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第21回 大リストラ時代――人事のプロが教える「ヤバイ人」と「セーフな人」の差

中高年のリストラが止まりません。東京商工リサーチ によると、2021年の上場企業における早期・希望退職の募集人数は約1万6000人。前年の2020年は約1万9000人でした。2年連続で1万5000人を超えたのは、ITバブル崩壊後の2001〜2003年以来だといいます。リストラを実施している企業は、赤字とは限らず、好業績でも早期・希望退職を募っているため、「明日は我が身」と不安になっている方も多いでしょう。では、会社での自分のポジションが、どうであったらヤバイ、どうであったらセーフなのでしょうか。今回は、その目安について、お伝えしたいと思います。

50代で組織の長になっていないとヤバイ

中高年のリストラが止まりません。東京商工リサーチによると、2021年の上場企業における早期・希望退職の募集人数は約1万6000人。前年の2020年は約1万9000人でした。2年連続で1万5000人を超えたのは、ITバブル崩壊後の2001〜2003年以来だといいます。

 

 

リストラを実施している企業は、赤字とは限らず、好業績でも早期・希望退職を募っているため、「明日は我が身」と不安になっている方も多いでしょう。

では、会社での自分のポジションが、どうであったらヤバイ、どうであったらセーフなのでしょうか。今回は、その目安について、お伝えしたいと思います。

まずひとつは、職位についているかどうか。50代だったら、部長になっていないとヤバイです。

課長であっても、組織の長であるなら、セーフです。

ちゃんと直接の部下がいて、評価する相手がいる。組織責任を負っている。人事では「職位」と呼んでいますが、要はポストに就いているかどうか。そういう責任のあるポジションに就いているのなら、リストラの可能性は低いです。仕事は大変だと思いますが、評価をされているということですから。

では、担当部長、副部長、部長代理といった役職はどうかというと、実はもっともヤバイです。

なぜなら、お給料は高いのに、組織の責任を負っていないからです、

 

プロジェクトのリーダーを任されていればセーフ

組織の長ではない担当部長、副部長、部長代理といった役職は、はっきり言ってしまうと何の意味もありません。「お給料が高い人に、それなりに名誉のある呼び方を与えてあげましょう」と気をつかっているだけの役職ですから、いざとなったら、いちばん先にクビを切られてしまいます。

お給料が高くて責任のない役職者は、組織の上が重くなっている象徴です。どうにかしないとまずいため、多くの企業が頭を抱えています。だから早期・希望退職を募集する企業が増えているのです。該当する人は、くれぐれも注意しなくてはいけません。

ただし、部長がいない組織の部長代理であったり、課長と副部長を兼任しているような場合は、リストラの可能性は低いでしょう。それは部や課といった組織責任を追っているからです。

 

 

また、職位に就いていなくても、プロジェクトのリーダーを任されているなら、セーフです。ある特定分野のプロジェクトは組織横断的にやることもあるので、職位には就いていない場合があります。それでもプロジェクト責任を負っているので、リストラされる可能性は低いでしょう。

つまり、ひとつの大きな目安としては、責任を負っているかどうか。組織やチーム、プロジェクトなど、何らかの責任を負っている人材は、企業は簡単にリストラすることはできないのです。

 

「重要な会議に招集されない」「上司や後輩との会話がほぼない」もアウト

細かいポイントとしては、重要な会議に招集されないのもアウトです。職位についていれば、重要な会議には呼ばれるものですよね。会議に呼ばれるかどうか、これもひとつの目安になります。

上司との会話がほぼない。部下との会話がほぼない。部下がいない場合は、後輩との会話もほぼない。これもヤバイです。「〇〇はどうしたらいいでしょうか」「こうしたらいいんじゃない?」といった周囲との仕事に関する会話がないとしたら、組織において必要とされてないということですから。

また、相談事が来ないのも危ないです。仕事をしていれば「ちょっといいですか」と1日に1件くらいは、何かしらの相談をされるものです。部下や後輩、同僚から「ちょっといいですか」と相談されることが滅多にないとしたら、気をつけなくてはいけません。

連絡事項が全部メールという場合も、注意が必要です。リアルであってもオンラインであっても、重要な話し合いは、口頭で行われるのが一般的です。仕事に関する連絡がすべてメールで済まされてしまうのは、組織の中での存在価値が低くなっている証拠でしょう。用心しなくてはいけません。

 

テレワークでちゃんと成果が出せていればセーフ

近年、非常に重要になっているポイントとしては、テレワークがちゃんとできること。テレワークというのは、「成果にコミットすれば、そのやり方は任せるよ」ということで成り立つものです

1年、半年、4半期などの目標に対して、成果を出せるのであれば、仕事の進め方は問わない。自宅にいようが、サテライトオフィスにいようが、自分でマネジメントできるよね、と。

NTTグループが、社員の勤務を原則、自宅でのテレワークとし、居住地の制限もなくす新たな制度を導入しました。コロナ禍が収束しても、テレワークは今後さらに一般化していくでしょう。

テレワークでは、上司によるマネジメントが徹底できなくなります。これからの時代は、セルフマネジメントできる人材が強く求められるようになります。

 

 

セルフマネジメントとは、「ミッションを決め、目標を立て、実行する」という働き方です。自らミッションを示し、目標設定を行い、上司に認めてもらい、その目標を達成し、成果を出せる。これからの世の中で高い評価を得ていくのは、このような人材です。

セルフマネジメントができて、テレワークでちゃんと成果が出せるのであれば、まだまだ大丈夫です。

会社や組織、チームのビジョンを実現するために、自身で目標を設定し、成果が出せる。その成果が明確で、会社の役に立ち、世の中にも貢献している。そういう人なら、セーフでしょう。

一方、「テレワークになってヒマだなぁ。映画でも観に行こうかなぁ」みたいな人は危ないです。テレワークで誰とも会話しなくても、それなりに仕事が回っている。「このままイケるんじゃないかな」と安心している。そういう人は、罠が仕掛けられていると思ったほうがいいでしょう。

会社もそれはわかっています。「この人、成果出してないよね」「テレワークで何をやっているんだろう」「あの人、何の仕事をしているのか、よくわからないよね」、このように思われてしまったら、相当ヤバイです。会社はそんなに甘いものではありません。

まとめると、責任を負う、成果を出す、組織としての責任を追わないのなら個人としての成果を出す。この3点が、リストラされるかどうかの大きな指標となります。

組織としての責任を負っているのなら、その役割を全うする。職位に就いていないのなら、自分に望まれていることは何だろうと改めて考え、成果を出す。残された人生、今をより良くしていくことに対して全力でやっていかないと、会社の中で生き残っていくことはできません。

世の中も激しく変化しています。日本は、生産性も競争力も先進国で最低レベルになっています。急激な物価上昇が続いているのに、この30年間、平均給与も上がっておらず、アメリカの半分程度。世界主要33か国で、日本だけは賃金が下落しているのです。世界の国々が着実に成長している中、日本は完全に取り残されてしまっています。

こうなってしまった責任は、私たちの世代にあるのだと思います。政府が、大企業が、とか言っていないで、目の前のことでいいから、今より良くしていこうと立ち上がり、周りも巻き込んでいかないと、日本はますますダメになってしまいます。

職位に就いていても、いなくても、責任ある世代として一念発起して頑張らなくてはいけないのではないのでしょうか。それこそが、あなた自身が生き抜くリストラ戦略にもなるはずです。

 

 

次回につづく

 

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