FOURNOTES

第3回 人事のプロから見た、会社で圧倒的に評価を得る社員の特徴

「うちは、好き・嫌いで評価していますから……」 給与、昇進、ボーナス、異動、さらには左遷やリストラなど、会社員の人生はすべて「評価」によって決まります。 評価が高ければ、給与が上がり、昇進し、ボーナスも上がる。 評価が低ければ、給与は上がらず、昇進もできず、リストラもあり得る。 ビジネスパーソンにとって本来「評価」は極めて重要なものです。 にもかかわらず、何をすれば評価が上がり、評価が下がるのか。ほとんどの会社では、その基準を明らかにしていません。

9割の会社では「好き・嫌い」が評価に大きく影響する

私が代表を務めているフォー・ノーツという会社では、さまざまな企業から評価制度の構築や見直しの相談を受けています。
ご依頼を受けてお会いすると、多くの人事の方がため息混じりにこう言います。

「うちは、好き・嫌いで評価していますから……」

給与、昇進、ボーナス、異動、さらには左遷やリストラなど、会社員の人生はすべて「評価」によって決まります。

評価が高ければ、給与が上がり、昇進し、ボーナスも上がる。
評価が低ければ、給与は上がらず、昇進もできず、リストラもあり得る。

ビジネスパーソンにとって本来「評価」は極めて重要なものです。

にもかかわらず、何をすれば評価が上がり、評価が下がるのか。ほとんどの会社では、その基準を明らかにしていません。

総務省と経済産業省の発表*によると、日本には現在約385万の企業があります。しかし、具体的な「評価基準」を示している会社は、全体の1割程度。先進的な上場企業でようやく3分の1。それが私の実感です。

つまり9割近くの会社では「好き・嫌い」を含む上司の個人的な主観によって社員の評価が行われているのが、いまだに日本の企業の実情なのです。

たとえ評価制度がきちんと整った企業であっても、評価するのが同じ人間である以上、
上司の「主観的な思い」が評価に反映されることは避けられせん。

また、直属の上司が客観的に評価したとしても、経営者の「鶴のひと声」によって、
その評価が変わってしまうことも少なくありません。

評価や給与を上げたい、昇進したい、そう考えるなら、まずはこの現実を受け止め、自衛策を講じる必要があります。

*総務省統制局:「平成28年経済コンセンサス-活動調査」より

経営者が特に嫌うのは「評論家タイプ」

私はこれまで1万人以上の昇格面接や管理職研修にたずさわり、評価会議などを通じて多くの経営者と接してきました。

社員を評価する上司の「好き・嫌い」は人によって異なりますが、経営者の「好き・嫌い」には、実は共通する傾向があります。

ほとんどの経営者が嫌っている社員のナンバーワン、それは「評論家タイプ」です。

評論家タイプとは、口が達者で、偉そうなことは言うものの、自分では何も行動しない社員です。彼らは、会社や組織、上司や部下、商品やサービスなどの問題点を、鋭く論理的に指摘したりします。

しかし、「だったらオマエがやれ!」と言われると、急に黙ってうつむいたり、今度は「できない理由」を並べ立てて、決して自分でやろうとはしません。

こうした社員は「評論家タイプ」と呼ばれており、オーナー経営者からは特に毛嫌いされています。

評論家タイプは、上司からは高い評価を得たとしても、経営者の判断で「低評価」に変わってしまうことが少なくありません。

一流大学を卒業し、MBA を取得している超エリートであっても、「評論家タイプ」には厳しい評価が下されます。

評価とは、「成果」と「行動」によって判断されるもの。どんなに立派なことを言っても、
「行動」に移さなければ、何も評価はされないのです。

言い訳ばかりする「タラレバ社員」も要注意

「もっと営業が頑張っていたら、絶対に売れていたのに」
「時期さえ早ければ、この企画は成功していた」
「もっと人が足りていたら、こんな結果にはならなかった」

このように「○○していたら」と仮定の話を持ち出して、失敗の言い訳をする「タラレバ社員」も、ほとんどの経営者が嫌っているタイプの代表格です。

「スケジュールがあったら……」
「予算があったら……」
「設備が整っていたら……」

仕事をしていれば、そう言いたくなる場面はあるものです。しかし、そうしたタラレバ発言はNGです。

「そんな条件、整うわけがないだろう!」

多くの経営者がそう叫んで、怒りを露わにする場面を私は何度も見てきました。

仕事に「タラレバ」はありません。今ある状況で何とかするのが、高い評価を得ている人たちなのです。

「性格」は変えられなくても「行動」は変えられる

では逆に、経営者に好まれるのはどんなタイプなのでしょうか?
実はこれも、ほぼ共通しています。

ほとんどの経営者が求めているのは、「明るく・元気で・素直な人」です。

明るい人は、楽観性が高く、物事をポジティブにとらえます。リスクを考えるよりも、行動することに意義を感じます。

元気な人は、エネルギーの総量が多く、ストレス耐性も高い。不確定な状況でも、前に進める強さを持っています。

素直な人は、周囲の意見に耳を傾け、他者の教えを謙虚に受け入れます。改善すべき点があれば、すぐに行動に移します。

経営者に限らず、各社の人事に「求める人材像」について尋ねると、どの企業からもほぼ同じ回答が返ってきます。
つまり「明るく・元気で・素直な人」が、最も高く評価されるタイプなのです。

もちろんそれだけではなく、実際の評価の項目は多岐にわたりますが、すべてのベースはここにあると考えても間違いはなさそうです。

とはいえ「そんなこと言われても……」と思う人も多いのではないでしょうか。たしかに「明るく・元気で・素直」は、その人の性格に起因するものです。ましてや人の性格は、先天的な要素が大きく、簡単に変えることは難しいと言われています。

しかし、「性格」を変える必要はないのです。「行動」を変えればいいのです。

もしあなたに「評論家タイプ」の傾向があるなら、口だけではなく、考えたことを実行に移す。

言い訳しやすいタイプなのだったら、「○○していたら」という「タラレバ発言」は禁句にする。

「明るく・元気で・素直」な性格でなくても、ポジティブな発言を心掛け、積極的に行動し、人の意見に耳を傾ける。

人の内面は、見えません。評価の対象となるのは、数値化できる「成果」と、可視化できる「行動」のみです。

たとえ心の中では違うことを思っていたとしても、「明るく・元気で・素直」に見える「行動」を取っていれば、評価は上がります。
この逆は、他の評価項目が仮に良好でも、あなたの評価の足を引っ張ってしまうのです。

どの企業も社員に求めているのは、成長と変化です。人事は、面接や適性検査などを通じて、実は社員の性格すらも把握しています。だからこそ「成長や変化」もきちんと見ています。

自身の「行動」を変えて、成長・変化が認められる社員は、評価も、給与も高くなり、昇進できます。

会社は何を求めているのか。どんな社員が評価されるのか。正しく認識して「行動」を変えていきましょう。

次回に続く

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