2021.05.26
テレワークが主体となっている企業において、新入社員研修の新たな方法が求められています。会社の事業理解やマナー研修、ビジネス基礎知識に関する研修などについて、リモート時代に求められる人事のの取り組みはどのようなものなのでしょうか。そこで今回は、人事のプロフェッショナル集団、フォー・ノーツ株式会社の代表であり、『超ジョブ型人事革命』(日経BP)の著者・西尾太が、テレワークにおける人材育成の方法について提言します。
ある番組で、大手IT企業の新卒社員のドキュメントを放送していました。その会社は100%テレワークで、地方出身の女性に密着取材。彼女はひとり暮らしで、上京以来、誰にも会わず、ひたすら自宅で仕事をしていました。先輩からは「何でも聞いてね」と言われていましたが、初めての職場なので、どうやって聞いたらいいのか、いつ聞けばいいのかもわかりません。
うつになりかけたとき、会社側が「いつ声をかけてもいいよ」というメンターをひとり決め、定期的な面談の機会をつくりました。それ以外にも「雑談会」というZoomを使ったオンライン懇親会も開くようになり、30分とか1時間とか時間を決めて雑談ができるようになり、ようやく安心して日々を過ごせるようになったと話していました。テレワークにおける新人研修・人材育成には、やはりどの企業も苦心しているようです。
2020年4〜5月に発令された最初の緊急事態宣言、それに伴うテレワークの要請から1年。テレワークにおける新人研修の正解は、まだ見えてきません。ただ、ひとつ言えることは、新入社員はメンタルケアが重要だということです。多くの企業では、配属が決まった後に、OJT担当者がつきます。OJTとは、On-the-Job Training。新人や未経験者に対して、実務を体験させながら仕事を覚えてもらう教育手法です。OJT担当者はもちろん大事ですが、もうひとり、メンターもつけることが重要ではないでしょうか。
OJT担当者は同部署の先輩が務めることが多いですが、メンターは年齢の近い2〜3年目の社員で、別の部署の人がいいでしょう。新人とOJT担当者が1対1だと何かとありますし、OJT担当者に過大なストレスがかかることもあります。「何かあったら私から言っておくから」と相談に乗ってくれるOJT担当者とは別の相手が必要です。すんなり育つ新人は、そうはいません。誰もが初めての社会人生活に悩みますし、人と接する機会がないテレワークなら尚更です。「1日1回、声をかけてね」と、短時間でも毎日オンラインで話せるようにしたほうがいいでしょう。
OJT担当者とメンター同士が集まって、「あの子どう?」「大丈夫?」と定期的に報告し合う機会も作れば、何かあったときも問題が発見しやすくなり、課題も共有でき、OJT担当者やメンターとなった若手自身も育ちます。OJT担当者は配属が決まってから決めればいいですが、メンターは研修中からつけたほうがいいでしょう「仕事を教えてくれる」OJT担当者と、「相談に乗ってくれる」メンター。2人体制でフォローするのが望ましいと思います。
配属がいつになるかは、会社の方針によって違います。新人研修を大切にしている会社では、3ヶ月くらい研修を行って、いろんな部署に行かせて、その後に配属を決めることが多いですよね。最初の1ヶ月は会社全体の研修を行い、2週間ずつぐらい各部署を経験させて、6〜7月に配属というパターンです。
テレワーク主体の企業では、このプロセスも見直したほうがいいかもしれません。コロナ以前は、5〜6月は「花いちもんめ」期間と呼ばれていました。各部署に新入社員を行かせて、「あの子が欲しい」「この子が欲しい」という現場の声を聞き、本人の希望も考慮に入れ、6〜7月に配属を決めるのが一般的でした。
しかし、テレワークでは、各部署の仕事を見ることや、本人の適性を見極めるのは難しく、「花いちもんめ」をする意味があまりありません。本来であれば必要な検討期間ですが、5月ぐらいの早い時期に仮配属を決めて、仕事に慣れてもらって、10月に本配属という施策を打ったほうがいいかもしれません。
いろいろな部署に行かせても、実質的に学べることは少ないのではないでしょうか。ましてやリモート環境ではお客様への同行なども、実体験としての場が難しいでしょう。それよりもメンターやOJT担当者を早くつけてコミュニケーションを活性化させたあげたほうが、新生活にも早く慣れ、落ち着いて仕事に集中できるようになるのではないかと思います。
とはいえ、オンラインだけでは、やはり限界があるように思えます。このご時世で言いにくいことですが、新入社員には、やはりリアルな研修も必要なのではないでしょうか?
名刺交換ひとつ取っても、1対1の場合はなんとなくわかっても、実際の現場では相手が3人出てきて混乱したりするものです。スマホ世代の新人には、電話の取り方もイチから教える必要があるでしょう。サラリーマンになったのですから、リアルな通勤地獄も体験しておいたほうがいいかもしれません。
オンラインでは、教えられないこともあります。春・夏・秋に1週間ぐらいずつ、リアルな研修もしたほうがいいように思います。会社で密になってしまうのなら、グループに分けて実施してもいいのです。
新人は、いきなり1人で仕事ができるようになるわけではありません。言葉や視覚だけで学べることには、限りがあります。会社のみんなが集まり、実際に仕事をしているところを見て、自分も手を動かしてみないと、なかなか仕事は覚えられないものです。新入社員にとって、同期との繋がりも非常に重要です。
前述した番組では、最後に新入社員の女性が番組スタッフと名刺交換をして「生まれて初めての名刺交換です。ようやくビジネスマンになった気がしました」と嬉しそうに笑っていました。
その時々の社会状況、感染状況にもよりますが、人事担当者の皆様には「ちょっとリアルにこだわってもいいんじゃないですか?」とお伝えしたいです。このコロナ禍でも、何とか工夫して、感染対策もしっかりして、少しでもリアルな場面をつくってあげてほしいです。検討してみる価値は、あるのではないでしょうか?
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人手不足になってから採用を進める補填的人事はおすすめできません。
そもそもなぜ退職者・離職者が多い会社が出てきてしまうのでしょうか?
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フォー・ノーツ株式会社が運営する【公式】YouTubeチャンネル。 今回は、【経営者と労働者それぞれの観点から考えるベストな働き方】について現場を知り尽くした人事のプロ・西尾 太が解説いたします。
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日本の人口の年齢別分布の現状と予想されている推移を考えると、
年功序列型の給与体系を維持するのは難しいと言えます。
年功序列型給与体系を脱却する糸口となるのが、「給与が下がる仕組み」です。
どのような基準で下がるのかを明確にする必要があります。
企業理念の浸透がなかなか進まないのは、
社員とのコミュニケーションが上手くいっていないからかもしれません。
自分たちの伝えたいことをしっかりと伝えられるようになるためには、
どんなことに気を付けていればいいのでしょうか?
評価制度の導入は会社にとっての変化。
中には良く思わない人もいるかもしれません。
しかし、だからといって引き下がると制度の導入が進められないばかりか、
人事が“なめられる”原因になってしまいます。