2021.07.01
リストラが増えています。コロナ禍の影響だけでなく、実はそれ以前から70歳までの雇用延長努力義務などを見据えて「黒字リストラ」と言われる施策をとる企業が増えていました。終身雇用や年功序列も終わりを迎えようとしています。40歳を過ぎたら希望退職を勧められてしまうかもしれません。今、求められているのは、いざという時に他にも行ける力です。今回は、人事のプロフェッショナル集団、フォー・ノーツ株式会社の代表であり、『超ジョブ型人事革命』(日経BP)の著者・西尾太が、「どこでも通用する力」を育む、評価基準のつくり方を解説します。
世の中は、どんどん変わっています。技術革新も進んでいます。スペシャリティを持っても、長続きするとは限りません。会社も、もう終身雇用でも年功序列でもなくなってきました。普通にやっているだけでは、お給料は上がっていきませんし、40歳を過ぎたら希望退職を勧められてしまうかもしれません。今、必要とされているのは、いざという時に他にも行ける力です。
だからこそ人事がやるべきは、「どこでも通用する力」を人事制度に盛り込むことです。
どこでも通用する力とは何かというと、ひとつはタスクマネジメントです。段取りを組み、ミスなく実行し、品質をチェックし、納期を守り、よりよく改善し、成果を上げる。自分のPDCAはもちろん、マネージャークラスになったら、これを組織単位で行い、その責任を負う。
明確な目標設定を行い、内外に示し、そこに向かって計画を立てる。リスクも想定し、目標を達成するための計画を立て、リスクが起こったときには、違う計画が動けるようにする。実際に動き出したら、進捗を管理し、計画に修正が必要ならそれを行い、目標を達成する。これがタスクマネジメントです。
メンバークラスは、自分のタスクマネジメントがちゃんとできる実務遂行能力を身につける。40代を過ぎたら、チームや組織のタスクマネジメントをしっかりできるようになる。これができれば、どこでも行けます。多少業界が変わっても、会社の規模が変わっても、やることは変わりません。
もうひとつは、ヒューマンマネジメントです。そのベースとなるのは、コミュニケーション力。コミュニケーションができないと、仕事は円滑に進みません。コミュニケーション力とは、発信力と受信力です。こちらから伝えるべきことをしっかりと伝えていく発信力。ちゃんと相手の話を聞いて、相手の望んでいることを理解する受信力。この両方がしっかりとできれば、他の組織に行っても円滑に仕事ができます。
さらに40代になってくると、人を育てることや、人をやる気にさせることが求められます、メンバーの3年後や5年後のキャリアビジョンやライフビジョンを把握し、それについて一人ひとりと話し合い、各々の課題を明確にし、能力開発を支援する。職種や会社が変わっても、人材育成というフレームは変わらないので、コミュニケーション+人材育成力があれば、どこでも通用します。
プラスアルファで、リーダーシップという概念もあります。組織の3年後、5年後の姿を見据え、中長期的な目標や戦略を立案していく。世の中や業界、マーケットの動きがちゃんと見えていて、どっちに行くべきなのかを取捨選択していく。「やるべきこと」と「やらないこと」を明確に示す。これらは高度なスキルや知識が必要になりますが、戦略フレームというものがあるので、それを学べば、できるようになります。
このスキルがあれば、「部長」ができます。部長ができる人は、実は世の中にはそんなに多くないので、「どこでも通用する力」になります。大きな会社であれば、年収1000万以上を望むことができます。
タスクマネジメント、ヒューマンマネジメント、リーダーシップを、キャリアステップや等級要件、人事制度に織り込み、評価基準に反映していく。これが人事担当者のやるべきことです。
タスクマネジメントなら、例えば、目標設定や計画立案、進捗管理、目標達成、計数管理。ヒューマンマネジメントなら、傾聴力や説得力、共感力、伝達力、異文化コミュニケーション。リーダーシップなら、ビジョン策定や戦略策定、変革力。これらのコンピテンシーを評価基準として示します。
拙著『人事の超プロが明かす評価基準』(三笠書房)に、あらゆる企業に共通する45のコンピテンシーモデルを掲載しています。ぜひ参考にしてみてください。
こうした評価基準を示し、「ここはできてますね」「ここはできていませんね」と適切な評価が行われていけば、社員は世の中に通用する力を身につけていくことができます。
いつも言っていることですが、私の経験上、「この会社にいれば、世の中に通用する人材になれる」「どこでも通用する力が身につく」と思えば、かえってその会社を辞める必要はなくなり定着力が高まります。
仮に、会社の方向性と本人の方向性がズレた場合でも、別にところに行けるようになるので、不幸なリストラを生まなくて済みます。人事の仕事は、世の中に通用する人材を自社でつくっていくことです。
変化の時代であっても、タスクマネジメント、ヒューマンマネジメント、リーダーシップの本質は、変わりません。普遍的なマネジメントスキルを身につけ、必要なコンピテンシーを獲得すれば、人生の選択肢を増やすことができます。その支援を行っていくのが、これからの人事担当者の重要な仕事です。

