2020.01.17
経営陣から下りてくる人事施策が果たして本当に人事ポリシーに則っているのか?
それを判断するのは人事の役目です。
そのために必要な「人事の人事ポリシー」とは?
たとえば、経営陣から「インセンティブ制度を設けたい」という話があったとします。人事担当者であるあなたは、それを聞いてどのような行動をとるのが正解でしょうか?
多くの人事担当者が「わかりました」と、インセンティブ制度を設けるために社内を整備し始めるでしょう。果たして、そのように言われたままに行動することは正しいのでしょうか?
非常に残念な話ではありますが、経営陣が考え出した人事施策が必ずしも人事ポリシーに則っているかどうかは、実際に照らし合わせてみないとわかりません。どうしても手段(=人事施策)の方に目がいってしまい、目標(=人事ポリシー)が忘れられてしまうことがあるからです。
そのような人事施策をやりたいと指示された際に人事施策がとるべき行動は、言うまでもなく人事ポリシーと照合してみることです。「その施策は何のために行うのか?」から考えていくとわかりやすいでしょう。
もし人事ポリシーに則っていなければ、経営陣に意向を聞く必要があります。「人事ポリシーに則っていませんが、人事ポリシーを変えてでも実施したいでしょうか?」と伺いをたてることができるのは人事だけです。
人事ポリシーというのは、いわば社員に対する考え方の軸です。経営陣の持つ軸は企業全体の軸と言えますが、「企業としてこういった軸を持って成長していきましょう」と決めた後に経営陣が軸からずれた行動をとってしまうと、社員から企業への信頼が落ちてしまいます。「この方向に向かって歩いて行こう!」と指示されたのに、「やっぱりこっちに行くぞ!」と急に方向転換されるようなものですから、しかたのないことでしょう。
ずれかかった経営陣の軸を整えるのは、人事の大きな役割と言えます。そのためにも、人事は人事の中で軸を持っておく(=人事ポリシーを策定しておく)ことが大切です。
人事としての軸を持っていなければ、人事も社員ですから、経営陣がずれたまま一緒にずれてしまいます。具体的に言えば、経営陣から「このような人事施策をしたい」と言われた際に、「まぁ経営陣がこうしたいって言うんだから間違ってないだろう」とそのまま受け取りがちです。「進む方向が変わってしまいますよ!」と警告できる人事になるためにも、人事は人事の軸を持っておくことが大切なのです。
人事の人事ポリシーを策定するといっても、勝手に人事で一から新しく人事ポリシーを考えるわけではありません。企業の人事ポリシーを踏まえて策定するものになります。もしかしたら、策定していく中で、企業の人事ポリシーとのずれが生じることもあるかもしれません。その場合はなぜそのようなずれが生じたのかを議論して、最適化していくと良いでしょう。もしかしたら議論によって人事ポリシーが変わるかもしれませんが、これはいわばブラッシュアップのようなもの。人事ポリシーは変えてはいけないものではなく、状況に合わせて更新していくものなので、このような変更は問題ありません。
このようなすり合わせ作業が必要なのは、人事ポリシーだけではありません。ある種人事の仕事はすり合わせの連続であると言えます。
私たちは様々な企業の経営陣と人事担当者の会議に参加させていただいています。その中で感じることは、人事担当者は話を聞く中で具体的な施策の話が出る傾向が強く、経営陣は目線が高く全体を見渡しているため、あるべき論もしくは理想論が出やすいということです。
たとえばある企業の経営陣と人事担当者を混じえた会議で、社員を評価する際に重点的に見るポイントはどこにしようか、という議題になりました。人事担当者は「行動」と言い経営陣は「成果」と言いました。
経営陣が成果を重視するのはある種当然のこと。「業績さえあげてくれればいい」という考え方を持っている方も少なくありません。しかし成果至上主義は、個人業績の取り合いや「成果さえ上げていれば何をやってもいい」といったような、「人が腐る」と言われるもとです。「それで本当にいいんですか?」と聞くのは人事の役割だと言えます。
とはいえ、人事は人事で行動を重視しすぎて、業績を伸ばすことをないがしろにしてしまうことがあります。人事の目線と経営陣の目線をすり合わせ、やり取りをしながら最適なラインを見つけていきましょう。
このようなすり合わせは人事のポリシーの策定から人事施策を実施するまで都度行っていく必要があります。目線が異なれば考え方が異なるのも自然なこと。面倒がらずにずれが生じたと感じたらすぐに行うことが大切ですよ。
人事という職に就いたならば、読む“義務”がある1冊
成果主義、職務主義、年俸制、人事部廃止… 90年代から変わらぬ「人事」の構造、変わらぬ平均給与額が、日本を世界トップクラスの「社員が会社を信頼しない国」へと導いたのです。
なぜ変革が進まないのか、その背後に潜む「考え方」の欠如とは何でしょうか?
