2025.09.24
人材育成は、「研修」や「評価」など、さまざまな方法があります。なかでも「人事異動」は、仕事内容、人間関係、上司が変わり、新たな環境に対応することで、社員が劇的に成長します。ただし、計画的かつ戦略的に実施することが重要です。その鍵を握るのは、人事担当者が作成する「人事異動方針」です。
人材育成は、あらゆる企業に共通する重要な課題です。社員を成長させる仕掛けは、いろいろあります。各種研修や評価制度は、気づきやアドバイスをもらえ、成長のきっかけを得ることができます。キャリアステップを明確に示すことは、社員の成長を促し、離職を防ぐ効果もあります。
しかし、自身を振り返ってみると、自分をもっとも成長させてくれたのは「人事異動」だったという実感があります。異動によって仕事が変わる、人間関係が変わる、上司が変わる。このような変化に対応していく日々によって、ビジネスパーソンとして次のステージに進むことができたように思います。
人事異動は、人を劇的に成長させる機会を創出します。特に会社の未来を担うコア人材に関しては、異動を繰り返し、視野や経験の幅を広げていく必要があります。同じ部署で同じ仕事をしているだけでは、ある程度で成長が止まり、その後はなかなか成長できません。
もちろんそうでない場合もありますが、そうならないためにも、人事担当者としては「社員が大きく成長する仕掛け」として異動という機会を積極的に作っていくべきでしょう。
ここで大事なポイントは、人事異動は計画的かつ戦略的に実施することです。場当たり的な人事異動では、この施策の本来のポテンシャルが発揮されません。社員の中長期的な成長を視野に入れ、「このような人材に成長してほしい」という愛を持って、計画的かつ戦略的に異動案を練っていくことが重要です。
私の前々職、前職はベンチャー企業で、それぞれ創業から十数年たったステージでしたが、変化が速く、組織変更が頻繁でした。それに伴っての人事異動もしばしば行われていました。それはそれでいいことでもあるのですが、「場当たり的」であったことも否めませんでした。
「偶然が人を成長させる」という面もありますが、それにしても動かしすぎるという感も否めなかったと思います。ひとつの部署で同じ仕事をしていた人が頻繁に退職してしまうことも課題になっていました。このときに痛感したのが、「人事異動方針案」の重要性です。
人事異動方針とは、人事ポリシーに基づき、「どのような人材を育成していくのか」を策定していくものです。人事がつくる人事異動案方針案は、事業の成長や社員の成長のためにどのように人材を配置し、異動させていくのかをデザインし、計画的かつ戦略的に人事異動を行っていくための指針になります。
大企業によく見られるように、「課長になるまでに2ないし3部署を経験しなければならない」といったことも、この方針によるものです。ゼネラリストとして、あるいはエキスパートとして、どのように人材育成していくのかによっても、この方針は変わります。
新卒から4〜5年間も同じ職場で同じ仕事だけをしている社員は、他部署では通用しなくなってしまうおそれがあります。どこかで異動を働きかけないと、成長が止まり、そこでしか通用しない人材になってしまうかもしれません。人事担当者は、このような中長期的な視点を持って、社員や事業の成長を見据えた人事異動方針を作る必要があるのです。
ただし、人事異動を実現するのは、簡単ではありません。異動させたい社員がいても、同じ部署で経験を積んだメンバーを現場は手放したがりません、優秀な人材であればあるほど、現場に反対されるものです。異動に対しては「現場の抵抗」が非常に強いため、人事担当者は苦しむことになります。
現場の抵抗といかに向き合い、異動を実現させるか。人事担当者は、そのための戦略と運用の仕方も考える必要があります。私は「人事異動方針」として3年以上同じ部署で同じ仕事をしているケースを「異動対象」とし、「自己申告制度」も導入しました。
そして、自己申告によって「今すぐ異動したい」と申告している社員を「最優先異動候補者」、「近い将来異動したい」と申告している社員を「次点の異動候補者」として、経営者の承認を取り付けました。
人事異動を実現させるためには、本人の申告が何よりのよりどころとなります。本人の申告さえあれば、「希望する部署に異動させないと辞めちゃうかもしれませんよ」と、現場の責任者も説得しやすくなります。社員ひとりのキャリア意向も把握できるため、より的確な異動案も作れるようになります。
また、「3年以上同じ部署で同じ仕事をしている」ことをルール化して、経営者の承認も取り付けたことによって、現場の抵抗にあっても人事異動を実現しやすい環境を整えました。