人事という職に就いたならば、読む“義務”がある1冊
成果主義、職務主義、年俸制、人事部廃止… 90年代から変わらぬ「人事」の構造、変わらぬ平均給与額が、日本を世界トップクラスの「社員が会社を信頼しない国」へと導いたのです。
なぜ変革が進まないのか、その背後に潜む「考え方」の欠如とは何でしょうか?

中学時代に習ったこと、覚えてますか?
多くの人にとっては、すべての勉強の基礎になっている大事な「当たり前」のことですが、思い出せと言われても思い出せる方は少ないでしょう。
この「この一冊ですべてわかる 人事制度の基本」には、人事の当たり前が詰まっています。

ー「なぜ、あの人が?」
なぜ多くの企業で「評価基準」が曖昧になっているのでしょうか。
どうすれば給与が上がるのでしょうか。
11,000人超の人事担当者から絶大な支持を得るコンサルタントが、今まで9割の会社が明かさなかった「絶対的な指標」を初公開!

テレワーク時代には「ジョブ型」に留まらず、「超ジョブ型人事」が不可欠。
その一番の理由は、テレワークをはじめとするこれからの働き方には「監視しない事が重要であるから」です。

人事の“必須科目”を押さえる
プロの人事力
次のステージに向けて成長するためのキホン
人事担当者に必要な知識・学び方、仕事に対する心構え、業務との向き合い方、さらには人事マネージャー、人事部長へとキャリアアップするために必要な能力・スキルを一挙公開
いままで受け身の姿勢で仕事をしてきた人事が、急に主体的に動かなければならない
仕事を任されたとしてもうまく動けないことがほとんどでしょう。
そうした時に「社外の人事のプロ」に依頼することで
これまでの「受け身人事」の性質から脱却することができるかもしれません。
「頑張っていること」を評価したい、
という気持ちを持つのは悪いことではありません。
しかし、その気持ちを本当に評価に反映してしまうと、
社員の不満の元になってしまいます。
リモートワークが日の目を浴びるようになって、はや数ヶ月。
上手く機能している企業とそうでない企業に分かれ始めています。リモートワークをより効率的にするためには、どのような人事評価を行えばよいのでしょうか。
リモートワークの特質と、そこでの評価項目の決め方についてお話しいたします。
転職市場が活性化している昨今、「出戻り制度」を設ける会社が増えています。
しかし、人事担当者は安易にこうした制度に飛びついてはいけません。メリットとデメリットを理解して判断することが重要です。
フォー・ノーツ株式会社が運営する【公式】YouTubeチャンネル。 今回は、【テレワークの評価目標はこうやって決めるコツ】について現場を知り尽くした人事のプロ・西尾 太が解説いたします。
コロナ渦という前代未聞の事態に見舞われた今、人事の課題はますます山積みしています。人事が強い会社でないと、これからの荒波を乗り越えていけません。人事が強い会社とは、どんな特徴があるのか?また、どのようなメリットをもたらすのか? 今回は、人事のプロフェッショナル集団、フォー・ノーツ株式会社の代表であり、『超ジョブ型人事革命』(日経BP)の著者・西尾太が、人材育成の考え方や方法を解説します。
日本企業はなぜ年功序列から脱却しなければいけないのでしょうか? 90年代のバブル崩壊からながらく脱年功序列、脱日本型雇用が掲げてられていましたが、結局ほとんどの企業は年功序列を脱し切れていません。企業を破滅に導く「年功序列」の弊害を改めて考えてみましょう。 総合人事コンサルティングのフォー・ノーツ株式会社の代表であり、『超ジョブ型人事革命』(日経BP )の著者・西尾太が、年功序列の現状と課題についてお伝えします。
会社がある程度の規模(社員数50〜100名程度)に成長してくると、評価や給与に不満を感じる社員が増え、優秀な社員ほど離職してしまう傾向が見られます。そんな状況になったときに必要となるのが、評価制度や給与制度などの人事制度です。しかし、人事制度の失敗例は、数限りなくあります。制度は運用できなければ意味がありません。なぜ制度を導入しても失敗してしまう企業が多いのでしょうか?