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0から学べる「代謝計画」〜人員削減の方法〜

代謝計画は、人事担当者の重要な仕事です。代謝計画には「採用計画」も含まれますが、逆に人員削減をしなければならない場合もあります。前向きな仕事ではありませんが、必要な仕事です。人員削減はどのように行ったらいいのか。直接的な手法から、間接的なアプローチまで、可能な方法をお伝えします。

要員計画と人員計画の差異を埋める施策

人事の仕事といえば、採用をイメージする人は多いでしょう。実際、人事担当者の多くは採用への関心が高く、私たちが主宰する人事担当者の育成プログラム「人事の学校」も採用に関する講座は特にたくさんの人が受講されています。人事を志望する求職者も、ほとんどが「採用をやりたい」という人です。

採用は人事における大切な仕事のひとつですが、それとは逆に、人員削減をすることも必要になる場合があります。これらが「代謝計画」です。代謝計画とは、要員計画と人員計画の差異を埋める施策です。(要員計画は、人件費予算に基づいて組織の構成員や雇用形態別人員数を計画すること。人員計画は、実際の配置を決めること)。

代謝計画には「採用計画」や「異動計画」も含みます。欠員、余剰に対してそれぞれどのような手を打つのか。欠員があれば、社内異動で対応するのか、外部から採用するのか、派遣社員を採るのかなどを計画していきます。

採用計画とは逆に、余剰、つまり要員計画より現人員数が多い場合は、人員削減が必要になります。人を減らすのですから。前向きな仕事ではありません。しかし、これも人事の仕事です。

通常行われるのは、臨時や有期契約の社員、派遣社員の削減です。これらは、契約期間満了をもって「雇止め」となります。無期雇用・正社員には雇止めはありませんので、無期雇用・正社員の削減が必要な場合は出向(在籍したまま他社で働くこと、通常人件費は他社から出ます)や、転籍(退職して他の会社に移ること、転籍は本人の同意が必要)で対応します。

人員削減の手段には、「整理解雇」という方法もあります。整理解雇とは、会社が経営不振や事業縮小などの理由で人員を削減する必要がある場合に従業員を解雇する手続きのことです。ただし、整理解雇は極めて慎重な判断が必要となります。

整理解雇は、最終手段。退職勧奨をすることはある

整理解雇は、パートタイマーの雇止め、臨時社員の削減、新規学卒者、中途採用の採用削減・停止、退職者の不補充、配置転換、出向、転籍、希望退職者の募集などの施策を講じても、なお人員削減の目的を達成できなかったときの最終手段です。整理解雇を実施するには、以下の4つの要件を満たさなければなりません。

上記の要件を満たす会社は、かなりの経営危機の状態といっていいでしょう。欠勤、度重なる遅刻など、明らかな雇用契約不履行がない限り、解雇はできないと考えるべきです。では、整理解雇の4要件を満たさない場合は、どのようにして人員削減を実行したらよいのでしょうか。

社員が同意しやすい条件を付加して、「退職勧奨」をすることはあり得ます。退職勧奨とは、会社が従業員に対して退職を促す行為のことです。従業員の意思を尊重し、合意の上で退職を目指す手続きを指します。一方的に契約を解除する解雇とは異なり、双方の合意が前提となります。

これに同意してもらえれば、「雇用契約の合意解約(会社と社員が合意して雇用契約を終了すること)」として退職となります。あるいは、「希望退職」は、退職勧奨に近い形態で会社の方から一定の条件を示して退職希望者を募る方法です。以上のような方法で人員削減を実行していきます。

評価制度の運用による人員削減とは?

また、別の方法もあります。それは「評価制度」の運用による人員削減です。退職勧奨や希望退職といった直接的な方法ではなく、評価制度を運用することによって、間接的に人員削減をしていくのです。

評価制度とは、「会社が社員に求めるもの」を明らかにし、それに対して社員個々人がどのような状態にあるのか、要件を満たしているのか、超えているのか、足りないのか、を確認するものです。「会社が社員に求めるもの」があり、それに向けて行動し、評価をしてフィードバックがあり、気づくことにより成長を促す。このサイクルが、評価制度です。評価の結果は、給与制度につながっていきます。

時々聞く話ですが、「評価制度を新たに導入したら辞めてほしい人材が辞めた」という事例があります。しかも、制度を運用する前に、です。「会社が社員に求めるもの」を実行できない、つまり日頃から成果をあげず、低評価になることが確実で、給与が下がることを自覚した社員は、評価制度が導入されると退職していく傾向があります。

評価の基準を明確にして評価に基づく「給与制度」に改定することによって、評価基準に満たなければ減給になる仕組みを入れると、自然代謝が見込めることがあるわけです。

ただし、このアプローチは従業員全体に多大な影響を与えます。インパクトが大きく刺激が強すぎるため、組織全体のモチベーションに関わってきます。相当な“劇薬”なので、実行する場合はやはり慎重な判断が必要になります。

いずれにしても、代謝計画は急に行うのではなく、常日頃から評価制度・給与制度において適切な代謝が図られる状態をつくっておくことが大切です。そうすることで、「人員数が必要要員数より多い」という状態は避けやすくなります。人事担当者は、常に中長期的な視点を持って考えていくことが必要なのです。

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