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第17回 人事のプロが語る―—「空前の不況下で生き残る人材の条件」

総務省統計局が2020年5月に発表した「労働力調査」によると、役員を除く雇用者5661万人のうち、正規の職員・従業員数は3508万人と、前年同期に比べて51万人の増加。非正規の職員・従業員は2153万人と、9万人が減少していました。「非正規雇用から正規雇用になるには、どうしたらいいのでしょうか?」私は非正規雇用の方々からこのような質問を受けることがあります。この数値が表しているように、実は正規雇用になるのはそれほど難しいことではありません。

正規雇用になるのは、実は難しいことではない

総務省統計局が2020年5月に発表した「労働力調査」によると、役員を除く雇用者5661万人のうち、正規の職員・従業員数は3508万人と、前年同期に比べて51万人の増加。非正規の職員・従業員は2153万人と、9万人が減少していました。

「非正規雇用から正規雇用になるには、どうしたらいいのでしょうか?」

私は非正規雇用の方々からこのような質問を受けることがあります。この数値が表しているように、実は正規雇用になるのはそれほど難しいことではありません。

私は2000人以上の企業の経営者や人事担当者と交流があります。ほとんどの企業が人手不足に悩んでおり、明るく元気で素直な人なら、いつでも雇いたいと話しています。大手は難しいかもしれませんが、中小やベンチャーは常に人材を求めています。

もちろん「きれいなオフィスで働きたい」「この仕事以外はしたくない」といった選り好みをするのなら、そう簡単になれるものではありませんが、選びさえしなければ、正規雇用される道はいくらでもあります。

ただ、上記のデータは2020年1〜3月期の平均です。4月7日に発令された緊急事態宣言や休業要請などによって日本の雇用情勢は大きく変わりました。今後しばらくは厳選採用が続くかもしれません。

そうした状況を踏まえたうえで、非正規雇用から正規雇用になるためには何が必要なのか、大事なポイントをお伝えしたいと思います。

参考:総務省統計局 労働力調査(詳細集計)2020年(令和2年)1~3月期平均結果

 

オペレーターからコア志向にシフトチェンジ
働き方やキャリアの積み方、仕事における社会的なポジションは、大きく4つのタイプに分類できます。

・オペレーター

誰がやっても同じ結果が求められる仕事。決められたことを指示通り行う働き方。

・オペレーティングマネージャー

組織の中でオペレーターを取りまとめる管理職。決められたことを組織的に遂行する。

・スペシャリスト

特定の領域で高い付加価値を提供することが要求される専門職。

・コア

新たな価値を創造し、リーダーシップを発揮して組織を牽引する働き方。

 

非正規雇用のケースが圧倒的に多いのは、①のオペレーターです。誰がやっても同じ結果が出る仕事をすること、決められた業務を時間内にこなすこと。こうした働き方だけを続けていこうとするなら、たしかに正規雇用になるのは難しいかもしれません。

なぜなら正規雇用とは無期雇用です。長期間雇用し続けることを想定する場合、世の中や企業の変化とともに、「変化していく人材」でなければなりません。

変化していく人材ということは、オペレーターに留まらず、オペレーションマネージャー、スペシャリスト、コアとなり得る人材です。特にコアとなり得る人材については、長期育成・長期雇用を想定します。コアとは部長や役員クラスなど、企業経営を担う幹部・幹部候補を指します。

コアは価値創造ができればそれに応じた高収入を得られますが、強靭なリーダーシップを発揮し、新たな知識を吸収し続け、幅広い人脈をつくり、オンオフの区別なく常に仕事について考え、結果を出さなければ、相応の負債を背負うリスクがあります。決められた時間内に指示された業務を行うことが求められるオペレーターとは、働き方が根本的に異なります。

しかし逆にいえば、自ら仕事をつくり、周囲の人々をひっぱり、新たな価値を生み出そうとする意欲を持っている人であれば、企業は進んで正規雇用を考えます。

わかりやすい例は、ドラマ『ハケンの品格』の篠原涼子さんです。彼女が演じるスーパー派遣の女性のように、仕事や会社をよりよくしようとする「コア的」な志向で働いている人がいたら企業は放っておきません。当然、正社員として採用したくなるでしょう。

オペレーター的な志向からコア的な志向に意識を変える。これが非正規雇用から正規雇用になるためにとても大事なことです。

 

リモートワーク時代に求められるのは、より高い主体性

オペレーター的な志向からコア的な志向へシフトチェンジが必要なのは、実は非正規雇用の人たちだけでありません。正規雇用をされてはいても、実際にはオペレーター的な志向の人は多くいます。コアとオペレーターの違いは、仕事に向かう姿勢に表れます。

「私は何をしたらいいですか?」と、ただ上司の指示を待つのか。

「こうしたいのですが、いいですか?」と自ら提案して承諾を得るのか。

前者がオペレーター的な志向、後者がコア的な志向です。これからの時代は、後者のように主体的に動き、新たな価値をつくっていける人=「コア的な志向を持つ人材」が、これまで以上に求められていくだろうと私は考えています。

2020年代は、多くの企業でリモートワークの比率が高まっていくでしょう。そういう時代になったときに「私は何をしたらいいんですか?」と、自分がやるべき仕事をいちいちオンラインで上司に聞いてくるような人では仕事になりません。

戦後最悪ともいわれる日本経済の状態を考えると、リストラをする企業も増えていくはずです。そうしたときに真っ先に切られてしまうのは、こうした主体性のない社員、言い換えればオペレーター的志向の人材です。

自ら仕事をつくり、周囲の人々をひっぱり、新たな価値を生み出す。

それができない人は、今は正規雇用であっても職を失うかもしれません。逆に、今は非正規雇用であっても、コア的志向の人は正規雇用になるチャンスは増えていくと思います。

 

価値を生み出すことができれば、選択肢は大きく広がる

また、コア的な働き方ができるのであれば、正規・非正規といった雇用形態にこだわる必要もないかもしれません。

仕事をするうえで大切なのは、「得る」という発想でなく、「与える」という発想です。指示されたことを指示通りにやって給与を「得る」だけでなく、その仕事に自ら何かを「与える」ことができれば、それが価値になり、価値提供の対価として収入も増えます。

自分が生み出せる価値は何か。それを突きつめ、特定領域で高い付加価値を提供することができれば、スペシャリストとして起業するという選択肢も出てきます。

スペシャリストとは、一般的には医師や弁護士、フリーランスのクリエイターなどを指す言葉ですが、あなたが提供できる価値は従来の職業にはないものかもしれません。

たとえば、ユーチューバーと呼ばれている人たちは、自ら仕事をつくり、周囲の人々をひっぱり、新たな価値を生み出す、コア的志向の代表格といってもいいでしょう。

自分は何をしたいのか、何ができるのか、どのような価値を世の中に提供していけるのか。重要なのは雇用形態ではなく、こうした仕事の本質を見つめ直すことです。

正規・非正規という雇用形態だけにこだわるのではなく、視野を大きく広げて世の中を見てみましょう。そして、自分が提供できる価値とは何か、真剣に考えてみましょう。

社会の変革期は、チャンスでもあります。自分にできることは何か、もっとできるはずのことは何か。それを見つけて、実行することで、仕事の選択肢は大きく広がるはずです。

 

次回に続く

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