2024.04.10
「日立 全社員をジョブ型に」というニュースが日経新聞の1面トップになっていました。日立製作所は今年7月にも事前に職務の内容を明確にし、それに沿う人材を器用する「ジョブ型雇用」を本体の全社員に広げるということです。ジョブ型雇用、テレワーク、ワーケーション、週休3日制など、働き方の多様化が急速に進み、戸惑いを感じている人も多いでしょう。ですが、働き方が変わっても、大事なことは変わりません。
「日立 全社員をジョブ型に」というニュースが日経新聞の1面トップになっていました。日立製作所は今年7月にも事前に職務の内容を明確にし、それに沿う人材を器用する「ジョブ型雇用」を本体の全社員に広げるということです。
ジョブ型雇用、テレワーク、ワーケーション、週休3日制など、働き方の多様化が急速に進み、戸惑いを感じている人も多いでしょう。
ですが、働き方が変わっても、大事なことは変わりません。それは自分の「ミッション」を明確にし、それを遂行する目標を達成すること。
これができる人は、時代の変化に左右されることなく、会社から必要とされ続けるでしょう。ジョブ型でも成果主義でもテレワークでもワーケーションでも全部一緒です。
たとえばテレワークは社員の働く姿が見えないので人材管理が難しいと言われていますが、ミッションと目標が明確であれば、過程を管理する必要なんてありません。
どんな仕事にも「ミッション」と、それを遂行したことを確認する「目標」があります。そこが曖昧だから、上司が部下のパソコンの稼働状況を監視したり、チャットツールで頻繁に連絡したりしなくてはいけないのです。
ミッションと目標が明確になっていれば、上司は進捗を管理し、成果を確認するだけでよくなり、部下も自発的に成長できます。今後ますます必要とされていくのは、このような働き方ができるセルフマネジメントができる人材です。
自らミッションを示し、目標設定を行い、上司の許可を得て、目標を達成し、成果を出す。どんなに働き方が変化しても、これができる人はリストラの対象になりません。
ミッションと目標設定によるセルフマネジメントは、今に始まったことではなく、これまでも「目標管理制度(MBO)」として普通に求められてきたものです。
MBOは経済学者のドラッカーが1950年代に提唱した概念ですから、それこそ70年以上も昔から重要とされてきましたが、これができる人は現在でも多くありません。
私は仕事柄、多くの企業の目標設定会議や管理職研修に出席させていただいているのですが、そこでよく見かけるのは、「ミッションを明確にできない」「目標の設定基準(どうなったら目標達成といえるのか)を明確にできない」という光景です。
「あなたのミッションは何ですか?」
この質問にあなたは答えられますか。先を読み進める前に、ご自身でも考えてみてください。ミッションとは、自分が果たすべき使命です。あなたは会社でどのような価値を提供する役割を担っているのでしょうか?
実は目標設定会議でも管理職研修でも、この質問に答えられる人はほぼいません。あるいは、ちょっとズレていることが多いです。ミッションは、次のように表現します。
「(〇〇に対して)〇〇をより〇〇する」
ミッションとは使命です。自分の当期メインの役割や担当、創出する価値を表します。誰に対してどんな価値を提供するのか。まずはその相手を考えてみてください。お客様、部下、上司、経営陣、株主…あなたが価値を提供する相手は誰ですか?
