2023.12.18
コロナ禍前後からリストラの対象となっているのは、おもに45歳以上の中高年です。しかし40代、50代になったからといって、誰もがリストラされるわけではありません。歳を取っても会社で生き残れる人には、3つの特徴があります。 1つは、マネジメント力があること。マネジメント力には、「タスクマネジメント」と「ヒューマンマネジメント」の2つのスキルがあり、どちらも重要です。
コロナ禍前後からリストラの対象となっているのは、おもに45歳以上の中高年です。しかし40代、50代になったからといって、誰もがリストラされるわけではありません。歳を取っても会社で生き残れる人には、3つの特徴があります。
1つは、マネジメント力があること。マネジメント力には、「タスクマネジメント」と「ヒューマンマネジメント」の2つのスキルがあり、どちらも重要です。
タスクマネジメントとは、チームの目標を設定し、計画を立案し、進捗を管理し、チームの目標を達成できること。要は、組織のPDCAを回せる力です。段取りを組み、ミスなく実行し、品質をチェックし、納期を守り、より良く改善し、成果を上げる。これを組織単位で行い、最短距離で目標達成ができる。
一方、ヒューマンマネジメントとは、人材を育てること。円滑なコミュニケーション環境を作り、部下に成長できる機会を与える。人材育成では「伝える力」はもちろん、部下の話に耳を傾けることができる「聞く力」も重要です。人の話をちゃんと聞くことができ、部下からも学び、チームに参加している意識を持たせることができる。
・チームをマネジメントして目標達成ができる。
・部下や後輩を育てることができる。
当たり前のようですが、この2つの力を持っている人はリストラされません。されたとしても別の会社が喜んで採用しますから、転職して生き残れます。タスクマネジメントとヒューマンマネジメントは、どんなビジネスにおいても必要になります。当たり前のことを当たり前にできることが、会社で生き残るための条件のひとつです。
もう1つは、「専門性」を持っていること。経理でも総務でも人事でも技術職でも、一定の専門性を持っている人は強いです。部下や後輩に継承できる技能・技術を持っていることも、歳を取っても会社で生き残れる特徴のひとつです。
例えば、弊社のクライアントにソフトウェアのシステムを作っている会社があります。そこのナンバーワン・エンジニアは、71歳です。Googleマップの開発にたずさわった人で、こうした先端技術を極めている人は何歳になっても生き残れます。
営業にしても、 B to Bに長けている、B to Cは誰にも負けないなど、何かに特化した自分の強みを持っていれば、「どこに行っても通用する力」になります。企業はそういう人の肩は叩きません。たとえリストラされても、他社が必要としてくれます。
では、自身の専門性が「どこに行っても通用する力」になっているかどうかを見極めるためには、どうしたらいいのでしょうか?
ひとつの目安は、本を書けるか。自身のノウハウを1冊にまとめたビジネス書を書いたら、ニーズがあるかどうか考えてみてください。実際に本を出せるかどうかは別にしても、出版社が相手にしてくれるような専門的スキルを持っているのなら、どんな会社に行っても通用するはずです。
あるいは、自分の替わりになる人がいるか。「ちょっと経理をやってきました」とか「人事をやってきました」では、もっと若く、自分より優れている人がいたら、自分は「いらない人」になってしまいます。自身のスキルを部下や後輩に継承することも大事ですが、自分自身も何かに特化した技術・技能を持っておく必要があります。
そういう意味で危ないのは、担当部長や担当課長、副部長、次長といった、いわゆる隙間役職の人です。部長や課長ではなく、何をしているのかよくわからないけれど、年収は同程度。こういう役職についている人は、真っ先にリストラ候補になります。
もちろん重要な職務を担っている方も多くいらっしゃるので一概には言えませんが、長く働いているから担当部長や部長補佐といった役職についていても、中途半端な専門性しか持っていなかったり、マネジメント力が発揮されていない人は、リストラの最有力候補になりやすいです。なぜなら部長や課長は別にいるからです。
隙間役職であっても、何かの分野に特化した専門的スキルを持っているか。または、複数メンバーが参加するチームやプロジェクトを任され、メンバーを率いて成果を出せているか。これらがひとつの目安となります。
高い専門性を持っている人であれば、リストラされることはありませんし、会社に頼らずとも転職や独立・起業、フリーランスとして活躍する道もあります。
