2024.04.17
人手不足倒産が増えています。約7割の企業が人手不足に陥り、2024年には約8割の企業が賃上げを検討しています。その一方、給料が高くなくても優秀な若手を集めている企業もあります。給与アップだけが、人材不足を解消する手段ではありません。今回は、若くて優秀な若手を集めている企業に共通する「3つのポイント」を紹介します。
人手不足倒産が増えています。帝国データバンクの調査によると、年ベースで過去最多を更新。2023年は年間累計で206件に達し、2014年以降で初めて200件を上回る高水準になったといいます。昨今は多くの企業が人手不足に陥っており、東京商工リサーチの「企業の人手不足に関する調査結果」によると、約7割(71.1%)の企業が「人手が不足している」と回答。約8割(82.9%)の企業が、2024年の賃上げの実施を予定しているようです。
人材確保のためには給与アップは避けられませんが、大企業と低収益にあえぐ中小企業の賃金格差が一段と拡大するとも指摘されています。
どうしたら人手不足を解消できるのか。これは企業にとっても、人事にとっても喫緊の課題です。そもそも給与アップをすれば、人材不足は解消できるのでしょうか?
確かに給与を上げれば、短期的には効果があるかもしれません。しかしそれだけでは、もし他社も給料を上げれば、その人は簡単に転職してしまうかもしれません。なにしろ約7割の企業が人手不足なのです。人が欲しい企業はいくらでもあるでしょう。
また、「入社後の給与アップは何を持って行うのか」などもしっかりと考えておかなければなりません。入社時は高かったけど、その後は上がらない、ということではモチベーションも上がらず、離職につながります。
私たちのクライアントで、給料は決して高くない(というかかなり安い)会社があります。しかし魅力的な事業をしており、優秀な若手を集めて育てています。それはなぜでしょうか?
給与が高くなくても優秀な若手を集めている企業には、おもに3つの共通点が見られます。
1つは、中長期的なビジョンを明確に示していること。その会社も経営ビジョンがしっかりしており、今は安いけど将来は収益を上げて給料も上げていくという道筋が見えています。もちろんその通りに行くかどうかは今後次第でしょうが、少なくとも事業の意義と将来の希望はあります。
2つ目は、キャリアステップを明確にしていること。その会社では経営ビジョンだけではなく、社員の将来の道筋も具体的に示しています。それは以下のようものです。
・入社して3年程度、現場(店舗)または営業を中心として実務を経験する(現場のオペレーションや商品、顧客を知る)
・チーフとして、プロジェクトのマネジメントを2〜3年経験する
・30歳までにコア人材となり事業をつくる。あるいは既存事業のマネージャーになる
若手にとって何より怖いのは、将来が見えないこと。私が在籍していた会社でも、人事制度を導入する以前は、若い、特に優秀な人材ほど「先が見えない」といって辞めていきました。コロナ禍以降、こうした傾向はさらに強まっているように感じます。自身の将来がイメージできない会社では、給与を上げるだけで優秀な人材を獲得することは難しいのではないでしょうか。
キャリアステップとは、「ある職位や職務に就任するための必要な業務経験とその順序」を具体的に示すこと。会社と社員、それぞれ関する将来のビジョンを具体的に示すことは、若手にとって強力な安心材料になるはずです。
そして、3つ目は「求める人材像」を明確にしていること。若くて優秀な人材を集めている企業は、「こういう人材に来てほしい」ということを具体的に示しています。私も新卒採用において、次のような話をしていました。
当社の企業ステージは成長期から安定成長期に入ろうとしているところです。ただ、その安定期は長続きしないと想定されており、変革期が早く、10年以内にやってくると思います。新たな事業をつくっていかなければなりません。そのために「コア人材」を求めています。組織を改変し、新たな価値を創造するとともに、既存事業、新規事業双方において、価値増大のためのプロジェクトを「ヒト・モノ・カネ・情報」などを組み合わせてマネジメントしながらひっぱっていく人です。
かなりハードルの高い話ですよね。話の途中で帰る人もいましたが、「やりたい」という人も相当数いました。その中から入社してくれた人たちの多くは、その後、20代後半からマネージャー職、部長職を担い、グループ会社の社長になった人もいます。重要なのは「うちの会社が求めているのは君なんだ」と、個々の心に響く明確なメッセージを発することではないでしょうか。
さまざまな企業の採用ページや求人サイトを見ていると、楽しそうに働いている先輩はたくさん出ていても、肝心の「どういう人を求めているのか」を具体的に示していることが少ないように思います。つまり、その企業独自の「求める人材像」が示されていないのです。
自社の求める人材像を明確にし、自社サイトの採用ページ、求人サイト、企業説明会や面接場面などで、「当社はこういう人に来てもらいたい」ということをしっかり示す。
その上で選考に臨み、求める人材像に近い人材を選んでいくという過程を経ることで、採用の成功を上げることができるはずです。
人材獲得は、さまざまな角度から取り組む必要があります。まずは「中長期的なビジョンを示す」「キャリアステップの明示」「求める人材像を明確にする」から始めてみてはいかがでしょうか。
【参考】
・帝国データリサーチ:人手不足倒産の動向調査(2023年1-10月)
・東京商工リサーチ:従業員の欠員率「5%以上」 企業の51.4%と半数超え 「宿泊業」「建設業」「情報通信業」で人手不足が浮き彫り
・東京商工リサーチ:来春の賃上げ 「2023年超え」は 1割にとどまる 原資の確保には 「価格転嫁」「人材開発」を重視
次回に続く
人事という職に就いたならば、読む“義務”がある1冊
成果主義、職務主義、年俸制、人事部廃止… 90年代から変わらぬ「人事」の構造、変わらぬ平均給与額が、日本を世界トップクラスの「社員が会社を信頼しない国」へと導いたのです。
なぜ変革が進まないのか、その背後に潜む「考え方」の欠如とは何でしょうか?
中学時代に習ったこと、覚えてますか?
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ー「なぜ、あの人が?」
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どうすれば給与が上がるのでしょうか。
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その一番の理由は、テレワークをはじめとするこれからの働き方には「監視しない事が重要であるから」です。
人事の“必須科目”を押さえる
プロの人事力
次のステージに向けて成長するためのキホン
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AIや副業やアウトソーシングといった多様化する昨今の働き方。
様々な雇用形態から最適なリソースを選び取る必要がある
人事という役職に求められる人事統括としてのポジションとは。
このたび、代表西尾の共著
「人事担当者が知っておきたい、10の基礎知識。8つの心構え。」(赤本)
が増刷となりました。
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