2026.05.27
管理職の大半が「好き」ではないという人事評価。そもそもなぜ上司は部下の評価をしなければいけないのか。そう思っている方も多いのではないでしょうか。評価の意義と目的とは何か。人事評価をするすべてのマネージャーの必携書『この1冊ですべてわかる 人事評価の基本』(西尾太/日本実業出版社)から抜粋し、この根本的な疑問について考えてみましょう。

これまで私は、数多くの企業で人事評価制度の構築や運用に携わってきました。また、多くの評価者研修も実施してきました。そこで出会った評価者≒管理職(マネージャー)の皆さまに必ずお尋ねしているのが、「人事評価、好きですか?」という質問です。
しかし、「好き」と答えた方は、ほぼいませんでした。返ってくるのは、「難しい」「制度がよくわからない」「それでなくとも忙しいのに評価をしている時間がない」といった回答ばかりです。
同じように「人事評価と聞いて何色を思い浮かべますか?」という質問もしています。この問いに対しても、「黒」「灰色」「黒に近い灰色」という回答がほとんど。「闇」と答えた方もいらっしゃいました。赤、青、オレンジなどの有彩色や、ご自身の好きな色を思い浮かべる人は極めて少ないようです。
人事評価に携わっている者として大変残念なことですが、管理職の皆さまがそうおっしゃる気持ちもよくわかるのです。部下の評価は、時間も手間もかかります。にもかかわらず日本の管理職は、その大半がプレイングマネージャー。プレイと真剣に向き合っていれば、マネジメントに割いている時間はないのでしょう。
そのうえ、人事評価は「難しい」「制度がよくわからない」という印象が強くあります。決して明るいイメージではなく、「好きではないけれど、避けて通れないもの」という認識になってしまうのは当然なのかもしれません。
それでもやはり、「上司による部下の評価」は必要です。そもそもなぜ管理職は部下を「評価」をしなければならないのか。評価者である皆さまには、この根本的なところから改めて考えてみてほしいのです。
管理職である「あなた」は、企業で働いており、部下がいます。少々カタい話になりますが、あなたが役員でないのなら、所属する企業と労働契約(雇用契約とほぼ同義)を結んでいます。あなたの部下も同様に企業と労働契約を結んでいます。
労働契約というのは、労働者が使用者(企業や経営者)に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことを内容とする労働者と使用者の間の契約です(労働契約法 第6条)。労働契約において、労働者側には次の4つの義務があります。

管理職は、部下がこれらの義務をしっかり果たしているかを管理・確認することが求められています。まずは、以上の権利と義務があることを確認しておきましょう。
また、そのためには、あなたの企業の就業規則に目を通しておく必要があります。特に「服務規律」という項目を確認し、メンバーにそれを遵守させる権利・義務があることを理解しておいてください。
一方、企業には「人事権」「企業秩序定立権」「指揮命令権」といった強い権利があります。人事権とは、広義では労働者の地位の変動や処遇に関する使用者の決定権限です。企業が社員の「採用、配置、異動(配転)、人事評価、昇進・昇格・降格、解雇」などを行う権利を有するとされています。
皆さまが人事権をどの程度有しているかは、企業とそこにおける職位(部長・課長など)によって異なりますが、ご自身がどの程度の人事権を持っているかはきちんと把握しておいてください。職務権限規定がある企業であれば、それを確認すればある程度はわかるはずです。
多くの場合、メンバーの役割、仕事内容、出してもらいたい成果などは、最終的にはあなたが判断するはずですから、一定の人事権は企業から付与されていると考えてよいでしょう。つまり例外的なケースもありますが、「育成責任」は直属の上司である「あなた」にあるのです。部下を育てる権利と義務がある。まずは、ここが大事なポイントです。
さて、人事権は労働者の地位の変動や処遇に関する使用者の決定権限であるため、その中には「評価する権利」も含まれます。管理職は企業から「評価を行う権利と義務」も課せられていると言えるでしょう。
部下が「労働者としての各義務をしっかり履行しているか」「人事権・指示命令権の元において依頼した仕事をしっかりやり遂げているか」などを確認して評価する。管理職とは、これらの権利と義務を企業から付与された存在なのです。
労働契約上の評価者と部下の関係を確認したところで、評価者がしなければならないことは、「組織業績をあげる責任を果たすこと」と「人を育成する責任を果たすこと」になります。
管理職は「評価者」として、あなたの組織・チームの業績をあげていかなければなりません。組織・チームが提供する価値を大きくすることは、最終的には組織や企業の「売上を大きくすること」につながります。
また、業務効率を高め同じ価値をより小さい業務量であげていくようにしていくことは、「原価」や「経費」の削減につながり、「利益を大きくすること」にもつながります。
つまり「評価者」であるあなたは、自分ひとりの業績ではなく、複数人で構成されている組織・チームの業績の責任を負っているのです。管理部門なども同様に、組織・チームの価値を高め、効率を上げていく責任があるのです。
評価においては、主に「成果評価」が組織業績への責任につながっていきます。そのために必要なのは何でしょうか?
そう、部下の成長です。評価者は、組織業績責任者であり、人材育成責任者でもあります。なぜ管理職は部下を評価しなければならないのか。それは「人を育てる責任がある」からです。メンバーに気づきを与えて成長を促すために、評価があるのです。改めて整理してみると、(ほんの少しかもしれませんが)評価に対する印象が変わってきませんか?
人事評価制度の意義と目的、評価者としての正しい態度・考え方については、拙著『この1冊ですべてわかる 人事評価の基本』でも詳しく解説しています。こちらも参考にしてみてください。

