いい人が採れない。そもそも応募者が来ない。多くの企業が人手不足に悩む一方で、優秀な人材がいきいきと活躍している会社もあります。求める人材を獲得する方法は、「採用」だけではありません。それは本当に「雇用契約」でなければならないのか、改めて考えてみる必要があるのではないでしょうか。
中小企業やベンチャーの経営者や人事担当者から「いい人が採れない。そもそも応募者が来ない」というご相談をいただくとき、私はよくこのように聞いています。「それは正社員でなければダメですか?」。
近年、社員の一部を、雇用形態から「業務委託契約」に切り替える制度を導入する企業が増えてきました。業務委託契約とは、「請負契約(仕事の成果に対して報酬を支払う契約)」と、「委任・準委任契約(法律行為の代行やアドバイスなど、仕事の過程に対して報酬を支払う契約)」の総称です。
この動きには賛否両論ありますが、今後もこの動きは進んでいくと考えられます。これは、会社と社員の関係が対等な契約関係になるとも言えるでしょう。「価値」を出してもらえれば、本来、契約形態は何でもいいはずです。働いてもらう形態には、雇用・請負・委任・準委任など、様々なものがあります。
採用難が続く昨今ですが、フリーランスとして活躍している人は多くいます。企業と働く人の関係は、必ずしも無期雇用でフルタイム働く「正社員」に限らなくてもいいわけです。
実は私たちの会社でも、雇用契約を結んでいる人より、業務委託契約を結んでいる人のほうが多いのです。業務委託で働いてくれている人たちは、それぞれ自分の会社も持っています。
では、業務委託だと問題があるかといえば、まったくありません。任せた仕事を期待以上にやってくれます。当社の経営や企画・運営にも責任を持って関わってくれます。「雇用契約でなければ愛社精神を期待できない」などということもまったくありません。
つまり、ここで大事なのは、雇用形態や契約形態は、働く「スタイル」の違いであって、「レベル」ではないということです。これからの時代は「正社員が頂点である」という従来の考え方から脱却して、採用に関する意識をアップデートしていく必要があるのではないでしょうか。
自社の採用に関する人事ポリシーを決める際に、検証すべきことの1つに「そもそも人を資本と見るか、資源と見るか」という考え方があります。
資本は投資し(無駄になることもありますが)、リターンを期待するものです。人的資本と考える場合は、「人は育成し、将来的な価値の創出を期待する存在である」とします。
一方、資源は、言い方はよくないかもしれませんが、「使い果たすもの」ともいえます。決められた仕事をしっかりこなしてもらえばよい、という考え方です。
人は資本と見るほうがよさそうですが、全従業員(あらゆる雇用形態)を資本と見なすかについては議論が必要です。ドライに正社員は資本、アルバイトは資源という考え方もありますが、ある飲食業の会社では「お店のパートさんこそ大切にしなければいけない資本」としていました。
逆に「正社員にもエンジンとタイヤの種別がある」という経営者もいらっしゃいます。厳しいようですが、「替えがききにくい存在である人たち」と「代わりが容易に見つかる存在である人たち」がいるという意味なのでしょう。たとえばこの場合は、総合職と一般職や技能職といった職群を分けて考えるという方向性も見出せます。
では、業務委託は、資本と資源、どちらなのでしょうか。業務委託は「投資し、将来の価値創出を期待するもの」ではありませんから、「資本」ではないでしょう。しかし、「使い果たすもの」という従来の意味の「資源」とも異なるように思います。時代の変化ともに、資本と資源、この2択にはおさまらない、新しい価値観が生まれてきているのかもしれません。
近年は優秀な人材であればあるほど、自ら「雇用契約」を避けるようになってきました。「代わりが容易に見つかる存在である人たち」ではなく「替えがききにくい存在である人たち」も多くいます。そして、企業と契約関係を結び、対等なパートナーとして活躍しています。
私の周囲にいる優秀な人材は、契約形態にこだわりません。マーケティング、人事、IT、広報、営業など、それぞれの得意分野を持っています。彼らは「拘束される」正社員に興味はありません。「自らやりたい形で価値を出す」ことを考えている人たちです。
起業をしていたり、フリーランスをしていたり、また「雇用契約」を結ぶにしても、あえて「有期」を選んだりしています。価値を出しやすい契約形態なら、なんでもいいのです。
私自身(さして優秀ではないでしょうが)も最初から「起業」「独立」を考えていたわけではありませんでした。「やりたいこと」をするにはどういう形態がいいのかと考えたら、そこに「独立」があっただけです。「正社員」ではやりたいことができなかったのです。
時代は変わってきました。少子高齢化による人手不足が深刻化する昨今においては、労働力の確保が「雇用契約」でなければならないのかを、急速に見直す必要が出てきているのではないでしょうか。経営者や人事担当者が「正社員希望者」だけを追っていたら、優秀な人材をみすみす逃すかもしれません。
優秀な人材を獲得したいのは、どの企業も同じです。それは雇用契約でなければならないのか。正社員でなければダメなのか。「採用」ではなく「活用」という方法も改めて検討してみてはいかがでしょうか。
※参考資料:業務委託の活用に関する実態調査
URL:https://www.hajimari.inc/
人事という職に就いたならば、読む“義務”がある1冊
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しかしこの意識こそが、本当に必要な人材を逃す原因になるしれないのです。
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