新卒入社者については、入社後5年間は「人事部門」で人事権を持ち(その代わり人件費も配属先ではなく人事部門が負担)、その間は長期的視点によって「一度は必ず異動させる」「6年目に適性を考慮して異動本籍地を決める」といった仕組みを作りました。
その部門でのキャリアアップを主眼としながら、やみくもに異動するのではなく、例えば、人事部→営業部→人事部→企画部→人事部など、本籍地(この場合は人事部)に戻るという異動方針を定めたのです。これは「人事部門でのキャリアをつけるために他部門に異動する」という考え方に基づきました。
計画的かつ戦略的な人事異動を行うことで、社員は劇的に成長します。私の前職では20%を超えていた離職率も、半分以下まで激減することができました。これも人事異動方針の効果が大きかったと感じています。自社の人事異動方針はどうなっているのか、改めて確認し、内容を見直してみてください。
人事という職に就いたならば、読む“義務”がある1冊
成果主義、職務主義、年俸制、人事部廃止… 90年代から変わらぬ「人事」の構造、変わらぬ平均給与額が、日本を世界トップクラスの「社員が会社を信頼しない国」へと導いたのです。
なぜ変革が進まないのか、その背後に潜む「考え方」の欠如とは何でしょうか?
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多くの人にとっては、すべての勉強の基礎になっている大事な「当たり前」のことですが、思い出せと言われても思い出せる方は少ないでしょう。
この「この一冊ですべてわかる 人事制度の基本」には、人事の当たり前が詰まっています。
ー「なぜ、あの人が?」
なぜ多くの企業で「評価基準」が曖昧になっているのでしょうか。
どうすれば給与が上がるのでしょうか。
11,000人超の人事担当者から絶大な支持を得るコンサルタントが、今まで9割の会社が明かさなかった「絶対的な指標」を初公開!
テレワーク時代には「ジョブ型」に留まらず、「超ジョブ型人事」が不可欠。
その一番の理由は、テレワークをはじめとするこれからの働き方には「監視しない事が重要であるから」です。
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プロの人事力
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強い組織を構築する場合に欠かせないのは、コミュニケーションの活性化です。風通しを良くし、考えや意見が出やすい環境づくりが必要と言われています。しかし、それ以前にもっと重要なことがあります。今回は、人事のプロフェッショナル集団、フォー・ノーツ株式会社の代表であり、『超ジョブ型人事革命』(日経BP)の著者・西尾太が、コミュニケーションの目的についてお伝えします。
様々な企業で支給されている「手当」。
中には手当を求人の売りにしているのも見かけます。
手当に対する考え方を今一度見直してみましょう。
同じ会社で同じレベルの仕事をしているのに、評価される人とされない人が出てくる。
これは評価基準となる「45のコンピテンシー」を知っているかどうかの違いです。
人手不足が深刻化する現在、企業の約8割(82.9%)が2024年に賃上げを実施予定だといいます。「うちは給与が安いので人が採れない」「給与が低いので人が辞めてしまう」「給与を上げたいのはもちろんだが、現実的には厳しい」とおっしゃる経営者が多くいます。しかし、給与を上げれば人が採用でき、定着し続けてくれるのでしょうか。今回は、この問題を深掘りしてみたいと思います。
キャリアステップが必要なのはわかるけど、
どのタイミングで導入するべきかわからない。
今回はこの疑問に、フォー・ノーツ株式会社の曽根がお答えいたします。
人事担当者の中にも、本業で培ったスキルを副業で活かしたいという方は多くいらっしゃいます。まずは、自分のスキルをアピールするためには「〇〇ができます!」と言えるように言語化しましょう。また、普段の仕事の中でも「自分は外でどんな価値提供ができるか」を想定することは、自分のスキルを整理し上手く売り込むために重要なことです。
給与の額は評価によって決まります。
そのため、評価は給与を額を決めるための手段に過ぎない、
と考える人も少なくありません。
そのような考え方は、正当な評価につながらないことがあるので注意です。
「離職率を下げる」という目標を持っている会社は少なくないでしょう。
その目標を持って私たちにご相談いただく企業様は、
ブラック企業でもなく、労働環境が悪いわけでもない、ごく普通の企業様ばかりです。
ではなぜ人が辞めてしまうのでしょうか?
その理由は、「人事ポリシー」にありました。