人事部門とは会社の将来を決める「人材」に関する部署。
だから、あるべき姿は経営者と同じく長期的な視点で仕事に取り組むことなんです。
人事10年目は経営と現場の橋渡しとして、会社の将来をより良い方向に導いていくことが求められます。
さて、もうベテランと呼ばれるべき、人事10年目は何をすべきかについてお伝えしましょう。10年目ができなければいけないこと、それはずばり「戦略」です。どういうことなのか、例を挙げて説明しますね。
例えば新卒採用。人事は新卒採用だけでも、10年以上先を見る視点が求められます。
会社はその時どうなる? まあ、伸びているなと。ならば大目に採用せねばならない。じゃあ多めって、どのくらい? というところから考えていきます。
人に聞けばいいじゃないか、ヒアリング力が大事なのか、そう思う人もいるかもしれません。でも、ヒアリングできるだけではだめなんです。なぜか?
現場に「新卒何人欲しいですか」と聞いたとします。例えば10人と回答があった。では、と社長に報告にいくと「10人じゃ会社大きくならないだろー20人とれ!」と怒鳴られる。じゃあ、と現場に戻って報告すると「そんなに育てらんねえ!」と言われる(笑)。さて、どうしましょう。
一番遠くを見ているのは社長です。では、人事が考えるのはどこかというと、20人採用して、30歳で何人残るかというところです。おそらく全員が残っていることはないでしょう。優秀な人を採用できてもそれだけ遠心力が働いて、優秀であればあるほど飛び立っていってしまったりするものだからです。男女比の問題もあるけど20人は残らない。そこは中途か第二新卒で埋めるか? そういったプランを立てていきます。
採用戦略は、実施する2年前くらいには決めておきたいところです。平行して、今年の新卒どう育てるかなども考えていかないといけません。人事はもっとも全体を長期的に、俯瞰的に見なければいけないんです。採用戦略には欠かせない視点と言ってもよいでしょう。
戦略というのは、先が長ければ長いほど時代の潮流を予想しないといけません。いま景気がいいからたくさん採用する? 悪いから減らす?? それをやるとどうなるか。バブル期を振り返ってください。
バブルで大量採用、バブル入社をした人たちはのほほんとしていて、上がつっかえているから下が育たない。年功序列の場合、コストは高いので給与の支払い総額は膨らむ。こうした事態、短期的な視点しか持たなかったが故に何が起こったか、日本企業には学んでほしいですね。
新卒はどんな雇用情勢でも採用すべきなんです。今年30人、来年4人とかありえないんですよえ。できたら5年目から、10年目は確実に、経営とすり合わせてちゃんと決めましょう。
外資系の企業だと、こういった人事のプロフェッショナルを育てていたりするんだけど、日本企業はそうでもないんです。「人事はいらない、現場に任せればいい」というブームもあって、一時期は人事部自体を廃止した会社もあるくらい。……あとでちゃんと復活していましたが。こうした長期的な視点は人事部門でなければなかなか持ちえないことですからね。
さて、こうした視点を持ったうえで、求められる能力、それは「決断すること」と、それに伴う責任を取ること、です。ひとつひとつが、人事は決めです。休職、復職判断も全部決め。退職勧告、昇給、評価決め。役員からいろいろ言われて「やるやらない」も決める。そこは全部決めたものの責任が来る。人事10年目だとそういうポジションになります。
他の選択詞を捨てる、それには責任が伴ってきますね。他の選択詞のほうがよかったら責任を取らないといけない。どんどん決断ができないと、案件が溜まり、部下も動けない、ストレスが部門全体に溜まってしまいますので、素早い判断が必要です。
とはいえ、人間の能力には限界があるもの。捨てる能力が必要です。10やって、と言われたら3はやって7はほっておく。また次に「あれどうなった!」と言われても、あまりひどい目にあわない。「考えておきますー」と答えておくくらいにしておきます。
社長の言ってくることは思い付きも多いものです。それにすべて付き合っていると、身が持ちません。そのうち5くらいはそのまま立ち消え、でも3はやらないと絶対「あいつなにやっているんだ」ということになる。でも10やらなきゃと思ってもできませんよね。そういうところまで決めないと身が持ちません。
人事ポリシーについても、きっちり経営とすり合わせる。そこの価値観がずれていくと社員にも経営にも迷惑をかけるので、ちゃんと社長や確認しなきゃいけない。経営はいろんなことを言ってくるかもしれませんが、人事は長期的に考えないといけません。
なぜならば、先にお伝えしたように、例えば採用戦略一つとっても、2年前には決めておきたい訳です。求めた人材像、それに伴って採用を進めた人材像が半年後に変わっていたら困るんです。
でも全ての経営陣が、それを理解できているとは限らないんです。
そういう時のかわし方についてもお伝えしておきましょう。
いろいろなことを言われたら「社長、それは例外ですよね?」って返してみて下さい。「うん……? 例外だ!」となることもあります。ほんとに変わったなら変化です。ポリシーを変えることと、例外を設けることは違うのです。そこの見極めは10年目としては、非常に大切です。人事が揺らぐと、全社全体が揺らいでしまいます。よく肝に銘じておいてください。
人事という職に就いたならば、読む“義務”がある1冊
成果主義、職務主義、年俸制、人事部廃止… 90年代から変わらぬ「人事」の構造、変わらぬ平均給与額が、日本を世界トップクラスの「社員が会社を信頼しない国」へと導いたのです。
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多くの人にとっては、すべての勉強の基礎になっている大事な「当たり前」のことですが、思い出せと言われても思い出せる方は少ないでしょう。
この「この一冊ですべてわかる 人事制度の基本」には、人事の当たり前が詰まっています。
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「頑張っていること」を評価したい、
という気持ちを持つのは悪いことではありません。
しかし、その気持ちを本当に評価に反映してしまうと、
社員の不満の元になってしまいます。
他の職種と同じように、人事担当者にも勉強は必要です。
とはいうものの、きちんと勉強している人事担当者が少数派というのもまた事実。
まずは通勤などの隙間時間でいいので、勉強習慣を始めてみませんか?
人事制度の基本的な構成は「等級制度」「評価制度」「給与制度」の3つです。
面倒だからと策定を後回しにしている会社も多いですが、
社員を会社に必要な人材に育成するために、人事制度は欠かせません。
今回の記事で人事制度に意味を理解して、なるべく早いうちに策定しましょう。
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