていないのが実情です。
人事は失敗が許されない領域です。どんな制度も設計・運用に失敗すれば、社内に混乱をもたらし、離職者が増え、業績が悪化するなど、何年先にもわたるダメージを企業にもたらします。このリスクの高さ、そして人事担当者の負担が大きいことが、自社ですべてを行う場合のデメリットです。
では、知識も経験な豊富な人材を人事部長として中途採用する方法はどうでしょうか?
これは当然、「人」によって成否が左右されます。人事全般に精通し、他社(できれば複数社)で人事評価制度の設計から運用まですべて経験した人物であれば、成功する確率も高いでしょう。優秀な人事部長を雇用できれば、自社だけで人事評価制度を導入・運用できるのがメリットです。
ただし、人事はとても幅広い領域のため、他社で長く人事部長を務めた人であっても、採用・育成・評価など、一部の領域しか経験していないことが多く、人事全般に関する専門知識は持っていないケースが少なくありません。また、そういう人材がいたとしても、年収1200万円以上は覚悟する必要があります。
人事施策は、結果が出るまで1〜2年はかかります。年収1200万円の人事部長を雇用し、2年後に失敗という結果が出た場合、2400万円以上の損失となります。失敗した制度を修復したり、新たに作り直す場合は、さらなる投資が必要になります。結果的に、数千万円規模の損失を招く危険性があるのです。
人事部長を雇用する場合のデメリットは、このリスクとコストの高さです。もちろん優秀な人材を獲得できれば、これらのリスクは解消されますが、難しいのは人選です。選考段階で高額な年収に見合った能力や経験があるのかを判断しなくてはなりませんが、人事領域に精通している人でなければ、その判断ができません。人事部長を中途採用するなら、人事の専門家に判断を仰ぐ必要があるでしょう。
3つ目の選択肢、人事コンサル会社に依頼する場合のメリットは、人事部長を雇用するよりも低コストで人事評価制度の導入を実現できることです。人事部長の年収より少ない金額で契約することも可能でしょう。雇用ではありませんから、結果が出ない場合は、契約を更新しなければいいのです。
デメリットは、やはり「人」によって成否が左右されることです。人事コンサルタントには「設計」はできても「運用」は未経験、あるいはノータッチの人が多く、実際には運用できない複雑な制度、細かすぎる制度、粗すぎる制度を作ってしまうことが少なくありません。
人事コンサル会社に依頼する場合のポイントは、人事評価制度の設計だけでなく「運用」の支援もしていることです。制度は運用できなければ意味がありません。制度は作ってからが本番ですが、運用できるかどうかは、実は作る時点でほぼ決まってしまいます。細かすぎず粗すぎず、自社の運用力に合わせた「良い加減」があります。そうした視点を持っているかどうかも人選のポイントです。
私が考えるベストの選択肢は、社内事情に詳しい人と、人事全般に通じているコンサルを組ませることです。この方法なら、人事部長は必ずしも人事に詳しい人でなくても構いません。たとえば元営業部長など、社内のことをよくわかっていて、社長や経営陣から信頼されている人であれば、人事に精通しているコンサルをパートナーにすることで、自社に適した制度を構築し、しっかりと運用することができます。
実際、当社では300社以上の企業の制度設計・運用支援をしてきた実績がありますが、その多くはこのパターンでした。まずはそうした体制で人事評価制度を作り、運用しながら、その部長のもとで人事全般に精通した次世代の人事部長を育てていけばいいのです。私たちが主催する「人事の学校」には、人事の全体像と基礎知識を総合的に学ぶために多くの人事担当者が受講されています。
人事の問題は、人事のプロに相談するのが一番です。どの方法を選択すべきかを含めて、私たちにお声をかけていただければ、各社の課題に対して、豊富な事例を元に、解決の方向性を提示いたします。
人事という職に就いたならば、読む“義務”がある1冊
成果主義、職務主義、年俸制、人事部廃止… 90年代から変わらぬ「人事」の構造、変わらぬ平均給与額が、日本を世界トップクラスの「社員が会社を信頼しない国」へと導いたのです。
なぜ変革が進まないのか、その背後に潜む「考え方」の欠如とは何でしょうか?
中学時代に習ったこと、覚えてますか?
多くの人にとっては、すべての勉強の基礎になっている大事な「当たり前」のことですが、思い出せと言われても思い出せる方は少ないでしょう。
この「この一冊ですべてわかる 人事制度の基本」には、人事の当たり前が詰まっています。
ー「なぜ、あの人が?」
なぜ多くの企業で「評価基準」が曖昧になっているのでしょうか。
どうすれば給与が上がるのでしょうか。
11,000人超の人事担当者から絶大な支持を得るコンサルタントが、今まで9割の会社が明かさなかった「絶対的な指標」を初公開!
テレワーク時代には「ジョブ型」に留まらず、「超ジョブ型人事」が不可欠。
その一番の理由は、テレワークをはじめとするこれからの働き方には「監視しない事が重要であるから」です。
人事の“必須科目”を押さえる
プロの人事力
次のステージに向けて成長するためのキホン
人事担当者に必要な知識・学び方、仕事に対する心構え、業務との向き合い方、さらには人事マネージャー、人事部長へとキャリアアップするために必要な能力・スキルを一挙公開
会社は利益を追求する組織ですが、社員に求めるものはそれだけではありません。
会社における「困った人」を出さないために、人事は社員を評価する制度をしっかりと定めましょう。
今の日本には仕事そのものにモチベーションを持てない人がたくさんいます。
その理由は「働くこと」を押し付けられていると感じているから。
解消するには「目の前に広がる選択肢に気づいてもらい、
どれかを自発的に選んでもらう事」が重要です。
総合人事コンサルティングのフォー・ノーツ株式会社は、代表取締役社長・西尾太の著書『この1冊ですべてわかる 人事制度の基本』出版記念特別セミナー【聞いた後でジワジワくる‼西尾太の「地味な」人事の話】を2022年11月17日、TKP東京駅日本橋カンファレンスセンターにて開催いたしました。本記事は、このセミナーの内容を再構成・加筆してお届けしています。今回のテーマは「制度づくり」。職位制度・評価制度・給与制度の大事なポイントを簡単に説明します。
新型コロナウィルスによる業績低迷で、多くの企業において給与支払いの負担が大きくなっています。給与を削減する対応策の一つが、従業員をある期間休ませる一時帰休。 今回は、この一時帰休についてその仕組みと特徴をご説明いたします。
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優秀な若手社員ほど、数年、時には数ヶ月で突然辞めてしまうことがあります。
「この会社にいても外で通用しない」など理由は様々。こうした時、若手社員の不満に耳を傾けたり、柔軟な働き方を提案することで退職を思いとどまらせることができるかもしれません。
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コロナ禍で否応なく進む在宅勤務制度。しかし、その一方で接客業など、どうしても出勤が必要な職種があるのもまた確かです。同じ社内に在宅勤務ができる職種、できない職種が混在している場合、しばしば人事に寄せられるのが「自分は(職種上)在宅勤務ができないのに、同じ社内で在宅勤務している人がいるのは不公平だ!」という声。 さて、そうした声が起こる理由は何なのか?人事担当者としてはどのように対処すべきか考えてみましょう。