FOURNOTES

第22回 今からでも十分学べるリストラ回避のためのスキル

40代・50代になっても、ビジネスパーソンは学び続けることが重要です。今回は、40~50代からでも十分学べる「リストラ回避」のためのスキルをお伝えします。まずひとつは、「ロジカルシンキング」です。ロジカルシンキングとは、物事を体系的に整理し筋道を立て、論理的に分析する思考法のこと。管理職研修でもよくお伝えしているのですが、管理職の役割は全体像を見ること。全体を見たうえで、何が大事で何は捨てても良いのかを考える、物事を俯瞰的に捉えるスキルが必要となります。

「ロジカルシンキング」を学び、物事を俯瞰して全体像を捉える

40代・50代になっても、ビジネスパーソンは学び続けることが重要です。今回は、40~50代からでも十分学べる「リストラ回避」のためのスキルをお伝えします。

 

 

まずひとつは、「ロジカルシンキング」です。ロジカルシンキングとは、物事を体系的に整理し筋道を立て、論理的に分析する思考法のこと。

管理職研修でもよくお伝えしているのですが、管理職の役割は全体像を見ること。全体を見たうえで、何が大事で何は捨てても良いのかを考える、物事を俯瞰的に捉えるスキルが必要となります。

これは20代・30代よりも、40代・50代のほうが優れている能力です。人工知能研究者・黒川伊保子さんの著書『成熟脳 ―脳の本番は56歳から始まる』(新潮社)によると、本のタイトルにもあるように、脳の本番は56歳から始まるといいます。

脳は人生最初の28年間であらゆる知識や感覚を得てピークを迎え、40代頃までは試行錯誤を繰り返します。40代・50代になると物忘れが多くなってきますよね。これは脳の衰えだと思いがちですが、実は必要なものを見極め、不要なものを捨てている「進化」なのだそうです。

加齢によって固有名詞を覚える力が衰えただけで、物事の構造や概念などを考える「コンセプチュアルスキル」に関しては、むしろ高まっているそうです。コンセプチュアルスキルとは、知識や情報などを体系的に組み合わせ、複雑な事象を概念化すること。物事の本質を把握する力です。

ロジカルシンキングを学び、コンセプチュアルスキルを磨く。物事を俯瞰して捉えて構造化したり、分析したりする力を高める。これは若い世代にはできない、40代・50代ならではのスキルです。

 

若い世代に伝えるときは、論理的に考え、答えを導き出す

刑事ドラマを見ていると、ベテラン刑事がよく「刑事の勘だ」と言っていますよね。残念ながらビジネスの現場では「長年の勘だ」というだけでは、若い子はピンときませんし、信じてもらえません。

若い世代に何かを伝えるときは、「このように分析したら、〇〇という答えになるよ」とロジカルに分析し、答えを導き出す必要があります。

そのための方法が、ロジカルシンキング(論理的思考)です。ロジカルシンキングを学ぶことによって、問題分析のスキルが磨かれます。問題分析とは。多くの情報の中から必要な情報とそうでない情報を選り分け、問題を客観的かつ構造的に捉えること。

ロジカルシンキングの基本ツール(プロセス図、マトリクス、ロジックツリー、ピラミッドストラクチャーなど)を活用して、情報整理や問題分析をする力を高めましょう。

ロジカルシンキングの基本といわれる概念の1つに、「MECE(ミーシー)」があります。MECEとは、抜け漏れなく、物事の全体を網羅して考えること。

直感も大事ですが、40〜50代にはそれを裏付ける論理的思考が必要です。ロジカルシンキングを身につけることで、抜け漏れを発見しやすくなり、周りがやろうとしていることに対して「この部分を見落としているんじゃないか」といった指摘をしやすくなります。

若い人たちの小論文を読んでいると、やはりそこができていない人が多いです。「人が辞めるから採用します」「長時間労働だから残業を減らします」と短絡的な思考に陥っていることが多く、「そもそもなんで人が辞めるんだっけ」「なんで長時間労働になってるんだっけ」「なぜこれまでそれができなかったんだっけ?」といった視点が抜け落ちています。

物事は、対処療法だけやっていても、うまくいきません。重要なのは、俯瞰的に捉えて本当の原因に行きつくこと。それが得意なのが40代、50代です。

若い世代から相談されたら「全体像を見ると、こうなっているだろう。ここが見えていないよ」と指摘できたら素晴らしいです。全体像を見て、物事を構造化する。構造化した中で、関連性を繋げて考える。こうしたことを改めて学ぶとしたら、ロジカルシンキングがいちばん役に立ちます。

 

将来のことを見通せる、「戦略」のスキルを高める

さらに価値があるのは、将来どうなるかを見通す「戦略」のスキルを高めることです。過去と現在を見て、将来はこうなると考える。100%予見はできなくても、ロジカルシンキングのフレームワークを使えば、ある程度は見通すことができるようになります。

