2024.05.20
ここ数年、「50代についての意見を聞かせてください」というご依頼が増えてきました。当連載もそうですし、『人事の超プロが教える 会社員 50歳からの生き残り戦略』(PHPビジネス新書)という本も出させていただきました。やはり中高年を対象とした黒字リストラや早期退職・希望退職を募る企業が増えているからでしょう。今回も「人事は中高年を実はこう見ている」というリクエストをいただきました。私は人事部時代、中高年の社員をどう見ていたのか。今回はこうしたテーマで、率直な意見や感想をお伝えしたいと思います。
ここ数年、「50代についての意見を聞かせてください」というご依頼が増えてきました。当連載もそうですし、『人事の超プロが教える 会社員 50歳からの生き残り戦略』(PHPビジネス新書)という本も出させていただきました。
やはり中高年を対象とした黒字リストラや早期退職・希望退職を募る企業が増えているからでしょう。今回も「人事は中高年を実はこう見ている」というリクエストをいただきました。私は人事部時代、中高年の社員をどう見ていたのか。今回はこうしたテーマで、率直な意見や感想をお伝えしたいと思います。
人事は中高年をどう見ているか。これ今でもそうですが、はっきり二分しています。「ありがたいなぁ」と思う中高年と「困ったなぁ」と思う中高年がいて、格差が激しいです。これは人事に限らず、弊社が行ったアンケート「50代社員に関する意識調査」(リンク先:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000073219.htm)でも以下のような意見が多く見られました。
「本当に凄いなって思う人と、その逆の人にはっきり分かれます」(20代・男性)
「優秀な人とそうでない人の差が大きい」(20代・女性)
「個人差が大きく、できる人は本当にできるが、そうでない人もいる」(30代・男性)
では、どのような中高年が「ありがたいなぁ」で、どのような中高年が「困ったなぁ」なのか、具体的に説明していきましょう。
「ありがたいなぁ」と思う中高年は、何かの相談をしたり、若手が困っているときに一定の解答を与えてくれる人です。私がいた会社では人事的なことで相談すると「西尾、そういうときはこうやってやるんだよ」「こういう風にやると意外とうまくいくぜ」と教えてくれる年配の管理職がいました。
また、部長さんなどの役職者に限らず、『踊る大捜査線』のいかりや長介さんみたいな現場叩き上げのかっこいい中高年の方々も「ありがたいなぁ」と思う方々でした。
私が新卒で入社した自動車メーカーの人事労務課では工場の職長さんみたいな人とやりとりすることが多く、「南極行ってきたよ、南極」と新人に対しても普通の目線で話してくれたり、「これはな、こうやっているんだよ」と仕事を教えてくれたり、「どうしたらいいと思う?」と対等に話してくれる、ありがたい中高年の方々がいました。
新人や若手に対してフラットに接してくれて、いろいろなことを教えてくれる。こういう中高年は、ありがたいですし、かっこいいです。
人事部長としてありがたかったのは、やはり本当に仕事ができる人、あるいは役職に見合った力を発揮してくれる人でした。役職に求められていることを理解し、しっかり実行してくれる。こういう人は、人事にとって本当にありがたかったです。
逆に「ちょっと困ったなぁ」と思う中高年は、会社が「こうやろうぜ」と決めたことをやってくれない人。管理職としての仕事を果たしていないのに偉そうにしている人。「あの人とあまり話したくなぁ」「なんかいつも文句ばっかり言っていて、いやだなぁ」と思ってしまう人、近寄りたくもない人。
こういう人が「困ったなぁ」と思う中高年でした。非協力的な態度や自身の責任を果たさない人は若手であっても「困ったなぁ」と思うことに変わりありませんが、やはり年配になるほど差が大きいです。すごい活躍をしている役員さんからお荷物社員まで、とても幅が広いため、そこはグラデーションで見ていました。
何歳であっても「あの人に相談に行こう」と思えて一定の解答を与えてくれる人はありがたいですし、そうじゃない人は困る。文句ばっかり垂れている人はダメです。
50代になったら、居酒屋で会社の文句を言うのはやめましょうね。そういう会社にしたのは、自分自身にも責任があるのです。たとえ役職者じゃなくても50代ということは30年も働いてきたのですから、会社がおかしくなった責任の一端は自分にもあると考えなくてはいけません。文句を言っている場合ではないのです。
居酒屋で会社の話をするにしても「こういうことをやったらいいと思うぜ」とか「俺はこんなことを役員に提案したらいいと思うんだよな」と前向きな話をしている中高年は、かっこいいです。上司や役員の文句ばかり言っている人は、かっこよくないです。そう思っていても言うな、です。若い人たちがいやになってしまいますから。
中高年に対する見方は、今後はよりシビアになっていくはずです。給与が高い中高年に対しては、特にそうなります。そこを厳しく見ているからこそ、多くの企業で早期退職や希望退職が導入され、45歳以上の中高年がターゲットになっているのです。
中高年はできる人とそうでない人の差が激しいため、「キツイなぁ…」という人に対しては本当に厳しく見ていくでしょうし、会社は今後、評価も下げていくと思います。給料も上がらないと思いますし、下がることもあり得るでしょう。
なぜなら会社はイキのいい若手の給料を上げてあげたいからです。その給与原資はどこから来るかといえば、働かない中高年になります。イキのいい若手に辞められたら困るので、イキの悪い中高年が黒字リストラのターゲットになっているわけです。
イキのいい中高年は、会社の中核を担っているはずですからありがたい存在ですが、イキの悪い中高年は、人事にとっていちばん重たい存在です。自分はイキの悪い中高年になっていないか、自身の働き方を改めて振り返ってみてください。
私が若手だった頃、困っていると「だったら、あの人に相談してみな。あいつがOK出したら、たぶんOKだぜ」と言ってくれる人や「俺が電話してやるよ。今、人事の西尾が来てるんだけど、ちょっと困ってるみたいだから話を聞いてやってくんない?」と助けてくれる、会社の生き字引のような、ありがたい中高年の方々がいました。
50代になったら、こういう存在を目指しましょう。人事も年齢だけで中高年を見ているわけではありません。組織のグラデーションの中で自分はどこに当てはまるのだろうか、自部署はもちろん他部署からも「ありがたい存在」でいるのだろうか。ぜひそんな風に自分に問いかけてみてください。
会社の中には中高年に対して「ありがたいなぁ」「さすがだなぁ」と見ている人も少なくありません。そういう部分を磨いていきましょう。将来、転職や独立をする場合でも、豊富な経験に基づく知識や判断能力、若手を助ける力は役に立つはずですから。
次回に続く
人事という職に就いたならば、読む“義務”がある1冊
成果主義、職務主義、年俸制、人事部廃止… 90年代から変わらぬ「人事」の構造、変わらぬ平均給与額が、日本を世界トップクラスの「社員が会社を信頼しない国」へと導いたのです。
なぜ変革が進まないのか、その背後に潜む「考え方」の欠如とは何でしょうか?
