2025.07.24
人事部門には、3つの機能があります。それは「①人事・採用」「②給与・厚生」「③育成・評価」です。今回は、初めて人事担当者になった方々に向けて「人事・採用」の基本をお伝えします。「人事・採用」においては、「可能性の人事」と「確実性の人事」、2つのベクトルが必要です。
人事部門における「人事・採用」とは、どのような機能なのでしょうか。それは人材を採用することだけではありません。大きく分けると、以下の8つの職務があります。
社員の採用活動から入社手続き、配属・異動・任免、あるいは休職や復職、そして退職までの流れ(ここではこれを「人材フロー」といいます)をつかさどることが、「人事・採用」のおもな機能です。
この人材フローのことを、狭義で「人事」と呼ぶこともあります。「4月の人事では……」といえば、4月に誰がどこに異動・配置となるかといったことを意味します。
「つかさどる」というのは、これらの人材フローの決定を必ずしも人事部門が行うわけではなく、「仕切る」ということを意味しています。「いつまでに、どのような決定をしなければならないか」を決め、その期日に向けて、決定権者(対象者の人事権を持つ人)に決めてもらうように働きかけるのです。
その意思決定のために必要な情報を提供し、その決定によるほかへの影響も伝えます。誰かが別の部署へ異動すれば、その補充人員を別の部署から持ってこなければならないかもしれません。誰かの採用を決定すれば、ほかの誰かを採用できないかもしれません。誰かを職位から外せば、モチベーションを下げ、周囲に悪影響を及ぼすかもしれません。そうしたリスクも踏まえたうえで、決定権者に決めてもらうわけです。
これらの(狭義の)人事は、その時点だけのものではなく、中長期的な会社の戦略に基づき、求める人材象を設定したうえで、採用・育成・配置方針を決め、それらに基づく人員計画(どこの部署に、どのような人材が、どれだけ必要なのかを計画すること)を策定します。
そして、これが異動計画・採用計画(欠員、余剰に対してどのような手を打つのか、社内異動で対応するのか、外部から採用するのか、派遣社員を採るのかなど)、育成計画(人材をどのように育ててるのか、教育するのか)の策定につながっていきます。
人事・採用とは、まさに会社全体の人事をつかさどる重要な位置づけの機能になります。
この「人事・採用」という仕事は、一言でいうと「可能性に賭ける」ものといえるでしょう。会社の、そして個人の、可能性を広げていくのです。ある人を採用するということは、その人の可能性を最大限に引き出し、能力を発揮してもらい、そして会社に利益をもたらすであろう、と判断して行います。異動・配置も同じです。ある人の異動は、次の部署で活躍・飛躍するかもしれない、と判断して行います。
この判断が成功すれば、「しめたもの」です。このような場面を見ることが、「この仕事をやっていてよかった」と人事担当者として意義を感じられるときです。
一方、「可能性に賭ける」ことは、「失敗もある」ということです。そういう意味では、人事部門のもうひとつの機能である「給与・厚生」とは正反対の概念になります。「給与・厚生」は、「確実性の人事」です。ミスや失敗は許されません。給与計算を誤れば、社員からの信頼を失うことになるでしょう。
つまり人事部門には、「可能性の人事」と「確実性の人事」というまったく異なる2つのベクトルの仕事が併存しているのです。「可能性の人事」である人事・採用において、求める人材像にぴったり当てはまる人にはなかなか出会えません。そういう人がいつか来てくれることを祈り、待ち続けることもできないわけではありませんが、そんな悠長なことを言っていられないのが多くの会社の現状ではないでしょうか。
早く採用しないと現場が疲弊する、早く決めないと良い人材に逃げられてしまう、他社に採られてしまう……。
したがって、たとえ求める人材像に「ぴったり当てはまらない」場合であっても、「もしかしたら成長してくれるのではないか」「今はピンとこないけれど、将来的には“化けて”くれるのではないか」という可能性に賭けることになります。
応募段階ではピンとこなくても、会社の魅力や仕事の意義・意味合いを熱く伝えることで、応募者の就業観が変わるかもしれません。これまでとは違う期待以上のパフォーマンスを発揮してもらえるかもしれません。
だからこそ、採用面接の際の「動機づけ」は、とても重要です。人事・採用担当者としては、獲得すべき必須スキルといえるでしょう。
