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第9回 人事が判断する、中高年の「老害社員」と「経験値が高い社員」との決定的な違いとは?

「人事は『老害社員』と『経験値が高い社員』をどのように判断しているのか」 今回は、そんなテーマについて掘り下げたいと思います。 中高年の会社員の処遇は、日本企業が直面している大きな問題のひとつです。私自身も、さまざまな会社から以下のような相談を受けることが増えてきました。

「老害」とは、ひたすら「逃げ切り」を狙っている社員

「人事は『老害社員』と『経験値が高い社員』をどのように判断しているのか」

今回は、そんなテーマについて掘り下げたいと思います。

中高年の会社員の処遇は、日本企業が直面している大きな問題のひとつです。私自身も、さまざまな会社から以下のような相談を受けることが増えてきました。

「仕事をしない年上の部下に困っています。注意しても聞いてくれないし、行動も変わらない。何を言っても響かないので、言うだけムダ。暖簾(のれん)に腕押し、馬の耳に念仏なので疲れました。50代半ばを過ぎたら、定年まであとわずか。ひたすら逃げ切りを待っているだけです。こういう社員にはどう接したらいいのでしょうか?」

昨年11月、朝日新聞に掲載された「朝の妖精さん」という記事も大きな反響を呼びました。妖精さんといっても、みんなから愛される可愛らしい存在、ではありません。

朝はきっちり出社するけれど、いつの間にか姿が見えなくなっている。こうした定年間近のシニア社員を揶揄(やゆ)して呼んだもの。要は「働かない中高年」です。

これ以上がんばっても、もう出世はしないし、がんばったところでさして変わりない。毎月給料をもらって、とにかく逃げ切って、まあまあ平和に暮らしていければいい。

私はこうした、ひたすら「逃げ切り」を狙っている中高年の社員が、まさに「老害」だと考えています。

人事もなかなか抜本的な手が打てないのが現状

一方で、団塊ジュニア世代のベテラン社員がいなくなることによって、スキルの継承がなされなくなり、組織の中でスキルが空洞化してしまう問題も起こっています。

「老害」と呼ばれるやる気のない人たちもいれば、現在なお成果を出し、かつ伝承すべきスキルを持った中高年の社員もいる。後者のように、自分の強みを自覚し、技能や経験、人脈などの継承を積極的に行っている人が「老害」ではない「経験値が高い社員」です。

人事もそれはわかっていますから、経験値が高い社員には、専門職制度を設けたり、マイスターという称号を与えるなど、プロフェッショナルとして重用(ちょうよう)していく施策を行っています。ですが「働かない中高年」に関しては、なかなか抜本的な手が打てないのが現状です。

なぜなら給料を多少下げても、そういう人たちは会社を辞めません。再就職するのは厳しいうえに、たとえできても給料が下がる。だったら「妖精さん」になって居座るしかない。

そのうえ、企業には定年後の再雇用が義務づけられています。現在50代の社員が定年になる頃には希望者全員が65歳まで働けるようになります。政府は「人生100年時代」「一億総活躍」を提唱していますから、いずれは70代まで働けるようになるでしょう。

働く当事者にとっては必ずしも悪い話ではありませんが、企業にとっては深刻な問題です。高齢化した社員みんなに高額な給与を払い続けていったら、経営は破綻します。

給料を下げればやる気も下がり、さらに老害化が進みます。それでも20代の社員より給料が高いことが多いため、若手のモチベーションも下がります。社員全体の志気が下がれば、当然業績も悪化します。こうした負の連鎖がずっと続いていく可能性があるのです。

必要なのは「外に出ても通用する力」

中高年の問題は、20〜30代の社員にとっても決して無関係ではありません。業績が悪化すれば、会社は人員削減に踏み切ります。さらにキリンやサッポロ、東芝機械、オンワード、ファミリーマートなど、業績がよくても45歳以上の希望退職・早期退職を募る企業も増えてきました。

評価の低い社員に対しては、年齢に関係なく、退職勧奨を行う場合もあります。1つ前の記事(第8回のリンク入れる)でもお伝えしたように、会社が求めているのは、どんな企業でも通用する人材です。

中高年の会社員は、今の会社で必要とされ続けるためにも、また転職という可能性のためにも、そして将来「老害」と呼ばれないためにも、「外に出ても通用する力」を身につけるしかないのです。

そして、そのために大事なことが2つあります。

ひとつは、普遍的なコンピテンシー(成果につながる行動)を獲得すること。30代であれば、目標が設定できて、計画立案ができて、進捗管理ができるようになること。そういう汎用的な力があれば、仕事が変わっても会社が変わっても、生きていけます。もっといえば、会社に頼らなくても生きていけるようになります。

私が2015年に上梓した、あらゆる企業に共通する45種類のコンピテンシーを紹介した『人事の超プロが明かす評価基準』(三笠書房)という書籍は、発売から5年以上が経った現在でも重版され続けており、人事の本としては異例のロングセラーになっています。

これは、こうした危機感を持ち、自身を成長させたいと願うビジネスパーソンがたくさんいることの証なのでしょう。会社が求めることは、年齢とともに変化していきます。現在の自分が求められていること、これから求められることを認識するのは非常に大切です。

「今」をどう生きるかが、あなたの今後を大きく左右する

 もうひとつは、自分は「何屋」なのかを見極めていくこと。自身の強みや専門性を明確にすることは、30代以降の会社員には特に重要になります。

営業なのか、経理なのか、もしくはマネジメントという汎用性の高いスキルに特化するのか……。自分は「何屋」なのか、自身の仕事を要素分解して考えてみましょう。

その際に重要なのは、「他社でも通用するのか」を基準にして自身を客観的に顧みることです。社外の人と交流を深めて他社の話を参考にする、副業を試してみる、他社の面接に応募してみるなど、自身の力を客観的に判断する方法はいくらでもあります。そういった行動をすることが大切なのです。

他社でも通用する力があるなら、そのスキルをさらに磨いていく。通用しないと思ったら、今の会社で不足しているスキルを身につける。そうして今後の選択肢を増やしていくのです。

今の会社で上を目指す、転職する、起業する。どのような道を選ぶにせよ「今」をどう生きるかが、あなたの今後の人生を大きく左右します。

もちろん何かを始めるのに、遅すぎるということはありません。40代、50代でも、決して遅くはないのです。私たちは70代まで働くことになるのかもしれなません。この年代に学んだことは、たとえ50代になってゼロから何かを始めたとしても、その後の20年間を生きる術になります。

「老害」と呼ばれている人たちは誤解しています。私たちは働くことから逃げ切るなんてできないのです。自分の将来について改めて考え、生きる力を身につけていきましょう。

中高年の会社員は、こうして会社の外に向けた「行動」がとても大切です。行動を起こすか起こさないか、それがあなたの将来を大きく左右します。そして未来の選択肢も、自ずと変化してくるのです。

 

次回に続く

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