その相手に対して、どんな価値を提供するのか、より喜んでもらうのか。それを簡潔に表したものが、ミッションです。「お客様により喜んでもらえる商品を提供します」でも「社員に対してより働きやすい環境を提供する」でもいいのです。
こうしたミッションをちゃんと言えない人がとても多くいます。若手ならまだしも50代の管理職でも少なくありません、これは非常にまずい状態です。組織における自身のミッションを認識できていないことは、リストラの要因にもなり得ます。
ミッションは、自分自身で考えることが重要です。「上に言われました」ではダメです。上司に示されたミッションがあっても、それを具体化し、自らやるべきことを示す。そうすることで、自分自身の存在価値もアピールできます。
そのうえで上司の承認を得て、行動に移していくわけですが、そのミッションに対して「いやいや、違うでしょう」とNGが出てしまうケースも少なくありません。
よくある例としては、「売上を上げる」というミッションです。売上を上げることは、もちろん大事ですが、それだけでは不十分。
何を持って売上を上げるのか。お客様との関係をより深めるのか、より喜んでもらえるサービスを提供するのか。「より〇〇する」の部分を具体化することが重要です。
また、総務や経理など顧客との接点が少ない職種の人からは「我々にはお客様がいないので価値を提供する相手がいないんですよ」という話をよく聞きます。価値を提供する相手は、エンドユーザーとは限りません。上司や部下、経営者でもいいのです。
「経営者により早く経営数値を提供し経営判断をしやすくする」
たとえば経理だったら、価値を提供する相手を経営者にして、このようなミッションを作ればいいのです。お給料をもらっている以上、必ず価値を提供している相手がいます。その相手により多くの価値を提供することを示すのです。
自分は誰にどんな価値を提供して、お給料をもらっているのか。そのお給料に見合った価値を提供しているのか。改めて考えてみてください。
ミッションを自分で考えることが重要な理由は、もうひとつあります。上から言われたことを「そうですか、わかりました」とこなすだけでは、モチベーションが上がりません。自分の言葉にしていなければ、腹落ちしていないので身も入りません。
結果、パフォーマンスも発揮できず、評価もされません。それでは本人もつまらないし、つまらない人の周りのいる人たちは、もっとつまらないです。
私たち50代は、若い世代から見たら、そもそもつまらない存在なのです。つまらない人が楽しそうに仕事をしていたら、まだ救いがありますが、つまらない人がつまらなそうに仕事をしていたら、もはや周囲の迷惑でしかありません。
つまらない世代である私たち50代は、少なくとも楽しそうに仕事をするべきです。そのためにも「これをやりたい」「これをやるべき」と思えることを自分自身で考え、ミッション=使命とすることが必要なのではないでしょうか。
50代になると体力の問題があったり、若手がどんどん成績を伸ばしてきて、新たな目標を見出しにくい場合もあるでしょう。そういう状況に陥っている人は、部下や若手の指導にミッションをシフトするのも生き残りの術になります。
会社が50代に期待していることも後進の育成です。20年、30年かけて培ってきたスキルや経験を継承し、より多くの人材を育てる。これも立派なミッションです。
たとえば営業だったら、誰でも一定の業績をあげられる法則を伝える。有価証券やバランスシートや有価証券の見方を教える。自身が学んできたことを体系化し、マニュアルを作れば、会社の財産になり、自分自身の価値も上がります。
自分は今後、何を成し遂げるべきなのか、誰にどんな価値を提供するのか。どのようなミッションを実現していくのか。ぜひ考えてみてください。
次回につづく
人事という職に就いたならば、読む“義務”がある1冊
成果主義、職務主義、年俸制、人事部廃止… 90年代から変わらぬ「人事」の構造、変わらぬ平均給与額が、日本を世界トップクラスの「社員が会社を信頼しない国」へと導いたのです。
なぜ変革が進まないのか、その背後に潜む「考え方」の欠如とは何でしょうか?
中学時代に習ったこと、覚えてますか?
多くの人にとっては、すべての勉強の基礎になっている大事な「当たり前」のことですが、思い出せと言われても思い出せる方は少ないでしょう。
この「この一冊ですべてわかる 人事制度の基本」には、人事の当たり前が詰まっています。
ー「なぜ、あの人が?」
なぜ多くの企業で「評価基準」が曖昧になっているのでしょうか。
どうすれば給与が上がるのでしょうか。
11,000人超の人事担当者から絶大な支持を得るコンサルタントが、今まで9割の会社が明かさなかった「絶対的な指標」を初公開!
