強い組織を構築する場合に欠かせないのは、コミュニケーションの活性化です。風通しを良くし、考えや意見が出やすい環境づくりが必要と言われています。しかし、それ以前にもっと重要なことがあります。今回は、人事のプロフェッショナル集団、フォー・ノーツ株式会社の代表であり、『超ジョブ型人事革命』(日経BP)の著者・西尾太が、コミュニケーションの目的についてお伝えします。
強い組織にするために欠かせないのは、コミュニケーションの活性化。オンラインでも可能、1on1が重要など、その方法論がよく話題になっています。それはもちろん大切なことですが、それ以前に、まずはコミュニケーションの「目的」を見直すことが重要なのではないでしょうか?
コミュニケーションが大事なことは、誰もが知っています。でも、何の話をするのか?何のために必要なのか?その前提の部分が、意外と見過ごされがちになっていないでしょうか。
強い組織とは、「目的」がしっかりしている組織です。同じ目的をめざし、それぞれが役割を待ちながら、達成をめざす。その目的とは、理念です。企業の目的は、理念の実現にあります。
あなたの会社では、経営陣と従業員が同じ理念を共有できているでしょうか?
会社全体が赤字なのに、社員は「ボーナス3ヶ月ください」と言っている。そういう話をよく耳にします。強い組織は、理念の実現に向かって、今どういう状態になっているのか、その情報も共有できているものです。こうした発言は、組織がバラバラであることを示しています。
「昨日どうだった?」「楽しいゴルフだったよ」
こういう会話ができている会社が、強い組織ではありません。理念を実現するために、お互いのことをもっと知ろうよ、仕事以外の話もしようよ、だったらいいのですが、ただ単に楽しい会話をしているだけでは、強い組織を構築するためのコミュニケーションとは言えません。
2人以上の人がいて、同じ目的に向かっている。これが組織の成立条件と言われています。
では、誰がその役割を担うのでしょうか?
人事です。「会社と社員を同じベクトルに向けていくこと」、これが人事担当者の役割です。
同じベクトルとは、「理念」を指します。ただ、それだけでは漠然としています。例えば「情報革命で人々を幸せに」と言われても、「じゃあ何をすればいいの?」となってしまいます。理念を現実に近づけていくために必要なのは、それぞれの組織のミッション=「使命」を明確にすることです。
理念を果たすために、各組織は何をするのか。ミッションは、組織の誰もがワクワクするものにしなくてはいけません。単に「売上を伸ばす」では、モチベーションは上がりません。例えば、人事だったら「会社と社員を、より同じベクトルに向けていく」。経理なら「経営陣に対して迅速に経営数値を伝え、より経営判断を早める」。「○○をより○○する」と表現するのがポイントです。
そのミッションを果たすために、どんな価値を提供し、今期どこまでやるのか。その具体的な指標が「目標」です。半年ないし1年間の目標を決めて、到達点を明らかにする。組織の目標に対して「僕はここまでやります」と個人の目標を決め、それぞれの役割をしっかりと果たす。隣に困っている人がいたら助け、みんなで目標を達成していく。
理念という共通の目的があって、ワクワクするミッションがあって、到達点としての目標がある。
これが組織です。「やらされ感」とか「また課長が言ってるよ」ではなく、みんなが腹の底から理念の実現に向かって力を合わせていく。腹落ちしていないミッションや目標だったら、話し合いをして腹落ちする状況をつくっていく。そのために努力するのが、会社の経営陣であり、管理職であり、人事の役割です。
人事担当者の皆さんは、理念の浸透を働きかけていますか。そのためにどうしたらいいか考えていますか。そもそも自社の理念を「熱く」「自分の言葉で」語れますか?
目標設定をないがしろにしていませんか。各組織のミッションを、メンバーがワクワクするように掲げていくことを、本部長なり部長なり、各組織の長に働きかけていますか?
