2023.05.12
総合人事コンサルティングのフォー・ノーツ株式会社は、代表取締役社長・西尾太の著書『この1冊ですべてわかる 人事制度の基本』出版記念特別セミナー【聞いた後でジワジワくる‼西尾太の「地味な」人事の話】を2022年11月17日、TKP東京駅日本橋カンファレンスセンターにて開催いたしました。本記事は、このセミナーの内容を再構成・加筆してお届けしています。今回のテーマは、「45のコンピテンシーモデル」。これは人事担当者だけでなく、社員全員が理解していなくはいけません。
コンピテンシーとは、「成果を上げるために欠かせない行動」と僕らは定義しています。「明確な目標を設定する」、「目標達成のための計画を立案する」といった“行動の型/モデル”ですね。
「あいつ、協調性がないんだよな」「あの人、人の話を聞いてないよね」「何を言っているかわからないよね」。皆さん、こんな会話を日常的にしていませんでしょうか?
普段、会社の中で人について何か話しているときって、このようなことを言っているはずなんですよね。これらは、すべてコンピテンシーなのです。
たとえば「協調性がないんだよな」は「チームワーク」や「共感力」。「人の話を聞いてないよね」は「傾聴力」。「何言っているかわからないよね」は「伝達力」や「企画提案力」が発揮されていないということです。
キーワード化し、会社が社員に求めるものを定義すれば、3等級と4等級の違いなど、それぞれの等級の違いがわかりやすくなります。また、「5等級には何が求められるんだっけ?」といったことも明確にできます。コンピテンシーは、このようにして使っていただければと思います。
弊社では、9つのカテゴリーに分けた「45のコンピテンシーモデル」をご提供しています。今回は、この9つのカテゴリーについて簡単に説明いたします。
1.リーダーシップ
リーダーシップとは、経営資源を獲得し、組織の方向性を決めるというカテゴリーです。リーダーシップには、5つのコンピテンシーがあり、上の図は各コンピテンシーの構造を示しています。
リーダーシップのベースとなるのは「理念浸透」。そこに向けて「ビジョン策定」「戦略策定」「信念」など、4つのコンピテンシーがあります。また、「ビジョン策定」は、下の3つ「戦略策定」「信念」「変革力」を含み、「戦略策定」は、下の2つ「信念」「変革力」が含まれます。
これら5つのコンピテンシーは、部長さんにはすべて持っていてほしいものですが、部長には「戦略策定」や「信念」、本部長には「ビジョン策定」を必ず求めるなど、階層が上がるごとに、やるべきことの難易度が上がっていくイメージがコンピテンシーによって作れます。
2.創造性
創造性とは、新たな価値を創出する源泉となる「創造的能力」と「創造的態度」という2つのコンピテンシーのカテゴリーです。
「創造的能力」は、問題を解決するのに適した新しいアイデアを出すこと。「創造的態度」は、興味や好奇心を広く持って物事を捉えることです。
アイデアを出して欲しいなら「創造的能力を発揮してね」、視野を広げてほしいなら「創造的態度を持ってね」と伝えるといいでしょう。コンピテンシーは、日常的に使いやすいキーワードにすることによって社内に広がり定着していきます。
3.タスクマネジメント
タスクマネジメントとは、段取りよく、きっちり仕事を進めていくためのカテゴリーです。目標を設定し、それを実行するための計画を立案し、進捗を管理し、目標を達成する。その過程においては、売上や経費などの計数を管理し、ムダを省くための改善もする。そんな6つのコンピテンシーを示しています。
「目標達成」「計画立案」「進捗管理」「目標達成」「計数管理」「改善」。これらのコンピテンシーは、個人にも求められますが、等級制度においてはチームのタスクマネジメントを想定することが多いです。
4.ヒューマンマネジメント
ヒューマンマネジメントとは、人を育て、活かしていくための5つのコンピテンシーのカテゴリーです。メンバーのやる気を高め、人を育て、仕事を任せ、いい人材を見つけて引き上げ、組織を運営する。
図の下から、チーフクラス、課長クラス、部長クラス、本部長クラスといったかたちで階層設定をしていきます。そのためマネジメントの対象もそれぞれ異なり、「動機付け」は同僚や後輩、「人材育成」「業務委任」は部下、「人材発掘・活用」は社内外、「組織運営」は組織全体と、どんどん変化していきます。
タスクマネジメントとヒューマネジメントは、マネージャークラスには必須となるコンピテンシーです。
5.意思決定プロセス
意思決定プロセスとは、組織の意思決定に関わる「情報収集」「問題分析」「解決案の提示」「決断力」という4つのコンピテンシーのカテゴリーです。情報を収集し、問題を分析し、解決案を提示し、決断をする。
僕はクライアントの昇格アセスメント(昇格試験)をいくつかやっているのですが、最近、問題分析ができない人が多いのが気になっています。管理職になる人の小論文を読むと「人が辞めるので、人が辞めないようにします」「残業時間が多いので、残業時間を削減します」といった内容がすごく多いです。