中学時代に習ったこと、覚えてますか?
多くの人にとっては、すべての勉強の基礎になっている大事な「当たり前」のことですが、思い出せと言われても思い出せる方は少ないでしょう。
この「この一冊ですべてわかる 人事制度の基本」には、人事の当たり前が詰まっています。
ー「なぜ、あの人が?」
なぜ多くの企業で「評価基準」が曖昧になっているのでしょうか。
どうすれば給与が上がるのでしょうか。
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テレワーク時代には「ジョブ型」に留まらず、「超ジョブ型人事」が不可欠。
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プロの人事力
次のステージに向けて成長するためのキホン
人事担当者に必要な知識・学び方、仕事に対する心構え、業務との向き合い方、さらには人事マネージャー、人事部長へとキャリアアップするために必要な能力・スキルを一挙公開
人事ポリシーとは会社の「人」に対する考え方を表明したものです。
会社が抱える「人」の悩みの大半は、社員との間にある意識のミスマッチが原因です。
自社に即した人事ポリシーによって意識をすり合わせることができれば、
複数の課題が一気に解決することも珍しくありません。
いい人が採れない。そもそも応募者が来ない。多くの企業が人手不足に悩む一方で、優秀な人材がいきいきと活躍している会社もあります。求める人材を獲得する方法は、「採用」だけではありません。それは本当に「雇用契約」でなければならないのか、改めて考えてみる必要があるのではないでしょうか。
人事は、人員計画・配置・採用・給与・厚生・育成・評価といった分野と、それぞれに戦略、企画、運用、オペレーションという機能があり、幅広い分野の領域に関わる職種です。一領域の人事担当者からマネジャー、人事責任者になるには、何をどのように学べばいいのでしょうか?本記事では、担当者レベルから人事責任者を目指すために重要なポイントを「人事の学校」主宰・西尾太が解説します。
人事評価制度は、社員の育成のために必要不可欠です。
しかし間違った評価基準を設けてしまうと、
社員の成長どころか企業の業績の低下にもつながってしまいます。
ではどのような点に注意すればよいのでしょうか?
脱・年功序列の実現で最後に必要になってくるのは、人事担当者の「想い」です。社会や顧客への想い、株主への想い、取引先への想い、そして共に働く人への想いがなければ、様々な抵抗に屈して改革は頓挫します。制度を変えて運用に成功している企業とそうではない企業の違いは、その原動力となる人事担当者の想いの強さにあります。総合人事コンサルティングのフォー・ノーツ株式会社の代表であり、『超ジョブ型人事革命』(日経BP )の著者・西尾太が、人事担当者に必要な3つのマインドセットについて解説します。
「頑張っていること」を評価したい、
という気持ちを持つのは悪いことではありません。
しかし、その気持ちを本当に評価に反映してしまうと、
社員の不満の元になってしまいます。
人事評価においては、上司から部下へのフィードバックが重要です。しかしフィードバックをしない、あるいは適切なアドバイスをしない管理職も少なくありません。そこで今回は、フォー・ノーツ株式会社の代表であり、『超ジョブ型人事革命』(日経BP)の著者・西尾太が、フィードバックの目的について解説します。
総合人事コンサルティングのフォー・ノーツ株式会社は、代表取締役社長・西尾太の著書『この1冊ですべてわかる 人事制度の基本』出版記念特別セミナー【聞いた後でジワジワくる‼西尾太の「地味な」人事の話】を2022年11月17日、TKP東京駅日本橋カンファレンスセンターにて開催いたしました。本記事は、このセミナーの内容を再構成・加筆してお届けしています。今回のテーマは、「何に対してお金を払うのか?」。人事制度設計の根本的な考えを整理しましょう。