テレワーク時代には「ジョブ型」に留まらず、「超ジョブ型人事」が不可欠。
その一番の理由は、テレワークをはじめとするこれからの働き方には「監視しない事が重要であるから」です。
人事の“必須科目”を押さえる
プロの人事力
次のステージに向けて成長するためのキホン
人事担当者に必要な知識・学び方、仕事に対する心構え、業務との向き合い方、さらには人事マネージャー、人事部長へとキャリアアップするために必要な能力・スキルを一挙公開
タレントの高田純次さんが、以前にテレビでこんな話をされていました。「年を取ってやっちゃいけないのは、説教と昔話と自慢話」その通りでしょうね。若い人たちからしたら、説教・昔話・自慢話は聞きたくないはずです。言いたいことがあっても、そこはグッと我慢する。それが私たち50代に求められている基本的なスタンスでしょう。
50代になってくると、若い社員との世代間ギャップを感じることが増えてきます。世間話でテレビの話をすると、まったく通じないことも多く、「テレビ見ないんで」と言われて愕然としてしまったりします。これは私だけではないと思います。職場で世代間ギャップを感じている中高年の方は多いのではないでしょうか。そこで今回は、「世代間ギャップを超える中高年の技」についてお伝えしたいと思います。
ここ数年、「50代についての意見を聞かせてください」というご依頼が増えてきました。当連載もそうですし、『人事の超プロが教える 会社員 50歳からの生き残り戦略』(PHPビジネス新書)という本も出させていただきました。やはり中高年を対象とした黒字リストラや早期退職・希望退職を募る企業が増えているからでしょう。今回も「人事は中高年を実はこう見ている」というリクエストをいただきました。私は人事部時代、中高年の社員をどう見ていたのか。今回はこうしたテーマで、率直な意見や感想をお伝えしたいと思います。
東京商工リサーチによると、2021年に希望退職を募った上場企業は80社以上。上場企業の希望・早期退職募集は2019年以降、3年連続で1万人を突破。2021年の募集者数は判明しているだけでも1万5000人を超えています。 コロナ禍によって経営が悪化した企業もありますが、大手企業の多くは黒字経営にもかかわらず希望退職・早期退職という名目の大規模なリストラに踏み切っています。なぜこれほどリストラ増えているのか。いま一度、その背景を理解しておきましょう。
50代になると、地位の格差、立場の格差などが開いてきます。しかし役職の有無や、組織やチームの規模を問わず、リーダーシップが求められるようになります。 では、リーダーに求められる資質とは、どのようなものでしょうか。 私は企業のリーダー研修プログラムで「目指すべき人材像」を5つのポイントに分けて紹介しています。OK例とNG例を交えながら説明しましょう。
私たち50代がリストラ時代を生き抜くために避けて通れないポイントは、若い世代から「老害」と思われないことです。 「50代はまだ老人じゃない」と思われるかもしれませんが、年齢は関係ありません。老害とは、自分より若い世代に迷惑をかけること。 30代であっても、20代に迷惑をかけていれば「老害」と呼ばれます。
40代・50代になっても、ビジネスパーソンは学び続けることが重要です。今回は、40~50代からでも十分学べる「リストラ回避」のためのスキルをお伝えします。まずひとつは、「ロジカルシンキング」です。ロジカルシンキングとは、物事を体系的に整理し筋道を立て、論理的に分析する思考法のこと。管理職研修でもよくお伝えしているのですが、管理職の役割は全体像を見ること。全体を見たうえで、何が大事で何は捨てても良いのかを考える、物事を俯瞰的に捉えるスキルが必要となります。
会社はあなたを不要と判断したとき、どんな動きをするのか。前回は中高年のリストラ回避法についてお伝えしましたが、今回はこのテーマについてもう少し深掘りしてみましょう。 この人は給与に見合った働きをしていない、このまま会社にいてもらっては困る。会社がそう判断したときの最初の動きは、「解任」と「異動」です。