「なぜ人が辞めるのか?」「どのようにして辞めないようにするのか?」「なぜ残業が多いのか?」「どうやって残業時間を削減するのか」といった分析がなく、そこまで考えが至っていないんですね。
なので、たとえば《2等級か3等級で「問題分析」ができるようになっておかないと管理職は任せられない》としてみる。このようにして、等級要件にコンピテンシーモデルを活用していってほしいですね。
6.コミュニケーション
コミュニケーションとは、人間関係を円滑にして、周囲を巻き込んでいくための10のコンピテンシーを含んだカテゴリーです。コミュニケーションは、ビジネスの基本。受信力と発信力が必要になります。
発信力に関するコンピテンシーは、「プレゼンテーション」「企画提案力」「伝達力」。受信力に関するコンピテンシーは、「傾聴力」「チームワーク」「共感力」。
さらには、社内外の人脈を形成する「人的ネットワーキング」や、文化や価値観の違う人とも相互理解をする「異文化コミュニケーション」も必要となってきます。
そして、これらすべての土台となるコンピテンシーが「状況把握・自己客観視」です。これは、自身と周囲の状況を客観的に捉え、適切な言動をとること。また、自身の良いところと直すべきところを把握し、常に自らをより良くしていこうとすることです。
皆さんは、自分自身のことを客観的に理解していますか?
これは大変難しいことですが、人間関係のトラブルは「状況把握・自己客観視」ができていない人の周りで起こります。「ここまでなら許されるだろう」で、パワハラが起こります。「自分は好かれている」で、セクハラが起こります。ハラスメントはこのような勘違いから起こることがほとんどなので、このコンピテンシーは重視していただきたいです。
そして、これら9つのコンピテンシーが重なり合って「説得力」になります。説得力とは、適切な発信と受信によって、自身が意図した内容で相手を納得させること。コミュニケーションに関しては、このようにコンピテンシーに分解することで、適切に評価ができるようになります。
7.価値創出への志向性
価値創出への志向性とは、仕事の成果を高めるための4つのコンピテンシーをまとめたカテゴリーです。「クオリティ」=品質、「「プロフィット」=利益志向、「スペシャリティ」=専門性、「カスタマー」=顧客管理、どれも大事ですよね。
ただし、これらの等級別選定は、企業の業種・職種によって異なります。メーカーやIT企業であれば、「クオリィティ」をまずは1・2等級に求めるでしょう。コンサルティングファームや士業などの専門的な企業では、「スペシャリティ」を早い段階から求めるかもしれません。
このカテゴリーに限りませんが、「重要なもの」や「欠かせないもの」は、企業によって、また、階層によっても異なります。自社の特性に合わせて選定していただければと思います。
8.ビジネスの基本
ビジネスの基本とは、社会人の基本「誠実な対応」「マナー意識」「ルール遵守」「主体的な行動」「柔軟な対応」「成長意欲・学習意欲」という6つのコンピテンシーのカテゴリーです。
「あいつ仕事はできるんだけど、遅刻するよね」、いますよね、こういう若手。これは「ルール遵守」ができていません。「態度が失礼だよね」、これは「マナー意識」ができていないのです。
「誠実さ」や「ルールを守ること」は、すべての基本です。周囲に不快な思いをさせずに好感を持ってもらえる「マナー意識」、自ら率先して動く「主体性」、いろいろな変化に応じて対応できる「柔軟性」も獲得しながら、自らの能力を伸ばす「成長意欲」を高めていく。
若手に対しては、このようにコンピテンシーを示して、成長を促していきましょう。
9.エネルギー
エネルギーとは、仕事をするための源泉となる「タフさ」「継続力」「ストレスコントロール」という3つのコンピテンシーのカテゴリーです。
仕事をしていくためには、エネルギーが必要です。所定の時間、集中力を維持して働くタフさ、途中で投げ出さず、最後までやり遂げる継続力は基本ですよね。仕事には、ストレスもつきもの。自身のストレスを理解し、自らコントロールして、安定的に仕事ができる力も大切です。
コンピテンシーについては、今回書かせていただいた『この1冊ですべてわかる 人事制度の基本』で詳しく解説しています。こちらもぜひ見ていただければと思います。
『この1冊ですべてわかる 人事制度の基本』西尾太(日本実業出版社)
人事制度の全体像をはじめ、「等級制度と職位制度の設計」や「45のコンピテンシー」「評価制度の設計と運用」「給与制度の設計」などについても詳しく解説。大企業から中小企業まで、業種・規模もさまざまな会社の人事制度を知る著者だからこそお伝えできる「普遍的」にして「汎用的」な、人事制度の決定版入門書。
人事という職に就いたならば、読む“義務”がある1冊
成果主義、職務主義、年俸制、人事部廃止… 90年代から変わらぬ「人事」の構造、変わらぬ平均給与額が、日本を世界トップクラスの「社員が会社を信頼しない国」へと導いたのです。
なぜ変革が進まないのか、その背後に潜む「考え方」の欠如とは何でしょうか?
