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第10回 離職率が高い部署の上司が、必ずしも「ダメ管理職」とは限らない理由

ビジネスパーソンにとって、大きな悩みのひとつが「上司」です。ダメな上司の部下になってしまい、悩んでいる人も多いでしょう。私も先日、このような相談を受けました。 「うちの部署は離職率が高い。上司がダメ管理職なので困っています」 人材育成は、管理職の重要な役割。上司が本当にダメな管理職だったら、然るべき対処が必要です。ただ、その前に知っておいてほしいことがあります。

ダメな社員が辞めるなら、会社にとってはいい上司

ビジネスパーソンにとって、大きな悩みのひとつが「上司」です。ダメな上司の部下になってしまい、悩んでいる人も多いでしょう。私も先日、このような相談を受けました。

「うちの部署は離職率が高い。上司がダメ管理職なので困っています」

人材育成は、管理職の重要な役割。上司が本当にダメな管理職だったら、然るべき対処が必要です。ただ、その前に知っておいてほしいことがあります。

離職率の高い部署の上司がダメな管理職とは限りません。問題はどんな人が辞めているのか。ダメな社員が辞めているのなら、それはよい管理職です。

世の中全般で「離職率が高い=悪い」「離職率が低い=よい」といった認識が一般的になっていますが、一概にそうとは言えません。

たとえば、離職率の低い会社は「いい会社」と思われがちですが、働かない社員でも自動的に給与が上がる、ぬるま湯のような会社なのかもしれません。

こういう会社では、若手がいくら頑張っても評価されず、給与も上がらなかったりします。

逆に、離職率の高い会社は「ブラック企業」のようなイメージがありますが、成長意欲の高い社員が多く集まり、適切な新陳代謝が行われている場合もあります。

これは管理職にしても同じです。部下の評価を適切に行う上司だからこそ離職率が高く、適当な評価しかしない上司だからこそ離職率が低い場合もあります。離職率の高低だけで、管理職としての優劣を判断することはできないのです。

成績上位者、中位者、下位者といた場合に、下位者から辞めているとしたら、会社にとってこれほどよい管理職はいません。問題のある社員にちゃんと課題をフィードバックし、自ら別の道を考える機会を与えて円満退社に導いているのなら、人事としてもこんなにありがたいことはありません。

しかし、会社にとって「辞めてほしくない社員」が次々に辞めているのなら、それはやはり大問題です。そういう上司は、たしかにダメな管理職でしょう。

ダメな管理職にありがちな2つのタイプ

 有望な社員を辞めさせてしまうダメ管理職には、大きく分けて2つのタイプがあります。

ひとつは、パワハラ上司。これは、仕事ができない人とは限りません。むしろ仕事ができる上司が「なんでこんなことができないんだ!」と部下を一方的に叱責するなどして、過度なプレッシャーをかけて社員が辞めてしまうケースが多くあります。

名プレイヤーが名コーチになれるとは限りません。上司自身は仕事ができても部下のフォローができず、部署全体が疲弊し、部下がうつ状態になって辞めてしまう。こういうタイプは、たしかにダメな管理職といっていいでしょう。

もうひとつは、それとは真逆の、仕事ができない上司です。仕事が遅い、決断ができない、案件を通してこない、上ばかり見ている、部下がミスをしてもフォローしない……。

こうした仕事ができない上司の場合は、優秀な部下ほど「やってられない!」と自ら会社を去ってしまいます。年功だけで出世できる会社に多く見られる傾向ですが、こういう上司もダメな管理職といっていいでしょう。

このような管理職の情報は、人事も常に把握するように努めています。たとえば、自己申告制度を行なっている会社では、異動希望率が極端に高い部署があったりすれば、「ああ、あの人のところね」とすぐにわかります。

そして、有望な社員が次々に辞めてしまう原因が上司にあることが、ほぼ客観的に確認できたら、その上長もしくは経営者に客観的事実を伝え、「このままにしておいていいのでしょうか」「異動をさせた方がいいのでは?」と伝え、異動や降職を検討するよう働きかけをすることになります。

もしあなた自身が上司なら、ダメ管理職になっていないか、自分の行動を振り返ってみてください。有望な部下が何人も辞めているようだったら要注意です。

30代になったら、ダメな上司でも使いこなす

 会社員は、上司を選ぶことはできません。残念ながらダメな上司に当たってしまうこともあるでしょう。しかし上司に使われているうちは、ビジネスパーソンとして一人前とはいえません。30代になったら、上司をうまく使うことも大切です。

本来、上司ほど便利なものはありません。なぜなら、仕事を教えてくれます。「これやっていいですか?」と事前に許可さえ取れば、自分の代わりに責任を取ってくれます。ミスをしても一緒に謝りに行ってくれます。自分の仕事を評価してくれたり、「がんばれよ」と励ましたりしてくれたりします。しかも、すべてタダなのです。

こんなに便利な存在がほかにあるでしょうか?

馬鹿と鋏(はさみ)は使いようといいますが、ダメな上司も使いようです。上司に恵まれなかったら、上司をうまく使うことを考えましょう。

ただ、そうはいっても使いようもないダメな上司もいるものです。仕事を教えてくれない、責任を取ってくれない、ミスをしたら「お前ひとりで謝りに行け」と命令する、ちゃんと評価してくれない、励ましてもくれない、上ばかり見て下の面倒を見ない……。

そんな上司だったら、悩む必要はありません。人事に相談しましょう。あなたが一定の評価を受けていれば、人事はきちんと話を聞いてくれるはずです。

本当にダメな管理職は、人事が覚悟を持って刺しに行く

人事に報告するときは、事実を冷静に伝えることが大事なポイントです。「あの人はダメなんですよ!」と感情的に伝えるだけでは、人事は動きません。

「こういうことがありました」「誰々はこう言っています」「○○さんが病んでしまい悩んでいます」といった客観的な事実を報告するようにしましょう。

人事の基本として「現場の声を聞き、仮説として受け止め、検証しよう」という考え方があります。これは何かというと、社員の話を聞くことは大切だけれど、すべてを真に受けてはいけない、聞いた話はいったん仮説として受け止め、それが本当かどうかを精査し、事実がある程度確認できてから、アクションを起こす、というものです。

人事において何より大切なのは、公正であることです。人事の判断は、社員の一生を左右してしまうかもしれません。だからこそ、一方の意見だけを鵜呑みにして動くわけにはいかないのです。

調査を行い、事実が確認できれば、人事は行動を起こします。本人と直に話す、上長に相談する、経営者に伝えるなど、状況によって方法はさまざまですが、問題のある管理職に対しては異動を促したり、管理職を降りていただくなどの措置をとっていきます。

ただし、人事も命懸けです。訴えを起こされた管理職が社長のお気に入りだったり、強い派閥の人間だったりした場合には、返り血を浴びるかもしれません。それでも覚悟を持って刺しに行きます。

なぜなら、それが人事の仕事だからです。相手が誰であろうと「ダメなことはダメ」と、はっきり告げる勇気を持つ。一生懸命頑張っている社員を支援する。それを阻害する人がいたら戦う。人事とは、そういう仕事です。

懸命に働く社員を阻害するようなダメな上司だったら、人事に相談してください。それが真摯な訴えであれば、必ず行動を起こしてくれるはずです。

 

次回に続く

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