マネージャーは、メンバーの「評価者」という重要な役割があります。「成果評価」は、どのようにして行うべきなのでしょうか。人事評価をするすべてのマネージャーの必携書『この1冊ですべてわかる 人事評価の基本』(西尾太/日本実業出版社)から「成果評価」の留意点と実践のポイントを抜粋して紹介します。

マネージャーは、通期・または半期が終了したところで、メンバーの成果評価を行います。成果評価は、「目標の達成度」を評価すること、そして「成果評価の範囲」に限ることが原則です。
成果に至るプロセスは、人の内面にあるものから始まります。内面にあるものとは、「知識やスキルなどの能力」「性格的特徴とも言えるパーソナリティ」「目指すものや興味関心につながる指向性」などを指します。これらはもちろん大事ですが、周囲から見ることはできません。
人はその内面にあるものから「やるぞ」というモチベーションがかかると「行動」を起こします。行動は周囲から見えます。「速く走る」「ピアノが上手」といった動作は、実際に「行動」として発揮されてこそ評価されます。仕事においても、これは同様です。
「行動」をした結果が「成果」につながります。ただし、「行動」と「成果」の間には、「運や環境」があり、「成果」は「運や環境」に左右されることに注意が必要です。
例えば、あなたが9時に出社をしようとして、そのための正しい時間に家を出て、正しい時間に電車に乗ったとしましょう。環境さえ整っていれば、“時間通り会社に着く”という「成果」につながるはずです。
しかし、「電車が止まっていた」といった自分自身ではどうにもできない「環境」に左右され、“時間通り会社に着く”という成果につながらない場合もあります。不運ではありますが、会社が求めているのは「成果」です。成果評価は、「運や環境」も取り込んだ「成果評価の範囲」のみで行わなければなりません。
成果評価は、「できたか」「できないか」を問うもの。「成果はでなかったが、頑張っていた」については、ここでは評価しません。逆に「さして頑張っていなかったが、運が味方して成果が出た」のであれば、評価するべきです。「運も実力のうち」なのです。
とはいえ、成果に至る行動や能力といった「頑張り」や「性格」「資質」なども加味したくなるのが人間ですよね。それらは「成果評価」とは別の「行動評価」において行いましょう。
成果評価は、各目標の「達成基準」に照らして評価します。売上・利益などの数値目標は、客観的事実として顕在化しているはずですから、それらを確認します。成果評価のシートに「自己評価」があり、成果を示す記述と自己評価が示されていれば、それが事実かを確認し、一次評価者として評価を行います。
各目標の評価は、原則、達成基準に照らして厳正に行います。達成なら「A評価」、未達成なら「B評価」です。この際、注意すべきなのは以下の5つのポイントです。
●メンバーの自己評価に引きずられない
メンバーの自己評価においては、事実の解釈や、本人が認めてもらいたいこと、あるいは謙虚さなどの理由で、達成基準とは違う評価が出ているかもしれません。なぜその評価をしたのかをメンバーによく確認するとともに、一次評価は「あくまで達成基準に照らして」行ってください。
●「運が良かった・悪かった」は考慮しない
成果評価では、「運も実力のうち」として評価します。「運が悪かった」といった理由で評価を上げたりすると、企業・組織の業績との関連性が保たれません。
●「やるべきだったのに手をつけなかった」については「C評価」とする
目標の中には、「やらなければならなかったのに、何らかの事情でできなかった」という項目も出てくるでしょう。この場合、やらなければならなかったわけですから「C評価」です。
●「やる必要がなくなった」目標については評価しない
組織的な状況等によって「やる必要がなくなった」目標については、本来はその時点で別の目標設定をしておくべきでしょう。しかし、それが期中にできなかったのであれば、やむを得ません。その目標は「評価せず」として、その目標にかかっていたウエイト(重要度)を別の目標に振り分けます。
●シートに書かれていない特筆すべき成果や失敗は「総合評価」で勘案する
成果評価のシートに書かれていない特筆すべきこと、目標以外に取り組んで成果をあげたことや大きな失敗があれば、各目標の評価には反映せず、総合的な評価をプラス・マイナスしましょう。
各目標の達成度を評価した上で、その期の成果は総合的にどうだったかを評価する「総合評価」を行います。制度にもよりますが、評点制の場合、各目標のウエイトや達成度において自動計算され、総合評価が出てくるものもあるでしょう。
ですが、先述の通り、シートに書かれていない成果や失敗があるかもしれません。それは「アナログ」に評価して、総合評価として勘案しましょう。これこそが「血が通った評価」です。自動的に点数が出てきたとしても、そこで悩むのをやめないでください。
多くの企業では、各目標の達成度評価は「成果が出たか出なかったか」を問うものとし、5段階評価としています。それがわかりやすいのではないでしょうか。
ただし、「総合評価」については、5段階だと中央の「A」に評価が集中し、差が出にくくなります。そこで「A」よりも“いい感じ”である「A+」と、“惜しかった”を示す「A -」を加え、7段階、ないしは9段階にすることをお勧めしています。
総合評価とは、総合的にその期は「全体的に目標達成したと言えるのか」「足りなかったのか」「目標を上回ったと評価できるのか」を評価していくものです。多くの制度では、この総合評価が賞与支給や、行動評価と合わせた昇降給に影響することになります。総合評価の中心化は、要注意です。「A+」「A -」といった評価を活用し、成果を評価に反映していきましょう。
拙著『この1冊ですべてわかる 人事評価の基本』(西尾太/日本実業出版社)では、成果評価のシートや行動評価の基準例、9段階で行う総合評価の事例も紹介しています。こちらも参考にしてみてください。

『この1冊ですべてわかる 人事評価の基本』
西尾太(日本実業出版社)
「人事評価」をするすべてのマネージャーの必携書。本書を読めば、人事評価制度の意義と目的、評価者としての正しい態度・考え方、組織に合った評価指標の選び方、タスクマネジメントや目標管理の手法、評価面談と評価会議の進め方、部下のポテンシャルを引き出すコミュニケーション方法などが一気通貫に理解できます。

人事という職に就いたならば、読む“義務”がある1冊
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プロの人事力
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