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離職率の低い会社は本当に良い会社なのか

1年間で退職した人の割合を表す離職率。「離職率が高い=悪い会社」「離職率が低い=良い会社」と言った認識が世間では一般的になっていますが、果たして本当にそうでしょうか。 実は、離職率だけをみて、その会社の良し悪しを判断することは非常に危険です。 重要なのは離職率の「数字」ではなく、「どんな人が辞めているのか」という離職率の「中身」です。 今回は、人事担当者として「離職率」というテーマとどう向き合い対応するべきなのかをお話しします。


離職率は高すぎても低すぎても困る

「離職率が高すぎる」――そうはいっても、そもそも具体的にはどの程度だと「高い」と言えるのでしょうか。
長年、人事領域で仕事をしてきた私としては、「離職率が20%以上」になると「高すぎる」と感じます。この場合、4月にいた社員の20%以上が1年後には辞めている、ということになりますね。これほどまでに高い値となっている場合は、ぜひとも離職率を下げるための施策を打つべきでしょう。社員の入れ替わりが激しすぎて、ノウハウが蓄積されない、社員が成熟せず現場からの手離れができないという問題が顕著にあらわれてしまうほどの数字です。

逆に「離職率が低すぎる」というのも問題がある可能性があります。「離職率が2~3%」といった企業は一般的に「良い会社」と思われがちです。ですが、実際には働かない社員でも給与が自動的に上がる、だから辞めないというぬるま湯のような状態に陥っているかもしれません。適切な新陳代謝が行われなければ優秀な若手が昇進する機会がなくなり、社内が「淀んでしまう」恐れがあります。離職率があまりに低い企業では「社内の緊張感がなくなっている」「働いていないが、給料だけ高い高齢の社員が多い」などの問題を抱えていないか検証する必要があります。

私は、一般的な企業では「離職率が10%ほど」が妥当な数字だと考えています。しかしながら、結論を急いではいけません。妥当な「離職率」は、業界・創業年数等様々な要素が絡んでくるので、企業それぞれによって異なります。
離職率が妥当であるかは、一概に数字だけで判断することはできません。
では何を基準にして「離職率」の適正・不適正を判断すれば良いのでしょうか。まずは一つの正解として、「どんな人が辞めているのか」に焦点をあてて考えてみることをおすすめします。

「辞めている」のは誰なのか

さあ、「離職率」の適正・不適正を考える上で大切な観点である「どんな人が辞めているのか」を具体的に見てみましょう。歯に衣着せずはっきりと言ってしまえば、有能な社員が辞めるのは良くない事ですが、仕事をしない自社の仕事に向いていない社員が辞めるのは悪い事ではありません。

自社の仕事に向いていない社員が、長期に渡っていつまでも社内に残ってしまっていることや、有能な社員が次々と辞めてしまうほうが、離職率の高い低いよりもよほど問題です。

この問題を解決する手段としては最適なのが「評価制度」にメスをいれることです。評価、すなわち報酬の基準を明確にし、それに基づく新たな給与制度を制定することで、有能な社員が評価され、自社の仕事に向いていない社員が評価されない状況を作り出すことが出来ます。そうすると、有能な社員は仕事にやりがいを感じ、離職率が低下。自社の仕事に向いていない社員は自分が能力を発揮できる環境を求めて転職活動を始めるなど、良い循環が生まれます。
ただ、この方法は社員全体に大きな影響を与えます。万が一、有能な社員をきちんと評価できない状況が生まれてしまった場合などは本末転倒となりますので、評価制度の変更・導入は専門家の意見を交えながら慎重に行うべきだと思います。
「人事は急には動けない」というのは、人事で活躍する皆様であればよくご存知のとおりです。一度、間違った制度にハンドルを切ってしまうと、方向性を修正することは容易ではありません。

「長く働いてもらうこと」は目標として適切ではない

人事担当者として求められることは、「有能な人材を育てられる制度」や「企業の進むべきベクトルに合った社風を作り出していくこと」です。その結果として、有能な社員が長く働きたくなる環境が構築されるわけです。お気づきかもしれませんが、そもそも、「社員に長く働いてもらうこと」は、人事が取り組む目標ではないのです。

「20%の自社の仕事に向いていない社員が辞めている会社」と「3%の有能な社員だけがこぞって辞めている会社」を比べれば、後者の企業のほうが問題を抱えていることは一目瞭然です。コロナ禍で激動の今だからこそ、組織改革のチャンスです。離職率という数字に振り回されることなく、「組織が抱える問題の本質」を見抜く力を養いましょう。

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