2024.04.22
最近、日本の賃金が上がっていないことが話題になっています。日本の平均賃金は1990年代の半ばまで世界でもトップクラスでしたが、他国にどんどん抜かれ、現在はアメリカの半分程度。ドイツやフランスなどの欧米諸国はもちろん、韓国よりも低く、OECDの最下位グループになっています。
最近、日本の賃金が上がっていないことが話題になっています。日本の平均賃金は1990年代の半ばまで世界でもトップクラスでしたが、他国にどんどん抜かれ、現在はアメリカの半分程度。ドイツやフランスなどの欧米諸国はもちろん、韓国よりも低く、OECDの最下位グループになっています。
1990年と2020年の実質賃金を比べてみると、アメリカは48%、韓国は92%も上昇しているのに、日本はわずか4%。この30年間、ほとんど賃金が上がっていません。
やることはやっているのに、給与が上がらない。評価してもらえない。そんな不満を持っている人も多いのではないでしょうか。
しかし、日本の賃金が上がらないのは、国や経営者だけの責任ではないと思います。
日本の賃金が上がらない理由については様々な指摘がされていますが、日本型の雇用形態に限界が来ていることも大きな要因のひとつでしょう。日本は年功序列のトップダウン型の組織が当たり前になってきました。いわゆるピラミッド型の組織形態です。
ピラミッド型組織は「なぜやるか(WHY)」「何をやるか(WHAT)」はトップが決めます。「どのようにやるか(HOW)」はミドルマネージャーが考え、現場は上に決められたことを「やる(DO)」。そのため「やることはやっている」という意識になりがちですが、言われたことを言われた通りにやっているだけでは、新たな価値は創出できません。出している価値が変わらなければ、給与が上がるわけがないのです。
だから日本はどんどん他国に追い抜かれ、賃金の上がらない、かわいそうな国になってしまったのではないでしょうか。
私たちに必要なのは、「何をやるか(WHAT)」を自分自身で考えること。特に中高年は「やることはやっている」だけでは、今後生き残っていくことは難しくなっていくでしょう。
日本の組織も少しずつ変わり始めています。トップダウンのピラミッド型組織は、やるべきことが明確なときには効率よく機能します。だからこそ「大量生産・大量消費」の高度成長期には驚異的な経済成長を遂げ、言われたことを言われた通りにやっていれば、一億総中流でみんなが幸せになれました。
しかし価値観が多様化した現在は、誰もがやるべきことがわからない時代です。言われたことを言われた通りにやっているだけでは、新たな価値は提供できず、企業も個人も成長できません。
そのため近年、注目されているのは、ボトムアップ型の組織形態です。
お客様の要望は、どんどん多様化しています。トップが「何をやるか」を考えていたら、市場の変化についていけないため、何をやるか(WHAT)、どのようにやるか(HOW)、そして実際にやること(DO)も、すべて現場で行うのが理想的な組織形態じゃないかと言われ始めています。
年功序列による典型的なピラミッド型だった業界でも「言われたことをやっているだけではダメだろう」「やることは自ら考えよう」という意識が広がり、近年は変わりつつあります。
最近は神社からも人事制度の見直しの相談もいただき、最も伝統的な業界でさえも変わろうとしています。「DO」だけやっていたら、組織も個人も先細りするばかりです。これからは一人ひとりが「WHAT」「HOW」「WHY」に取り組む必要があるのではないでしょうか。
会社の組織形態が従来のままであっても、私たち50代は「何をやるか」を自分で考えることが必要です。もしもリストラされることになってしまったら、転職か独立をすることになるでしょう。
仮に中堅・中小やベンチャー企業に転職できたとしても、「〇〇をやってください」なんて指示をされることはありません。「こういう状況だからよろしく」と言われるだけです。「何をやるか」「どのようにやるか」は、自分で考えなくてはなりません。
独立するとしたら、「DO」はもちろん、「WHAT」も「HOW」も、さらには「WHY」=「なぜやるのか」もすべて自分で考えることになります。
定年まで会社に残れたとしても、60歳か65歳には会社を辞めます。その後も何らかの仕事を続けるとしたら、「やること」は全部自分で考えることになります。
これはいきなりできるものではありません。日本人の多くは「DO」は素晴らしいです。一部の人は「HOW」もできます。でも「WHAT」をできる人は、なかなかいません。
60歳まであと10年もありません。今から鍛えておくことが必要です。
まずは、今の仕事で「WHAT」を考えることから始めましょう。自分に課せられたミッションの中で「何」をすべきか、自分で考え、周囲に認めてもらい、ちゃんと成果を出す。このPDCAを回せるようになれば、外に出ても通用します。会社も辞めても怖くないです。
また、会社を辞めた後に「何」をするのか、具体的にシミュレーションしてみましょう。会社を辞めた後は、何を売って生活するのか、何が売れるのか、自分の「商品」について考えます。商品とは、あなたがこれまで身につけてきた「スキル」や「経験」です。
私たちビジネスパーソンは、会社に属していても、それぞれが個人商店です。私の場合は、会社の中で「人事屋」という個人商店をやっていて、独立後は店を出す場所を変えただけ。あなたも会社に所属しながら、「営業屋」「経理屋」「総務屋」といった個人商店を経営しているのです。
経営者の感覚で「経理というスキルは商品になるんだっけ」「他の会社でも買ってくれるのかな」などと確認し、自分の商品は売り物になるかどうか、いろいろな人に話を聞いて検討してみてください。
こうして検証していくと、自分の「商品」=「スキル・経験」をもっと磨かなくてはいけないことに気づきます。磨いていけば、それが「売り物」の形で見えてきます。そのスキルや経験が世の中で必要とされるものであるなら、転職や独立も可能になります。
実際に転職や独立するかどうかは別としても、「世の中に出たときに自分は何が売れるんだろう?」というシミュレーションはしておいて損はないと思います。経営者の感覚を持てば「WHAT」「WHY」「HOW」も自然に考えられるようになります
50代になったら「やることはやっている」だけでは厳しいです。「DO」だけでなく「WHAT」「WHY」「HOW」も考える習慣を身につけ、実行し、会社を辞めたら「何」を売っていくのかも本気で検証しましょう。それが今後の人生を大きく変えていくはずです。
次回につづく
人事という職に就いたならば、読む“義務”がある1冊
成果主義、職務主義、年俸制、人事部廃止… 90年代から変わらぬ「人事」の構造、変わらぬ平均給与額が、日本を世界トップクラスの「社員が会社を信頼しない国」へと導いたのです。
なぜ変革が進まないのか、その背後に潜む「考え方」の欠如とは何でしょうか?
