2024.09.26
今回は「残業」について、人事がどのように考えているかをお伝えしたいと思います。残業については、もちろん厳しく見ています。だらだら残業をして毎月7〜8万円稼いでいる人は、半年たったら残業代だけで50〜60万円くらいの収入になります。ボーナスで50〜60万円はなかなかつけられません。となると、効率よく仕事して毎日定時で帰っている人よりも収入が多くなってしまいます。
今回は「残業」について、人事がどのように考えているかをお伝えしたいと思います。
先日、ある企業の社員からこのような相談をうけました。
「私はなるべく定時で帰れるように、毎日ToDoリストを作って効率的に仕事をしています。でも会社には、だらだら残業している人が少なくありません。人事はこういう社員に対して、どう思っているのでしょうか?」
残業については、もちろん厳しく見ています。だらだら残業をして毎月7〜8万円稼いでいる人は、半年たったら残業代だけで50〜60万円くらいの収入になります。
ボーナスで50〜60万円はなかなかつけられません。となると、効率よく仕事して毎日定時で帰っている人よりも収入が多くなってしまいます。
毎日定時で帰る人がバカを見る。こんなことがあってはならないので、どの会社でも人事はさまざまな施策を講じているはずです。
私は人事部時代、社内の残業ランキングを作っていました。毎日のように長時間残業をしている社員がいたら、管理職に対して「ちゃんと見ていますか?」と注意をしなくてはなりません。そのランキングは経営とも共有し、上司が部下の残業をきちんと管理しているかをチェックする機能としても活用してプレッシャーをかけていました。
戦後最悪といわれる不況によって、今、多くの企業が経営難に陥っています。どの企業でも、今後ますます残業への見方は厳しくなっていくはずです。
ただし、残業そのものが「悪」というわけではありません。重要なのは、労働時間そのものではなく「何」をやっているかです。
もっとハッキリ言ってしまえば、その残業によって「成果」を出しているかどうかです。
意味もなく、だらだら残業をして、何の成果も出していない。これは当然、問題になります。「きちんと上司に申請して承認をとって残業をしてください」と注意もしますし、上司の管理責任も問われてきます。
しかし、そうでない残業もあります。デキる人のところには、仕事が集中してしまうものです。効率よく働いて、成果も出しているけれど、仕事量が多くてどうしても残業時間が多くなってしまう。こういう場合は、必要な残業と判断します。
必要な残業かどうかは、労働時間と人事評価を照らし合わせれば、すぐにわかります。残業が多くても成果を出していれば、評価が高い。残業は多いけれど成果を出していなければ、評価は低い。
一目瞭然です(ただし、これは「評価者」がしっかり見ていることが前提です。残業が多いメンバーに対して、成果ではなく、単に「あいつはがんばっている」と評価してしまう、イケてない評価者もいます。ここはやはり、「どれだけの成果を出しているか」をしっかり見ていく視点が必要です)。
もちろん必要な残業であっても、あまりにも長時間に及んでいる場合は「ほどほどにしてくださいね」と伝えはしますが、その残業によって評価が下がったりすることはありません。なぜなら、会社が最も重視しているのは、「成果」だからです。
リモートワークが普及してきたことで、今後は残業の「中身」に対する評価も厳しくなっていくでしょう。これまでは職場のデスクに座っていれば、たとえネットサーフィンをしていたとしても、仕事をしているように見えたかもしれません。
しかし、在宅勤務の場合は、働いている姿が見えません。残業申請をした結果、どのような成果を出したのか、シビアに判断されます。
今後は「成果の定義」がもっと明確化され、それがオフィスにおける仕事に対してもフィードバックされていくでしょう。
では、人事としては、残業をしないで成果を出し、毎日「定時」で帰る社員こそが理想なのかといったら、必ずしもそうとは言い切れません。
短い時間で効率よく成果を出す。それはもちろん素晴らしいことです。残業代で稼いでないのですから、ボーナスはたくさん払ってあげたいとも思います。
ただ、人事評価の基準は「効率」や「成果」だけではありません。
人事は、残業が多い・少ないだけではなく、周囲との関係も見ています。隣にドツボにハマって大変なことになっている同僚がいるのに、定時になったら「お先に」と帰ってしまう社員は、それはそれでどうなんだろうと思います。
人事評価には「チームワーク」という評価項目があります。チーフクラス以上には、周囲に仕事の目的や意味を伝え、チームの活性化を促す「動機づけ」も必要とされます。
・メンバーを放置し、困っている人がいても気づかない、助けない
・チームの力を引き出そうとせず、士気を高める責任を感じていない
こういう社員は、たとえ毎日定時で帰って成果を出していても、マイナスの評価がつきます。昇格や昇給でも不利になります。歩合給の会社で一匹狼として生きていくのなら、それでもいいのですが、そうでない職場であれば、やはり周りとの関係も大切です。
たとえば、育児をするために定時で帰る必要がある場合など、個人的な事情や考え方を会社に伝えておいてくれれば何も言いませんし、それで評価が下がることもありません。
しかし、特に理由もなく、毎日定時で帰っている人に対しては「もうちょっとできることがあるんじゃないの?」と思っているのが、人事の本音です。
なぜなら、「それでプラスアルファの仕事までできているのかな」とか、「あるポジション以上のマネージャーになったときに職務を果たせているのかな」とか……。
もしくは「より高い価値を出そうとしているのかな」、といったことが気になるからです。
もちろん「残業をしましょう」なんて言えません。「もう少しがんばろうよ」と言ったとしても、それは要請でしかなく、強制ではありません。政府の自粛要請と同じです。
しかし、本当に要領がよくて、やるべきこと以上のことをやっていて、毎日定時で帰っているのか、ただ割りきって仕事をしているだけなのか。
人事、あるいは管理職は、そこを見極めなくてはなりません。
「できる人」と「認められる人」は違います。
評価の場で「あいつ成果は出しているけど、メンバーの評判が悪いんだよね」などといわれている人は、ボーナスは高くても、ある一定以上のポジションにはつけなかったりします。
短い時間で成果を出すことは大事です。今後はますます重視されていくでしょう。
しかし、会社が求めているのは、それだけではありません。現状をよりよく改善していくことや、人を育てることも、同じように求められています、
36協定では、通常残業時間は年間を通じて、月30時間までとなっています。
適正残業時間は、25〜30時間と言えるかもしれません。
それを超えて残業をしている人は、もっと効率のよい仕事のやり方を考える必要があるといえます。
逆に、毎日「定時」で帰っている人は、自分が会社に求められているプラスアルファの部分について、一度考えてみてもいいのではないでしょうか。
次回に続く
人事という職に就いたならば、読む“義務”がある1冊
成果主義、職務主義、年俸制、人事部廃止… 90年代から変わらぬ「人事」の構造、変わらぬ平均給与額が、日本を世界トップクラスの「社員が会社を信頼しない国」へと導いたのです。
なぜ変革が進まないのか、その背後に潜む「考え方」の欠如とは何でしょうか?
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多くの人にとっては、すべての勉強の基礎になっている大事な「当たり前」のことですが、思い出せと言われても思い出せる方は少ないでしょう。
この「この一冊ですべてわかる 人事制度の基本」には、人事の当たり前が詰まっています。
ー「なぜ、あの人が?」
なぜ多くの企業で「評価基準」が曖昧になっているのでしょうか。
どうすれば給与が上がるのでしょうか。
11,000人超の人事担当者から絶大な支持を得るコンサルタントが、今まで9割の会社が明かさなかった「絶対的な指標」を初公開!
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プロの人事力
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