ただし、専門性を活かして転職や独立をするとしても、マネジメント力は必要です。指定された納期までにモノを納めなくてはならない、チームで一緒に働いている人に機嫌よくやってもらわなくてはいけない、仕事の経験が浅い人に教えなきゃならない、など、どんな組織や職種においても一定のマネジメント力は求められます。
また、高い専門性を持っていても、時代の流れとともに陳腐化してしまうリスクがあります。その技術や分野そのものが必要なくなってしまう場合も少なくありません。
IT系の企業で「50代の人はどうですか?」と聞くと「いやぁ、もう新しいスキルを身につけてくれないんですよね」といった話をよく聞きます。ゲームのプロダクションなどでも、第一線で活躍するクリエイターは若い人の感性みたいなものを求められますから、いつまでもピンのプレイヤーでやっていくのは難しい場合もあります。
高い専門性を持っていても、やはり一定のマネジメント力は必要です。また、自身の持っている技術・技能がこれから5年、10年、他にない価値を出せるかどうかも見極めなくてはなりません。もし時代に取り残されそうだったら、新しい知識やスキルを身につけることも必要でしょう。
いずれにしても、40代、50代で必要になるのは、自身のスキルや経験を整理して、体系化しておくことです。これが3つ目の特徴で、最も重要なものになります。
体系化とは、「こうすれば成功する」「うまくいく」という自分なりのノウハウを棚卸しして、方法論として固めておくことです。
例えば、タスクマネジメントなら、明確な目標を設定し、そこに向かって計画を立て、リスクを想定したプランB、プランCを持っておいて、動き出したら、定期的な進捗の管理をし、リスクが発生した場合は、プランBを持って目標を達成する。どんな案件であっても、このノウハウを使って目標を達成できる。
ヒューマンマネジメントなら、部下の目指すべきキャリアビジョン・ライフビジョンを把握し、なければそれを考えさせ、そのうえで、そこに向かうためのキャリアプランや能力開発計画を一緒につくる。その進捗管理をすることが人材育成の体系のひとつです。
そして、部下の話を最後まで聞き、相手が考えていることをちゃんと掴んだうえで、「こうじゃないの?」と的確に伝え、部下が「そうですよね」と言ってくれるかどうかなど、コミュニケーションとは受信力と発信力と体系的に定義する。
ある程度のキャリアを積んできたら、このように自分が培ってきたマネジメント力や専門性を体系化し、普遍的なノウハウや仕組みに落とし込むことが必要です。
企業の昇格試験に立ち会っていると、「こうやったらうまくできます」と自身の方法論を確立できている人と、「うーん、それはケースバイケースですね」としか言えない人がいます。前者が体系化できている人、後者が体系化できていない人です。
ケースバイケースで終わってしまうと、「じゃケースによって、うまくいく場合とうまくいかない場合があるんですね」となって、「部署や環境が変わったら成果を出せるとは限らない」と判断され、昇格は難しくなります。
一方、体系化したノウハウを複数のケースで試して成功した経験を持っている人は、「どんな部署や環境でもうまくいくよね」と判断され、重要な役職に昇格できます。
歳をとっても会社で生き残っているのは、あるいは世の中で広く活躍しているのは、自身の成功事例を体系化し、仕組み化できている人たちです。
「これをやったらうまくいく」「失敗する」という成功事例や失敗事例は、20年、30年と社会人をやっていれば必ずあるはずです。これまで培ってきたマネジメント力や専門性を汎用的に使えるよう体系化・仕組み化しておきましょう。それが歳を取っても会社で生き残ることにつながり、リストラ時代を生き抜く戦略になります。
次回につづく
人事という職に就いたならば、読む“義務”がある1冊
成果主義、職務主義、年俸制、人事部廃止… 90年代から変わらぬ「人事」の構造、変わらぬ平均給与額が、日本を世界トップクラスの「社員が会社を信頼しない国」へと導いたのです。
なぜ変革が進まないのか、その背後に潜む「考え方」の欠如とは何でしょうか?
中学時代に習ったこと、覚えてますか?
多くの人にとっては、すべての勉強の基礎になっている大事な「当たり前」のことですが、思い出せと言われても思い出せる方は少ないでしょう。
この「この一冊ですべてわかる 人事制度の基本」には、人事の当たり前が詰まっています。
ー「なぜ、あの人が?」
なぜ多くの企業で「評価基準」が曖昧になっているのでしょうか。
どうすれば給与が上がるのでしょうか。
11,000人超の人事担当者から絶大な支持を得るコンサルタントが、今まで9割の会社が明かさなかった「絶対的な指標」を初公開!