中学時代に習ったこと、覚えてますか?
多くの人にとっては、すべての勉強の基礎になっている大事な「当たり前」のことですが、思い出せと言われても思い出せる方は少ないでしょう。
この「この一冊ですべてわかる 人事制度の基本」には、人事の当たり前が詰まっています。
ー「なぜ、あの人が?」
なぜ多くの企業で「評価基準」が曖昧になっているのでしょうか。
どうすれば給与が上がるのでしょうか。
11,000人超の人事担当者から絶大な支持を得るコンサルタントが、今まで9割の会社が明かさなかった「絶対的な指標」を初公開!
テレワーク時代には「ジョブ型」に留まらず、「超ジョブ型人事」が不可欠。
その一番の理由は、テレワークをはじめとするこれからの働き方には「監視しない事が重要であるから」です。
人事の“必須科目”を押さえる
プロの人事力
次のステージに向けて成長するためのキホン
人事担当者に必要な知識・学び方、仕事に対する心構え、業務との向き合い方、さらには人事マネージャー、人事部長へとキャリアアップするために必要な能力・スキルを一挙公開
バブル崩壊後、企業は採用を抑制し、ジョブ型雇用に切り替えようと試みました。
しかしその試みが上手くいった企業は少ないのが現状です。
ジョブ型雇用が注目を集める昨今、
会社は過去の教訓を活かしどのように動くべきなのでしょうか?
受け身人事が自発的に受け身人事を脱却することは簡単なことではありません。
今回は受け身人事が生まれる理由と脱却できない理由をご紹介するとともに、
自発的な人事の理想形とも言える「攻めの人事」について解説いたします。
優秀な若手社員ほど、数年、時には数ヶ月で突然辞めてしまうことがあります。
「この会社にいても外で通用しない」など理由は様々。こうした時、若手社員の不満に耳を傾けたり、柔軟な働き方を提案することで退職を思いとどまらせることができるかもしれません。
総合人事コンサルティングのフォー・ノーツ株式会社は、代表取締役社長・西尾太の著書『この1冊ですべてわかる 人事制度の基本』出版記念特別セミナー【聞いた後でジワジワくる‼西尾太の「地味な」人事の話】を2022年11月17日、TKP東京駅日本橋カンファレンスセンターにて開催いたしました。本記事は、このセミナーの内容を再構成・加筆してお届けしています。今回のテーマは「制度づくり」。職位制度・評価制度・給与制度の大事なポイントを簡単に説明します。
労務分野の法律や制度に関する「お勉強」が
人事担当者の第一歩だと勘違いしてしまっている方は少なくありません。
しかし実は、人事担当者には専門的な知識など必要ないのです。
この記事では人事担当者に求められる知識を解説していきます。
給与の額は評価によって決まります。
そのため、評価は給与を額を決めるための手段に過ぎない、
と考える人も少なくありません。
そのような考え方は、正当な評価につながらないことがあるので注意です。
テレワークやDX対応、ジョブ型、70歳定年、早期退職、黒字リストラなど、今、人事の課題は山積みになっています。この「第4次人事革命」において、人事担当者がやるべきことは何なのでしょうか? そこで今回は、人事のプロフェッショナル集団、フォー・ノーツ株式会社の代表であり、『超ジョブ型人事革命』(日経BP)の著者・西尾太が、日本企業の人事施策の変遷を振り返りながら、歴史から学ぶべきことをお伝えします。
リストラが増えています。コロナ禍の影響だけでなく、実はそれ以前から70歳までの雇用延長努力義務などを見据えて「黒字リストラ」と言われる施策をとる企業が増えていました。終身雇用や年功序列も終わりを迎えようとしています。40歳を過ぎたら希望退職を勧められてしまうかもしれません。今、求められているのは、いざという時に他にも行ける力です。今回は、人事のプロフェッショナル集団、フォー・ノーツ株式会社の代表であり、『超ジョブ型人事革命』(日経BP)の著者・西尾太が、「どこでも通用する力」を育む、評価基準のつくり方を解説します。