採用面接における「動機づけ」とは、「意識を変えてくれたら」という人に、あるいは「当社に来てくれないかな」「他社も欲しがる人材だろうな」という人に、会社の事実を伝え、課題を伝え、さらに「ここで働く意味」を伝え、「ここで働きたい」と思ってもらうことです。
入社や異動を口説いた結果、成功することが多くあります。一方で、失敗することもあります。入社後まったく化けない、異動しても変わらない、問題社員化するという事例もあります。それでも「失敗を恐れて、無難にこなす」という考えでは、人事の仕事は務まりません。その結果として、会社は何も変わりません。
私はベンチャーで採用担当をしていたとき、新卒を20人採るとしたら4人ぐらいは社長に相談して「化けるかどうかわからないが、もしかしたら超優秀かもしれない」と思える人材を採用していました。まさに「可能性の人事」です。その成功率は50%くらいでしたが、半分くらいは本当に優秀な人材でした。その後、社長や役員になって活躍している人が何人もいます。
どちらに転ぶかわからない人材を採用するのは、リスクも高いです。「こいつと心中してもいいや」という覚悟が必要になります。しかし成功すれば、会社に対して大きな貢献を果たすことができ、人事担当者としても、このうえない達成感を得ることができます。
人事・採用の担当者のみなさんは、「可能性に賭ける」という意識をぜひ持っていてください。そのうえで、自分自身の「可能性を見極める力」を研ぎ澄まし高めていってください。多くの成功例を積み上げていくこと。それこそが、この仕事の意義なのです。
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なぜ変革が進まないのか、その背後に潜む「考え方」の欠如とは何でしょうか?
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今回は「残業」について、人事がどのように考えているかをお伝えしたいと思います。残業については、もちろん厳しく見ています。だらだら残業をして毎月7〜8万円稼いでいる人は、半年たったら残業代だけで50〜60万円くらいの収入になります。ボーナスで50〜60万円はなかなかつけられません。となると、効率よく仕事して毎日定時で帰っている人よりも収入が多くなってしまいます。
労務分野の法律や制度に関する「お勉強」が
人事担当者の第一歩だと勘違いしてしまっている方は少なくありません。
しかし実は、人事担当者には専門的な知識など必要ないのです。
この記事では人事担当者に求められる知識を解説していきます。
人事ポリシーとは会社の「人」に対する考え方を表明したものです。
会社が抱える「人」の悩みの大半は、社員との間にある意識のミスマッチが原因です。
自社に即した人事ポリシーによって意識をすり合わせることができれば、
複数の課題が一気に解決することも珍しくありません。
総合人事コンサルティングのフォー・ノーツ株式会社は、代表取締役社長・西尾太の著書『この1冊ですべてわかる 人事制度の基本』出版記念特別セミナー【聞いた後でジワジワくる‼西尾太の「地味な」人事の話】を2022年11月17日、TKP東京駅日本橋カンファレンスセンターにて開催いたしました。本記事は、このセミナーの内容を再構成・加筆してお届けしています。今回のテーマは、「何に対してお金を払うのか?」。人事制度設計の根本的な考えを整理しましょう。
人手不足が深刻化する現在、企業の約8割(82.9%)が2024年に賃上げを実施予定だといいます。「うちは給与が安いので人が採れない」「給与が低いので人が辞めてしまう」「給与を上げたいのはもちろんだが、現実的には厳しい」とおっしゃる経営者が多くいます。しかし、給与を上げれば人が採用でき、定着し続けてくれるのでしょうか。今回は、この問題を深掘りしてみたいと思います。
人事担当者が持つ人事のお悩みは、なかなか共有することも難しいため、
自分の(あるいは部署内の)力で解決しなくてはならないことも多いでしょう。
今回は、人事1年目から人事としてキャリアアップしたい人まで、
多くの人事担当者に読んでいただきたい本を3冊ご紹介します。
キャリアステップが必要なのはわかるけど、
どのタイミングで導入するべきかわからない。
今回はこの疑問に、フォー・ノーツ株式会社の曽根がお答えいたします。
「なぜ自分は人事部に配属されたのだろう?」
人事部に配属されることの意味は、新卒と中途採用によって変わってきます。
今回は、入社してすぐに人事部に配属される人の傾向について解説いたします。