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第14回 人事のプロを困らせる“痛い社員”の実情と対処法

会社に不利益を与える社員=「モンスター社員」が、多くの会社で問題になっています。私たち人事の間では「困った人」「困ったちゃん」などと呼ばれているのですが、今回はこうした困った社員の代表的なタイプをまとめてみました。問題のある社員には、どう接したらいいのか、また気づかないうちに自分もそうなっていないか、あなたもチェックしてみてください。

優秀な社員が次々に退社……、社内恋愛型モンスターに気をつけろ!

会社に不利益を与える社員=「モンスター社員」が、多くの会社で問題になっています。私たち人事の間では「困った人」「困ったちゃん」などと呼ばれているのですが、今回はこうした困った社員の代表的なタイプをまとめてみました。

問題のある社員には、どう接したらいいのか、また気づかないうちに自分もそうなっていないか、あなたもチェックしてみてください。

社内恋愛型モンスター

恋愛は自由です。プライベートな問題に会社は口を出すことはできません。それでも「ええ加減にせえや!」と言いたくなるのが社内恋愛型モンスターです。

これは社内の複数の人と関係を持ってしまう社員のこと。社内での優位な立場を利用して個人的関係を強要する、デートに誘うといった行為は、相手が不快に感じればセクハラに当たります。本人が訴えてきた場合は、会社も然るべき対処を取ることができますが、合意のうえで関係が成立している場合は、なかなかセクハラにはできません。

ある会社では、優秀な女性が突然会社を辞めてしまったり、異動を申し出る女性社員が続出し、ある男性社員がその原因であることが判明しました。

要は、その男性社員が社内で複数の女性と関係を持っていたのです。この男性には妻子がいたので、関係を持った女性社員の一人がセクハラだと訴えたことで事態が発覚。懲戒処分と転勤させるといった対応をして、結局は退職になりました。

たとえ不倫であっても、本人が訴えてこない限り会社がとやかく言うことはできませんが、関係が破綻するとセクハラとして訴えられる場合があります。

不倫相手の夫や妻が会社に怒鳴りこんでくることもあり、こうした場合は「会社に迷惑をかけた」ということで一定の懲戒処分を行います。社内恋愛は個人の自由ですが、やはり節度を持って行うことが必要でしょう。

また、社内恋愛や不倫は周囲に知られていないと考えているのは本人たち同士だけで、周囲はだいたい知っているものです。それが業務に悪影響を与えるようであれば、人事としてはしかるべき対応をします。

 

「また親が来た!」 家族介入型モンスターは職場の大迷惑

◆家族介入型

会社の問題に親が出てくる、若手に多いケースです。

「うちの子は残業が多いんじゃないですか」「うちの子の評価はどうなっているんですか」など、クレームの内容はさまざまですが、通常は

「家族にはお話できないこともありますので、本人と話をします。本人から話を聞いてください」と対応しています。

家族の介入を禁じる法律や就業規則はありませんが、親が来るのを止められなかった時点で、会社としては「仕事のできない社員」だと判断せざるを得ません。

あまりにも親が何度も来て業務に支障をきたすようであれば、人事が注意を促し、場合によっては退職勧奨することもあります。

また、家族を理由に仕事をしない社員もいます。「妻が早く帰ってこいと言っているので残業はできません」「家族が出張しちゃいけないと言っています」といって上司の指示に従わないタイプのモンスター社員です。

上司には自らの職位・職能に応じて権限を発揮し、業務上の指揮監督や教育指導を行う義務があります。業務の適正な範囲で指示された残業や出張を拒むことは、就業規則に違反する行為です。節度を持った理由ならともかく、家族を理由に仕事しないことが常態化している社員には「あなたは会社の指示に従いませんでしたね」と言って「服務規律違反」で懲戒処分をすることもあり得ます。

 

遊びはできても、仕事はできない「新型うつ」

◆新型うつ

「うつ病」は脳の病気ですが、「新型うつ」は病気と言えるか微妙だそうです。状態はいろいろありますが、多くは「会社に行きたくない病」のようです。

病院で「うつ状態」「適応障害」などの診断書をもらってきて会社を休んでいるのに、海外旅行に出かけて、その様子をSNSに投稿したりしている、まさにモンスター社員の代表格です。

新型うつに困っている会社は、とても多いです。会社には来ないけれど、土日は遊べている。仕事はできないけれど、旅行はできる。そんな都合のいい病気があるでしょうか。

いろいろな事例があるので一概には言えませんが、多くの場合、新型うつは単なる「サボり病」と考えられてしまうような事例が多くあります

うつ病は薬物療法による治療で回復を期待できますが、新型うつの治療は難しいとされています。

しかし、適切な対処方法はあります。主治医の診断書、特に心療内科などではすぐに診断書を出してくれますから、それをそのまま真に受けず、会社が契約している産業医や信頼できるメンタル疾患に詳しいお医者さんで一回きちんと診断し直してもらいましょう。

休職している場合でも、遊びに行っている事実が確認できれば、虚偽の申告ということになります。「遊ぶことができるなら、復職してください。

復職できないのなら、お辞めになりますか、それとも雇用契約を変えますか」と伝えて、ただちに休職取り消しや退職勧奨などの処置を行うことも検討します。

 

職場のみんなが私の悪口を言っています

◆被害妄想型

「職場のみんなが私の悪口を言っています」「セクハラやパワハラをされました」。そうした告発を受けて事実を確認しても、その事実が出てこない。本人はますます怒り、名指しされた社員は戸惑い、みんなが気を使い、職場の雰囲気がどんどん悪くなっていく。

こうした困った問題もあります。

ただ、こうした場合は、統合失調症の可能性があります。統合失調性とは、幻覚や妄想といった実際にはないものをあるように感じる精神疾患です。私も何人か接したことがありますが、周囲の人には見えない、聞こえないことも統合失調性の人には実際に見えたり、聞こえたりしています。客観的な事実を伝えても、信じてくれません。

統合失調症を見極めるのは、非常に難しいです。精神科の先生に診てもらうしかないのですが、本人がなかなか病院に行きたがりません。ですから、こういう問題の場合は、人事のほうから積極的に介入していきます。

「以前の会社の人が私を追いかけて1階のカフェにいる」「あそこに監視カメラがある」などと言ったときに、一緒にその場に行って「ほら、ないよね。ないものをあると言ってしまうと会社にも迷惑がかかるから病院に行こう」といって説得するしかありません。

統合失調症は、適切な治療によりよくなる病気だそうですので、診断を受ける方向にもっていくことが大事です。家族と協力して綿密な対応をすべきです。

自分はいつも責められている、怒られている、といった妄想にとらわれて、仕事ができなくなってしまっている事例は少なくありません。被害妄想が極端な場合は、病気の可能性を考えたほうがいいでしょう。

次回は「遅刻の常習犯」や「当日休みます型」「仕事をしないモンスター社員」「自信過剰型」「他責型」「反抗型」「不安定型」などの対処法についてお伝えします。

 

次回に続く

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