テレワーク時代には「ジョブ型」に留まらず、「超ジョブ型人事」が不可欠。
その一番の理由は、テレワークをはじめとするこれからの働き方には「監視しない事が重要であるから」です。
人事の“必須科目”を押さえる
プロの人事力
次のステージに向けて成長するためのキホン
人事担当者に必要な知識・学び方、仕事に対する心構え、業務との向き合い方、さらには人事マネージャー、人事部長へとキャリアアップするために必要な能力・スキルを一挙公開
年収とパフォーマンスが一致していない人は要注意 コロナ禍以前から増えてきた、45歳以上の早期退職・希望退職という名のリストラ。その候補となっているのは、パフォーマンスより年収が高い人です。それはどういうことなのか、詳しく説明しましょう。
50代のビジネスパーソンの皆さんに質問します。通勤時間は何をされていますか?まさかゲームをしてないですよね…。なぜこんな質問をしたのかといいますと、管理職研修をしていると、伝統的な会社でも上場企業でも新聞を読んでない人が多いのです。新聞、特に日経はビジネスパーソンにとって読んでいるのが当たり前のはずですが、読んでいない人がほとんど。ゲームを楽しむのもいいですが、私たちがやっているのはビジネスです。
新連載「人事の超プロが明かす、リストラ時代の生き残り戦略」 2021年4月1日、高年齢者雇用安定法が改正されました。これによって「70歳までの就業機会の確保」が企業の努力義務になりました。 少子高齢化が急速に進展し人口が減少する中で、経済社会の活力を維持するため、働く意欲がある高年齢者がその能力を十分に発揮できるよう、高年齢者が活躍できる環境の整備を目的として、「高年齢者の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)」の一部が改正され、令和3年4月1日から施行されています。
中高年のリストラが止まりません。東京商工リサーチ によると、2021年の上場企業における早期・希望退職の募集人数は約1万6000人。前年の2020年は約1万9000人でした。2年連続で1万5000人を超えたのは、ITバブル崩壊後の2001〜2003年以来だといいます。リストラを実施している企業は、赤字とは限らず、好業績でも早期・希望退職を募っているため、「明日は我が身」と不安になっている方も多いでしょう。では、会社での自分のポジションが、どうであったらヤバイ、どうであったらセーフなのでしょうか。今回は、その目安について、お伝えしたいと思います。
40代・50代になって、「専門職を極めていくか」「社内マネジメントに積極的に関わるか」といった今後の選択について悩んでいる人は多いのではないでしょうか?この二者択一は、リストラに関わる非常に重要な問題です。人事もまさにそこを見ています。40〜50代で何らかの専門性を持っていても、同程度の専門性を持っている20〜30代の人材がいるなら、会社はそちらを選びます。
ここ数年、「50代についての意見を聞かせてください」というご依頼が増えてきました。当連載もそうですし、『人事の超プロが教える 会社員 50歳からの生き残り戦略』(PHPビジネス新書)という本も出させていただきました。やはり中高年を対象とした黒字リストラや早期退職・希望退職を募る企業が増えているからでしょう。今回も「人事は中高年を実はこう見ている」というリクエストをいただきました。私は人事部時代、中高年の社員をどう見ていたのか。今回はこうしたテーマで、率直な意見や感想をお伝えしたいと思います。
最近、日本の賃金が上がっていないことが話題になっています。日本の平均賃金は1990年代の半ばまで世界でもトップクラスでしたが、他国にどんどん抜かれ、現在はアメリカの半分程度。ドイツやフランスなどの欧米諸国はもちろん、韓国よりも低く、OECDの最下位グループになっています。
40代・50代になっても、ビジネスパーソンは学び続けることが重要です。今回は、40~50代からでも十分学べる「リストラ回避」のためのスキルをお伝えします。まずひとつは、「ロジカルシンキング」です。ロジカルシンキングとは、物事を体系的に整理し筋道を立て、論理的に分析する思考法のこと。管理職研修でもよくお伝えしているのですが、管理職の役割は全体像を見ること。全体を見たうえで、何が大事で何は捨てても良いのかを考える、物事を俯瞰的に捉えるスキルが必要となります。