2025.07.24
中小企業やベンチャーには人事部門がない会社が少なくありません。そういう企業で初めての人事担当者に任命された、あるいは人事部門の立ち上げを検討している。そういう方々にとって「人事」というのは、とてもわかりにくい領域のようです。今回は「人事とは何か」その基本をお伝えします。

採用がうまくいかない、社員が定着しない、成長しない、優秀な人材が辞めていく…。
このような「人」に関する問題を解決するのが人事部門の役割です。
しかし、社員数100名くらいまでの中小企業やベンチャーには、ほぼ人事部門がありません。
社長がひとりで人事の役割を担い、給与の支払いなどの実務だけは総務や経理が担当している。あるいは、社会保険労務士に手伝ってもらっている。そういう会社がほとんどです。
少人数の会社であれば、それでもあまり大きな問題は起こりませんが、社員が50名を超えてくると、社長がすべてを見るのは難しくなってきます。そのため社員の不平・不満などが増え、社内の雰囲気が次第におかしくなってきます。
社員数が100名を超えると、採用、育成、教育、離職、ハラスメント、メンタルヘルスなど、さまざまな面で問題が発生するようになってきます。多くの会社が人事部門の立ち上げを検討するようになるのは、まさにこうしたタイミングです(それでも人事部門を設立しない会社も少なくありませんが)。
ところが、いざ人事部門を立ち上げようとしても、社長はビジネスのプロではあっても、人事の専門家ではありません。人事経験者も社内にいないことがほとんどです。そのため、人事担当者に任命された人は「何をすればいいのかわからない」という状態になりがちです。
人事部門のある大きな会社であっても、担当ごとに部署が分かれていることが多いため、人事という領域の全体像を把握できていないことが多くあります。まずは人事の基本として、人事部門の「3つの機能」を把握することから始めてみましょう。
人事という部門には、大きく分けて以下の3つの機能があり、それぞれの職務・実務があります。
① 人事・採用
人材フロー(社内の人の流れ)をつかさどる機能です。要員計画や人員計画を立て、採用活動、人事異動調整、人件費等の管理を行い、各種労務問題やリスクにも対応します。そして、採用選考オペレーション、発令業務、各種申請処理、雇用契約管理・更新手続きといった実務を担います。
② 給与・厚生
給与、福利厚生関連、および規定関連の施策をつかさどる機能です。給与制度や退職金制度の整備や運用、福利厚生の企画や運用を行います。給与計算・支給の実務、社会保険・入退社の手続き、福利厚生などの実務も担います。
③ 育成・評価
人事制度、特に等級制度・評価制度・給与制度と社員教育をつかさどる機能です。職位・等級制度、社員のキャリアパス、教育体系の構築、評価制度の企画、教育プログラムの企画・実行、等級制度・評価制度・給与制度の運用、評価の調整・確定、昇降格の運用などを行います。また、評価制度の運用資料の作成、評価集計、研修オペレーションなどの実務も担います。
ちなみに「つかさどる」とは、これらの決定を必ずしも人事部門が行うわけではなく「仕切る」ということを意味しています。いつまでにどのような決定をしなければならないのかを定め、その期日に向かって、決定権者に決めてもらうよう働きかけるのです。
自社にこれらすべての機能があるか、あるいは欠けている機能がないかチェックしてみてください。また、あなた自身が今どの部分を担当しているのかも確認してみましょう。
人事部門には通常、上記①〜③の機能を果たすために「戦略」を策定し、その戦略を実現するための「企画」をし、その企画を「運用または管理」するといった職務があり、それぞれに実務としての「オペレーション」があります。
例えば、給与計算を担当しているとしたら、給与計算・支給の実務は間違いなく実施することが必要ですが、次のようなポイントも視野に入れていることが大切になります。
・その給与は、いったいどのように決定されているのか
・給与決定の際、評価はどのように反映されているのか
・等級が上がると、どのくらい給与が上がるのか
・給与を決定するための規定類に不備ははないか
・改定する必要があるとしたら、どの部分をどのように改定するのか
このようにして「自分の仕事を起点に関係する職務」にも思い巡らすことによって、あなたの人事業務に関する知識や世界観が広がっていきます。
給与計算は、「誰がやっても結果は同じ仕事」ですが(人によって給与計算の結果が異なっては困ります)、視野を広げることにより「あなただからできる仕事」が増えていきます。それがあなたの価値を高めていくのです。
これは、どの機能・どの職務においても一緒です。採用をすれば、配置があり、育成があり、評価があり、給与を支給し、福利厚生を活用してもらうことになります。これらの機能は相互に関連します。「人事・採用」「給与・厚生」「育成・評価」、すべての機能は繋がっているのです。
ひとりで人事を担当する場合はもちろん、自分が今どの部分を担当していたとしても、この人事部門の機能全体を意識しながら「自分の仕事がどこにつながっていくのか」「どこから来ているのか」を想定しながら人事業務を行なっていってください。この意識を持つことによって、人事担当者として大きく成長することができます。

