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心と能力、あなたの会社ではどちらを重視しますか?

2025.02.26

採用に関する問題を解決していくためには、「自社が求める人材像」を明確にすることが必要です。今回は「心と能力」という観点に着目してみましょう。「心はきれいだけど、能力が低い人」と「心はきれいではないけれど、能力は高い人」、あなたの会社ではどちら採用しますか?

「心はきれいだけど能力が低い人」か「能力はあるけれど心はきれいではない人」か

私たちは多くの経営者や人事担当者の皆さんからご相談をいただきます。採用に関して特に多いのは、「いい人が採れない」という問題です。ただ「いい人」の定義は、企業によって異なるでしょう。「心と能力」は、それを明確にしていくための重要な要素の1つです。

「おい、西尾、心がきれいで能力が高い人は、うちみたいなベンチャーには応募してこない。お前は、心はきれいだけど能力が低い人と、能力はあるけれど心はきれいではない人、どっちを採用するんだ?」

人事担当者だった頃、社長から呼ばれて、このように聞かれたことがあります。
あなたの会社では、どちらを採用しますか?

私はしばらく考えてから答えました。「心のきれいな人ですかね」。当時の社長も「俺もそうだ。能力は高められるが、心はきれいにはならない」と話していました。しかし、別の経営者に同じ質問をしてみると、その人はこう言いました。

「うちは違います。能力の高い人を採ります。正社員として採用するコア人材は、会社のCPUですから。心は僕がきれいにします」

CPUとは、コンピュータにおける中心的な処理装置です。将来の経営層候補として採用する人材は、能力が高い者でなければ務まらない。向上心、責任感、新規事業への関心があり、ホスピタリティも持っている。さらに戦略的思考、ビジネスセンスを感じる人材を採用すると。また、社員には「エンジン」と「タイヤ」という2種類があると言っていました。

「コア人材は、自動車を動かすエンジンのようなもの。その他の社員は、交換可能なタイヤのようなもの。エンジンはそうではない。だから能力のある人を求めます」

議論することで「求める人材像」も「避けるべき人材像」も見えてくる

どちらが自社にとっての「いい人」なのか。心と能力、どちらを重視するのか。この問いに対する考え方は、会社や経営者によってそれぞれ違うでしょう。そもそも、心とはきれいになるものなのか、能力とは高まるものなのか、という問題もあります。ある社会福祉法人の理事長は、次のように言っていました。

「心がきれいな人は、能力も高まりますよ。心がきれいな人は、能力も磨くものなのです」

この問いに、正解はないのかもしれません。しかし、社内で話し合うことによって、自社が求める「いい人」がより明確になっていきます。私たちが提供している企業向けの人事担当者の学習プログラム『人事の学校』では、以下のような図を示して、それぞれの定義も含めて議論することを推奨しています。


「心がきれいとは、どのようなことを指すのか」「能力が高いとは、どのようなことを意味するのか」など、それぞれについて話し合うと、さまざまな意見が出てきます。

「能力がある人は、できない人の気持ちがわからない。そういう人材にマネジメントが務まる?」
「とはいえ、能力がない人材に管理職を任させるのはまずいでしょう?」
「そもそも能力とは、心がきれいとは、どのようなことを指すのでしょうか?」

このようなプロセスこそが、実は「求める人材像」を明確にするカギになるのです。経営と人事が話し合いながら自社の定義を定めていくことで、自社が欲しい人材像も、避けるべき人材像も見えてきます。

採用における「心のきれいさ」は、会社の理念に対する共感

企業の「人に対する考え方」は、会社によって異なります。人事ポリシーは、それぞれの企業の個性ともいえる「軸」となる考え方。心と能力については、次のようなポリシーがあり得るでしょう。

パワハラと指導の違い

項目 選択 コメント
A社 心/能力 心がきれいな人は、自ら努力していくので、能力は自然と高まる
B社 心/能力 能力 まずは能力。心は仕事をしながら、きれいにしていく
C社 心/能力 能力より心を重視。心さえきれいなら仕事は与えられる

心も能力も抽象的な言葉ですが、能力については自社の事業や職務でパフォーマンスを発揮できそうなスキルや経験を検証することで比較的定義しやすいかもしれません。一方、心のきれいさは、可視化することが困難です。私自身もその定義はわかりません。

ただ、採用における「心のきれいさ」とは、会社の理念に対する共感だと考えています。たとえ能力が高くても、会社の理念に共感していない人材を採用し昇進させると、経営者の想いと違う方向に会社を暴走させたり、会社の方針とはズレた施策を打って社員を混乱させたりするケースがあります。

昨今は「多様性」が重視されていますが、果たしてどこまで多様性を取り入れていくのかについては、企業によって考え方が異なるでしょう。その重要性は理解していても、多様性を重視した結果、社員の価値観がバラバラになれば、マネジメントや教育の難易度が上がります。

だからこそ「理念に共感した多様性」を重視している企業が多く見られます。「多様性は重視するが、目的意識は共通」という意味なのだと思います。

会社には、それぞれの価値観があります。その価値観に共感している人物こそが、その会社にとっての「心がきれいな人」であり「いい人」なのではないでしょうか。

心と能力、どちらを重視するのか。あなたの会社でもぜひ考えてみてください。経営者、役員、人事担当者などが話し合って確認・検証することによって、会社の「人」に対する考え方が整理され、求めている人材像がより明確になっていくはずです。

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