個人個人の目標が明確になっているのを確認していますか?もしそれがゆるかったら、後で適切な評価ができなくなってしまいます。達成したのに、頑張ったのに、報われない、ということになってしまいます。それでは組織が弱くなってしまいます。そうならないように、働きかけていくのが人事の役割です。
人事制度の説明会などで、さまざまな会社を訪れると、私は社員の皆さんにこんな質問をします。
「この2〜3週間で、仕事で褒められた人は手を挙げてみてください」
すると、1人も手を挙げないことがほとんどです。一方、同じ会社で管理職の皆さんに「この2〜3週で、誰かを褒めた人は手を挙げてください」と質問すると、何名か手を挙げる人がいます。これは、コミュニケーションがうまくいっていないということでしょう。
評価をきちんとやっていない会社もまだまだ多く、社員が成果を出しても褒められず、改善点のフィードバックもない。目標設定会議をしていると、他部署の仕事に関心がない人もたくさんいて、人事の方でさえ「事業のことはわからないので」といった発言をする人もいたりします。
コミュニケーションの方法も大事ですが、その大前提として、理念やミッション、目標を共有し、組織内でお互いに関心を持ち、褒めたり、指摘したり、評価し合う文化をつくっていかないと、単にお金をもらうためだけに働いて日々が過ぎていく、ということになってしまいます。
先日訪れたある病院では、「医は仁術なり」という理念を掲げ、高齢者が毎日来る施設に、高度成長期の映画ポスターやピンクレディーのLPレコードなど、昭和レトロなグッズをたくさん置いていました。これは、単に医療を提供するだけでなく、通院される方たちが活躍していた時代のものを置いて、よりリラックスしたり、元気になっていただくための工夫なのだそうです。
素晴らしいなと思いました。こうした発想も、理念の表れなのだと思います。会社全体で同じ目的を共有できれば、コミュニケーションも自然と活発化していきます。人事次第で、会社は大きく変わります。人事担当者の皆さんには、「目的」を共有することを積極的に働きかけていってほしいと願っています。
人事という職に就いたならば、読む“義務”がある1冊
成果主義、職務主義、年俸制、人事部廃止… 90年代から変わらぬ「人事」の構造、変わらぬ平均給与額が、日本を世界トップクラスの「社員が会社を信頼しない国」へと導いたのです。
なぜ変革が進まないのか、その背後に潜む「考え方」の欠如とは何でしょうか?
中学時代に習ったこと、覚えてますか?
多くの人にとっては、すべての勉強の基礎になっている大事な「当たり前」のことですが、思い出せと言われても思い出せる方は少ないでしょう。
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ー「なぜ、あの人が?」
なぜ多くの企業で「評価基準」が曖昧になっているのでしょうか。
どうすれば給与が上がるのでしょうか。
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あなたの会社では、「給与」をどのようにして決めていますか? 私たちが主宰している学習プログラム「人事の学校」を受講している経営者や管理職には「給与の決め方がよくわからない」という方が多くいます。給与の決め方は、「何」を大事にして社員を評価するかによって異なります。今回は、知っているようで意外と知られていない「給与の決め方」について解説します。
自分が評価されるかされないかは、持っている影響力の大きさによって決まります。
自分がどんな価値を会社に提供できるのか。求められていることを理解し、影響力を高めていきましょう。
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しかし、人事のブレは採用、育成などの
「人」に関わる事柄に大きな影響を与えるため、
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日本の労働生産性は、先進国で最低レベル。人事担当者の間でも「うちは生産性が低い」「残業を減らさなきゃ」といった話がよく聞かれます。働き方改革を進める中、生産性を上げるには、人事担当者はどのようなことに取り組むべきでしょうか? そこで今回は、フォー・ノーツ株式会社の代表であり、『超ジョブ型人事革命』(日経BP)の著者・西尾太が、労働生産性を上げる方法について解説します。
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日本の人口の年齢別分布の現状と予想されている推移を考えると、
年功序列型の給与体系を維持するのは難しいと言えます。
年功序列型給与体系を脱却する糸口となるのが、「給与が下がる仕組み」です。
どのような基準で下がるのかを明確にする必要があります。
人事制度の基本的な構成は「等級制度」「評価制度」「給与制度」の3つです。
面倒だからと策定を後回しにしている会社も多いですが、
社員を会社に必要な人材に育成するために、人事制度は欠かせません。
今回の記事で人事制度に意味を理解して、なるべく早いうちに策定しましょう。