中学時代に習ったこと、覚えてますか?
多くの人にとっては、すべての勉強の基礎になっている大事な「当たり前」のことですが、思い出せと言われても思い出せる方は少ないでしょう。
この「この一冊ですべてわかる 人事制度の基本」には、人事の当たり前が詰まっています。
ー「なぜ、あの人が?」
なぜ多くの企業で「評価基準」が曖昧になっているのでしょうか。
どうすれば給与が上がるのでしょうか。
11,000人超の人事担当者から絶大な支持を得るコンサルタントが、今まで9割の会社が明かさなかった「絶対的な指標」を初公開!
テレワーク時代には「ジョブ型」に留まらず、「超ジョブ型人事」が不可欠。
その一番の理由は、テレワークをはじめとするこれからの働き方には「監視しない事が重要であるから」です。
人事の“必須科目”を押さえる
プロの人事力
次のステージに向けて成長するためのキホン
人事担当者に必要な知識・学び方、仕事に対する心構え、業務との向き合い方、さらには人事マネージャー、人事部長へとキャリアアップするために必要な能力・スキルを一挙公開
2021年は、黒字リストラが2020年の1.7倍に増えました。日本たばこ産業、KNT-CTホールディングス、LIXIL、オリンパス、アステラス製薬、藤田観光、博報堂などの上場企業を中心に希望退職・早期退職が実施され、1万人以上が退職に至っています。今後もさらに増えていくかもしれません。
50代のビジネスパーソンの皆さんに質問します。通勤時間は何をされていますか?まさかゲームをしてないですよね…。なぜこんな質問をしたのかといいますと、管理職研修をしていると、伝統的な会社でも上場企業でも新聞を読んでない人が多いのです。新聞、特に日経はビジネスパーソンにとって読んでいるのが当たり前のはずですが、読んでいない人がほとんど。ゲームを楽しむのもいいですが、私たちがやっているのはビジネスです。
「日立 全社員をジョブ型に」というニュースが日経新聞の1面トップになっていました。日立製作所は今年7月にも事前に職務の内容を明確にし、それに沿う人材を器用する「ジョブ型雇用」を本体の全社員に広げるということです。ジョブ型雇用、テレワーク、ワーケーション、週休3日制など、働き方の多様化が急速に進み、戸惑いを感じている人も多いでしょう。ですが、働き方が変わっても、大事なことは変わりません。
40代・50代になっても、ビジネスパーソンは学び続けることが重要です。今回は、40~50代からでも十分学べる「リストラ回避」のためのスキルをお伝えします。まずひとつは、「ロジカルシンキング」です。ロジカルシンキングとは、物事を体系的に整理し筋道を立て、論理的に分析する思考法のこと。管理職研修でもよくお伝えしているのですが、管理職の役割は全体像を見ること。全体を見たうえで、何が大事で何は捨てても良いのかを考える、物事を俯瞰的に捉えるスキルが必要となります。
タレントの高田純次さんが、以前にテレビでこんな話をされていました。「年を取ってやっちゃいけないのは、説教と昔話と自慢話」その通りでしょうね。若い人たちからしたら、説教・昔話・自慢話は聞きたくないはずです。言いたいことがあっても、そこはグッと我慢する。それが私たち50代に求められている基本的なスタンスでしょう。
新連載「人事の超プロが明かす、リストラ時代の生き残り戦略」 2021年4月1日、高年齢者雇用安定法が改正されました。これによって「70歳までの就業機会の確保」が企業の努力義務になりました。 少子高齢化が急速に進展し人口が減少する中で、経済社会の活力を維持するため、働く意欲がある高年齢者がその能力を十分に発揮できるよう、高年齢者が活躍できる環境の整備を目的として、「高年齢者の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)」の一部が改正され、令和3年4月1日から施行されています。
50代のリストラ対策のひとつは、若手の指導です。「あの人、若手を育てるのがうまいよね」「あの人に預ければ、育ててくれるよね」と社内で評判が立つのは、リストラを防ぐ有効な手立てとなります。
東京商工リサーチによると、2021年に希望退職を募った上場企業は80社以上。上場企業の希望・早期退職募集は2019年以降、3年連続で1万人を突破。2021年の募集者数は判明しているだけでも1万5000人を超えています。 コロナ禍によって経営が悪化した企業もありますが、大手企業の多くは黒字経営にもかかわらず希望退職・早期退職という名目の大規模なリストラに踏み切っています。なぜこれほどリストラ増えているのか。いま一度、その背景を理解しておきましょう。