中学時代に習ったこと、覚えてますか?
多くの人にとっては、すべての勉強の基礎になっている大事な「当たり前」のことですが、思い出せと言われても思い出せる方は少ないでしょう。
この「この一冊ですべてわかる 人事制度の基本」には、人事の当たり前が詰まっています。
ー「なぜ、あの人が?」
なぜ多くの企業で「評価基準」が曖昧になっているのでしょうか。
どうすれば給与が上がるのでしょうか。
11,000人超の人事担当者から絶大な支持を得るコンサルタントが、今まで9割の会社が明かさなかった「絶対的な指標」を初公開!
テレワーク時代には「ジョブ型」に留まらず、「超ジョブ型人事」が不可欠。
その一番の理由は、テレワークをはじめとするこれからの働き方には「監視しない事が重要であるから」です。
人事の“必須科目”を押さえる
プロの人事力
次のステージに向けて成長するためのキホン
人事担当者に必要な知識・学び方、仕事に対する心構え、業務との向き合い方、さらには人事マネージャー、人事部長へとキャリアアップするために必要な能力・スキルを一挙公開
40代・50代になって、「専門職を極めていくか」「社内マネジメントに積極的に関わるか」といった今後の選択について悩んでいる人は多いのではないでしょうか?この二者択一は、リストラに関わる非常に重要な問題です。人事もまさにそこを見ています。40〜50代で何らかの専門性を持っていても、同程度の専門性を持っている20〜30代の人材がいるなら、会社はそちらを選びます。
「今の部署が辛い……中高年社員でも部署異動を望むのは現実的にありなのでしょうか?」このようなご相談をいただきました。今回はこの質問にお答えしたいと思います。
「ベテランはリストラの対象になりませんか?」ある人からそう聞かれました。今回は、この質問に答えてみたいと思います。ベテランとは、基本的には褒め言葉です。「あの人、ベテランだよね」「さすがだよね」と言われるのは、技術・技能に長けていて、知識も豊富で信頼が置ける人ですよね。
2021年は、黒字リストラが2020年の1.7倍に増えました。日本たばこ産業、KNT-CTホールディングス、LIXIL、オリンパス、アステラス製薬、藤田観光、博報堂などの上場企業を中心に希望退職・早期退職が実施され、1万人以上が退職に至っています。今後もさらに増えていくかもしれません。
私たち50代がリストラ時代を生き抜くために避けて通れないポイントは、若い世代から「老害」と思われないことです。 「50代はまだ老人じゃない」と思われるかもしれませんが、年齢は関係ありません。老害とは、自分より若い世代に迷惑をかけること。 30代であっても、20代に迷惑をかけていれば「老害」と呼ばれます。
東京商工リサーチによると、2021年に希望退職を募った上場企業は80社以上。上場企業の希望・早期退職募集は2019年以降、3年連続で1万人を突破。2021年の募集者数は判明しているだけでも1万5000人を超えています。 コロナ禍によって経営が悪化した企業もありますが、大手企業の多くは黒字経営にもかかわらず希望退職・早期退職という名目の大規模なリストラに踏み切っています。なぜこれほどリストラ増えているのか。いま一度、その背景を理解しておきましょう。
コロナ禍前後からリストラの対象となっているのは、おもに45歳以上の中高年です。しかし40代、50代になったからといって、誰もがリストラされるわけではありません。歳を取っても会社で生き残れる人には、3つの特徴があります。 1つは、マネジメント力があること。マネジメント力には、「タスクマネジメント」と「ヒューマンマネジメント」の2つのスキルがあり、どちらも重要です。
会社はあなたを不要と判断したとき、どんな動きをするのか。前回は中高年のリストラ回避法についてお伝えしましたが、今回はこのテーマについてもう少し深掘りしてみましょう。 この人は給与に見合った働きをしていない、このまま会社にいてもらっては困る。会社がそう判断したときの最初の動きは、「解任」と「異動」です。