 

 

例えば、課長から部長に昇進するために最も必要となるスキルは「戦略策定」です。戦略とは、道筋を示すこと。会社のあるべき姿に向かう戦略を策定し、具体的な方針を示す。ある選択肢を示すということは、他の可能性を捨てることを意味し、その責任を取る覚悟が求められます。

戦略策定ができるかどうか。これが課長から部長になるための最大のハードルですが、ロジカルシンキングを学べば、戦略策定のスキルも身につけることができます。

ロジカルシンキングのフレームワークには、SWOTや3C、4Cなど様々な種類がありますが、どれもそれほど難しくありません。ロジカルシンキングの本もたくさん出ていますから、そんなに難しくなさそうな薄い本を1冊読むだけでもいいと思います。

そこから提案できることも生まれてくるでしょうし、現状を変えていく知恵も出てくるかもしれません。そもそも、なぜそんなにロジカルシンキングの本が出ているかというと、ビジネスに有用だからです。

フレームワークというのは、過去の立派な人たち、学者やコンサルが「こう考えたら全体が見えるよ」「先のことがわかるよ」と親切に考えて作ってくれたものです。それらを学び活用すれば、「あの人に相談すれば、ロジカルに答えを出してくれるよね」「3年先のことまで考えてくれるよね」などと信頼を得ることでき、さらにそこに自分の経験値を加えれば、より高い評価を得られるでしょう。

私が読んで面白かった本は、『ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件』(楠木建/東洋経済新報社)です。これはロジカルシンキングのマニュアル本ではありませんが、「大きな成功を収めた企業の戦略には共通点がある」という競争戦略の新しい視点を獲得できる本でした。

戦略とは、先のことを考え、「やること」と「やらないこと」を決めるスキルですから、50代は絶対に持っておかなくてはいけません。戦略を立てるには、やはりロジカルシンキングが必要です。

 

対人関係で求められるのは「コーチング」のスキル

対人関係で学んでおきたいスキルは、「コーチング」です。コーチングとは、対話を通じて相手の内面にある答えを引き出し、自ら考えて行動する人を育てるためのコミュニケーションスキルです。

ティーチングは指導をすることですから、これまで自分が経験してきたことを教えればいいわけですが、それだけでは自分の経験から伝えことしかできません。そのため相手が学べる範囲が狭くなってします。学べる範囲を広げるためには、相手から答えを引き出すコーチングのスキルが必要です。

 

 

コーチングは、会社の中だけでなく、世の中全体に一定の需要があるので、定年後のビジネスにするために学んでいる人もいます。コーチングのプロとして活躍するのは難しいかもしれませんが、学んでおいて損のないスキルだと思います。

40〜50代の方々は、これまで培ってきた20年、30年ものビジネスの経験があります。その経験を背景にしながら、悩める部下や後輩の力を引き出していく。コーチングに関する本もたくさん出ていますし、社外のセミナーもあります。今からでも学びやすいという点でも、おすすめです。

ロジカルに物事を考えられる。部下や後輩の考える力を伸ばせる。企業もこのような人材をリストラしようとは思いません。ロジカルシンキングとコーチング、今からでも学んでみてはいかがでしょうか。

 

 

次回につづく

人事で一番大切なこと

人事という職に就いたならば、読む“義務”がある1冊
成果主義、職務主義、年俸制、人事部廃止… 90年代から変わらぬ「人事」の構造、変わらぬ平均給与額が、日本を世界トップクラスの「社員が会社を信頼しない国」へと導いたのです。 なぜ変革が進まないのか、その背後に潜む「考え方」の欠如とは何でしょうか?

人事制度の基本

中学時代に習ったこと、覚えてますか?
多くの人にとっては、すべての勉強の基礎になっている大事な「当たり前」のことですが、思い出せと言われても思い出せる方は少ないでしょう。
この「この一冊ですべてわかる 人事制度の基本」には、人事の当たり前が詰まっています。

評価基準

ー「なぜ、あの人が?」
なぜ多くの企業で「評価基準」が曖昧になっているのでしょうか。
どうすれば給与が上がるのでしょうか。
11,000人超の人事担当者から絶大な支持を得るコンサルタントが、今まで9割の会社が明かさなかった「絶対的な指標」を初公開!

超ジョブ型

テレワーク時代には「ジョブ型」に留まらず、「超ジョブ型人事」が不可欠。
その一番の理由は、テレワークをはじめとするこれからの働き方には「監視しない事が重要であるから」です。

プロの人事力

人事の“必須科目”を押さえる
プロの人事力
次のステージに向けて成長するためのキホン

人事担当者に必要な知識・学び方、仕事に対する心構え、業務との向き合い方、さらには人事マネージャー、人事部長へとキャリアアップするために必要な能力・スキルを一挙公開

人気の記事

最新の記事

類似記事