2024.01.15
50代になると、地位の格差、立場の格差などが開いてきます。しかし役職の有無や、組織やチームの規模を問わず、リーダーシップが求められるようになります。 では、リーダーに求められる資質とは、どのようなものでしょうか。 私は企業のリーダー研修プログラムで「目指すべき人材像」を5つのポイントに分けて紹介しています。OK例とNG例を交えながら説明しましょう。
50代になると、地位の格差、立場の格差などが開いてきます。しかし役職の有無や、組織やチームの規模を問わず、リーダーシップが求められるようになります。
では、リーダーに求められる資質とは、どのようなものでしょうか。
私は企業のリーダー研修プログラムで「目指すべき人材像」を5つのポイントに分けて紹介しています。OK例とNG例を交えながら説明しましょう。
①指向性
NG 明確な将来への志向が持てていない
OK この会社を担っていくという明確な志向を持つ
部長や役員クラスは、組織の3年後、5年後の姿を見据え、戦略策定を行うことが重要な任務です。中長期的な視野を持ち、多角的な視点を用いて、事業のビジョンを明示する。数年後のあるべき姿を描き、示す。部下やメンバーに方針を示し、組織の向かう方向を明らかにする。戦略を具体化し、実行の責任を負う。
部長や役員などの役職についていなくても、組織やチームの目標を設定し、正しく周囲に働きかけ、個人目標にブレイクダウンし、個々の適切な目標設定をさせることは、50代における重要な任務です。
自身が明確な志向を持っていなければ、部下やメンバーを率いていくことはできません。3年後、5年後に、自分はどうなっていたいのか。どのような組織やチームにしていきたいのか。キャリアビジョン、ライフビジョンを明確にすることが重要です。
②意志
NG 「会社は私にどうして欲しいのか」を求める
OK 自分事と捉え、ゴールと貢献を探す
NG 失敗する(できない)から無難に維持したい
OK 変化の必要性を現実的に体感し、あらゆるチャンスとリスクを想定する
NG 影響力は組織上の部下に対して発揮する
OK 上司・他部署・他社など、領域の外に、より影響を与えようとする
50代になっても、主体的な行動をとらず、人からの指示を待っている。目標と現状のギャップや問題点を把握し、改善しようと務めていない。社内外のキーパーソンとの人脈を築こうとせず、内向きの発想しかしない。
このような50代は、リストラされてしまいます。
指示を持たず「こうしたいのですが、いいですか」と上司や周囲に提案と確認を行い、自ら行動する。問題の解決案を複数提案し、各々のメリット・デメリットや予想される結果を示す。社内外の一定以上の役職者や関連する業界の社内外ネットワークを築き、多彩な人脈の中からビジネスの可能性を探る。
リストラされない人材になるためには、こうした指向性を持つことが重要です。
③考え方
NG 目の前の仕事に注力し、中長期的に事業を見る視点が形成されていない
OK 中長期的視点で本当の課題を探る
NG 課題を明確に決められない
OK 仮説を立てて課題をセットする
NG 自身の立場での意見に終始する
OK 立場を変えて多角的に考える
NG 「トレードオフ」「ケースバイケース」で止まる
OK 優先順位をつける。ビジネスプロセスの体系化を行う
NG 「理解してもらえない」と考えている
OK 理解してもらえないのは自分のせいだと考える。ロジカルで説得力がある
NG 「自分では解決できない」「他者がやるべきである」と考えている
OK 自らが周囲を巻き込んでいく必要性を感じている
NG例は、リーダーとして相応しくありません。OK例は経営陣になれるほど高度なものですが、リーダーを務めるなら、やはり持っておきたいスキルです。
例えば、多くの人は「トレードオフ」「ケースバイケース」の発想で終わってしまいます。「それをやるのならこれはできません」といったトレードオフではなく、優先順位をつけて物事を提案する。ケースバイケースではなく、自分が培ってきたマネジメント力や専門性を体系化し、普遍的な仕組みに落とし込み、成功する道筋を示す。
多角的に物事を見て、ビジネスプロセスを体系化し、自ら周囲を巻き込んで実行する。
リーダーに求められているのは、こうした考え方です。この6項目について、自分はどうなのか、振り返ってみてください。
④コンピテンシー
NG 戦略策定・変革の視点が弱い
OK ビジョン策定・戦略策定・変革を自ら行い、リードする
NG 目標設定・計画立案・進捗管理が甘い
OK 明確な目標設定・チームの計画立案・進捗管理により目標達成に信頼性がある
NG 傾聴力・プレゼンテーション力が我流である
OK 積極的傾聴、チームビルディング力、体系化したスキルとしてプレゼンテーション力を持ち、説得力がある
課長にはなれても、部長にはなれない。それが多くの50代の実情です。その違いは、「ビジョン」や「戦略」の策定ができるか、「変革力」があるかです。
「ビジョン」とは、中長期的な視野を持ち、数年後のあるべき姿を具体的に示すこと。「戦略」とは、ビジョンを実現するための戦術や道筋です。
部長になるには、一定以上の経験・知識、戦略フレームなどの知識による事業戦略、組織戦略、人事戦略、財務戦略のいずれかに長けている必要があります。高度な勉強が必要で、そう簡単にはできない領域です。だからこそ、こうした高度な知識やスキルを身につけている人は希少価値が高く、年収1000万以上を望むことができます。