人事という職に就いたならば、読む“義務”がある1冊
成果主義、職務主義、年俸制、人事部廃止… 90年代から変わらぬ「人事」の構造、変わらぬ平均給与額が、日本を世界トップクラスの「社員が会社を信頼しない国」へと導いたのです。
なぜ変革が進まないのか、その背後に潜む「考え方」の欠如とは何でしょうか?

中学時代に習ったこと、覚えてますか?
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この「この一冊ですべてわかる 人事制度の基本」には、人事の当たり前が詰まっています。

ー「なぜ、あの人が?」
なぜ多くの企業で「評価基準」が曖昧になっているのでしょうか。
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プロの人事力
次のステージに向けて成長するためのキホン
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そこでキャリアステップ策定の方法や意識しておいてほしいことを、
前後編に分けてご紹介します。
脱・年功序列の実現で最後に必要になってくるのは、人事担当者の「想い」です。社会や顧客への想い、株主への想い、取引先への想い、そして共に働く人への想いがなければ、様々な抵抗に屈して改革は頓挫します。制度を変えて運用に成功している企業とそうではない企業の違いは、その原動力となる人事担当者の想いの強さにあります。総合人事コンサルティングのフォー・ノーツ株式会社の代表であり、『超ジョブ型人事革命』(日経BP )の著者・西尾太が、人事担当者に必要な3つのマインドセットについて解説します。
今回は人事担当者が持っておくべき心構えについて、
フォー・ノーツ代表の西尾がお話いたします。
人事部に配属されてまだ日が浅いうちは、目の前の仕事で精いっぱいかもしれません。
そんなときには心構えを思い出して、必要なことを再確認してみて下さい。
人事にとっては社内の情報収集も業務の一環です。
社内の人が集まりそうなところに積極的に顔を出して、
コミュニケーションを重ねなければいけません。
目指すは「話しかけやすい人事」です!
新卒でも、中途入社であっても、人事未経験で人事部に配属されたとしたら、
どのような考え方を持ち、何をして過ごすべきなのでしょうか?
今回は若手人事担当者の心構えについて解説します。
会社は利益を追求する組織ですが、社員に求めるものはそれだけではありません。
会社における「困った人」を出さないために、人事は社員を評価する制度をしっかりと定めましょう。
人事制度の中でも人気のある「研修」。
自社の弱いところにピンポイントで対策ができるので、重宝されていますよね。
しかし研修は実施すればそのまま成長につながるわけではありません。
しっかりと考えないと、研修が様々な無駄を生むもとになってしまいます。
総合人事コンサルティングのフォー・ノーツ株式会社は、代表取締役社長・西尾太の著書『この1冊ですべてわかる 人事制度の基本』出版記念特別セミナー【聞いた後でジワジワくる‼西尾太の「地味な」人事の話】を2022年11月17日、TKP東京駅日本橋カンファレンスセンターにて開催いたしました。本記事は、このセミナーの内容を再構成・加筆してお届けしています。今回のテーマは、「何に対してお金を払うのか?」。人事制度設計の根本的な考えを整理しましょう。