人事という職に就いたならば、読む“義務”がある1冊
成果主義、職務主義、年俸制、人事部廃止… 90年代から変わらぬ「人事」の構造、変わらぬ平均給与額が、日本を世界トップクラスの「社員が会社を信頼しない国」へと導いたのです。
なぜ変革が進まないのか、その背後に潜む「考え方」の欠如とは何でしょうか?

中学時代に習ったこと、覚えてますか?
多くの人にとっては、すべての勉強の基礎になっている大事な「当たり前」のことですが、思い出せと言われても思い出せる方は少ないでしょう。
この「この一冊ですべてわかる 人事制度の基本」には、人事の当たり前が詰まっています。

ー「なぜ、あの人が?」
なぜ多くの企業で「評価基準」が曖昧になっているのでしょうか。
どうすれば給与が上がるのでしょうか。
11,000人超の人事担当者から絶大な支持を得るコンサルタントが、今まで9割の会社が明かさなかった「絶対的な指標」を初公開!

テレワーク時代には「ジョブ型」に留まらず、「超ジョブ型人事」が不可欠。
その一番の理由は、テレワークをはじめとするこれからの働き方には「監視しない事が重要であるから」です。

人事の“必須科目”を押さえる
プロの人事力
次のステージに向けて成長するためのキホン
人事担当者に必要な知識・学び方、仕事に対する心構え、業務との向き合い方、さらには人事マネージャー、人事部長へとキャリアアップするために必要な能力・スキルを一挙公開
新卒でも、中途入社であっても、人事未経験で人事部に配属されたとしたら、
どのような考え方を持ち、何をして過ごすべきなのでしょうか?
今回は若手人事担当者の心構えについて解説します。
いま再び注目を集めている「ジョブ型雇用」や「成果主義」は決して新しい考え方ではありませんが、これからの働き方を考える中では重要な要素です。 その実現のためにはジョブディスクリプション(職務記述書)が必要とされています。しかし、ジョブディスクリプションの策定や運用には、様々な課題も想定されます。 「働き方」「雇用のあり方」「管理のあり方」「評価のあり方」「給与・処遇のあり方」といった「考え方」そのものをどこまで変えるのか、といったことをよく考える必要があります。 今回は代表西尾から、これからの時代の働き方や評価についてお伝えしていきます。
優秀な若手社員ほど、数年、時には数ヶ月で突然辞めてしまうことがあります。
「この会社にいても外で通用しない」など理由は様々。こうした時、若手社員の不満に耳を傾けたり、柔軟な働き方を提案することで退職を思いとどまらせることができるかもしれません。
人事制度の中でも人気のある「研修」。
自社の弱いところにピンポイントで対策ができるので、重宝されていますよね。
しかし研修は実施すればそのまま成長につながるわけではありません。
しっかりと考えないと、研修が様々な無駄を生むもとになってしまいます。
会社と社員を成長させる人事の「あるべき姿」をお伝えしたい。総合人事コンサルティングのフォー・ノーツ株式会社は、代表取締役社長・西尾太の著書『この1冊ですべてわかる 人事制度の基本』出版記念特別セミナー【聞いた後でジワジワくる‼西尾太の「地味な」人事の話】を2022年11月17日、TKP東京駅日本橋カンファレンスセンターにて開催いたしました。本記事は、このセミナーの内容を再構成・加筆をしてお届けします。第1回は、ジョブ型の失敗例を参考に人事の「考え方」の重要性についてお伝えします。
人員計画の策定は、人事担当者にとって非常に重要な職務です。的確な人事異動を実施することによって、社員の成長を促し、業績を上げる最大の仕掛けとなります。そこで検討したいのが、「自己申告制度」の導入です。自己申告制度は、エンゲージメントを高め、離職率を下げる効果も期待できます。
約70%の企業が副業を禁止していると言われています。
そもそも副業はなぜ禁止されているのでしょうか?
副業のメリット・デメリットや
これからかかせない”副業制度”導入に必要なポイントを説明します。
人手不足が深刻化する中、ますます重要になってきた採用活動。人が採れない原因は、採用方針にブレがあるからかもしれません。また採用できても早期離職に至るケースも増えています。求める人材像について、いま一度、確認してみることが大切です。今回は、「協調性/主体性」という観点で考えてみましょう。