「変革」とは、伝統や慣習、成功体験にとらわれないアイデアを出し、組織に提案し、承認を得て、実行に移し、実績に結びつけること。新たな価値を創造するためには、たとえ抵抗にあっても、反対勢力に屈しない強さと覚悟が必要です。
ビジョンや戦略の策定、変革に必要な戦略フレームもチームビルディングも、我流では限界があります。傾聴力もロジカルシンキングもプレゼンテーション能力も体系化されています。こうしたスキルやツールを学び、使い、ビジネスに活かすことが重要です。
⑤知識・スキル
NG 全体として汎用的なビジネス知識が不足している
OK 経営者が使うビジネス知識を備えており、それを前提とした会話ができる
NG 用語、その意味、概念を知らない。従って、実際のビジネスで活用できない
OK 必要な場面でビジネス知識・スキル・ツールを活用できる
NG 知識の不足は周りを見渡しても普通であり、公言しても恥ずかしくない
OK 自分の知識・スキルの不足を認識し、獲得しようとする
NG わからないことは、わからないまま諦める
OK わからないことはパフォーマンスを下げていることを知り、すぐに学ぶ
NGは、多くの企業で見られる事例です。例えば「知識の不足は周りを見渡しても普通であり、公言しても恥ずかしくない」は、伝統的な企業ではよくあります。
知識・スキルが不足している人に共通しているのは、新聞や本を読まないこと。若い世代はもちろん、中高年でも新聞を読んでいない人が多いです。どの企業でも活躍しているリーダーは、常にさまざまなニュースや情報を吸収して勉強しています。
40〜50代になると固有名詞が覚えられなくなり、物忘れが多くなります。そのため脳が衰えたと考えがちですが、実はそうではありません。
人工知能研究者の黒川伊保子さんによると、脳の本番は56歳から始まるといいます。脳は成熟期を迎え、不要なものを捨てているだけなのです。
物事を吸収して覚える機能は20代、それを組み立て優先順位づけなどができるのが30代、いらないものを捨て出すのが40代、物事の本質や全体像が見えるようになるのは56歳。50代の脳は、仕事の本質を見極めるには、とても適した状態なのです。
たとえ50代になっても、勉強を始めるのに遅いということはありません。今からでも学び直し、吸収し、ビジネスに活かしていきましょう。
次回につづく
人事という職に就いたならば、読む“義務”がある1冊
成果主義、職務主義、年俸制、人事部廃止… 90年代から変わらぬ「人事」の構造、変わらぬ平均給与額が、日本を世界トップクラスの「社員が会社を信頼しない国」へと導いたのです。
なぜ変革が進まないのか、その背後に潜む「考え方」の欠如とは何でしょうか?
中学時代に習ったこと、覚えてますか?
多くの人にとっては、すべての勉強の基礎になっている大事な「当たり前」のことですが、思い出せと言われても思い出せる方は少ないでしょう。
この「この一冊ですべてわかる 人事制度の基本」には、人事の当たり前が詰まっています。
ー「なぜ、あの人が?」
なぜ多くの企業で「評価基準」が曖昧になっているのでしょうか。
どうすれば給与が上がるのでしょうか。
11,000人超の人事担当者から絶大な支持を得るコンサルタントが、今まで9割の会社が明かさなかった「絶対的な指標」を初公開!
テレワーク時代には「ジョブ型」に留まらず、「超ジョブ型人事」が不可欠。
その一番の理由は、テレワークをはじめとするこれからの働き方には「監視しない事が重要であるから」です。
人事の“必須科目”を押さえる
プロの人事力
次のステージに向けて成長するためのキホン
人事担当者に必要な知識・学び方、仕事に対する心構え、業務との向き合い方、さらには人事マネージャー、人事部長へとキャリアアップするために必要な能力・スキルを一挙公開
私たち50代がリストラ時代を生き抜くために避けて通れないポイントは、若い世代から「老害」と思われないことです。 「50代はまだ老人じゃない」と思われるかもしれませんが、年齢は関係ありません。老害とは、自分より若い世代に迷惑をかけること。 30代であっても、20代に迷惑をかけていれば「老害」と呼ばれます。
50代のリストラ対策のひとつは、若手の指導です。「あの人、若手を育てるのがうまいよね」「あの人に預ければ、育ててくれるよね」と社内で評判が立つのは、リストラを防ぐ有効な手立てとなります。
「年下上司と、どのように付き合ったらいいのでしょうか?」50代の方々から、このようなご相談をよくいただきます。かつての部下や後輩が出世して自分の上司になってしまう。たしかに悩ましい問題ですよね。そこで今回は「年下上司との上手な付き合い方」について、お伝えしたいと思います。
50代になってくると、若い社員との世代間ギャップを感じることが増えてきます。世間話でテレビの話をすると、まったく通じないことも多く、「テレビ見ないんで」と言われて愕然としてしまったりします。これは私だけではないと思います。職場で世代間ギャップを感じている中高年の方は多いのではないでしょうか。そこで今回は、「世代間ギャップを超える中高年の技」についてお伝えしたいと思います。
年収とパフォーマンスが一致していない人は要注意 コロナ禍以前から増えてきた、45歳以上の早期退職・希望退職という名のリストラ。その候補となっているのは、パフォーマンスより年収が高い人です。それはどういうことなのか、詳しく説明しましょう。
40代・50代になって、「専門職を極めていくか」「社内マネジメントに積極的に関わるか」といった今後の選択について悩んでいる人は多いのではないでしょうか?この二者択一は、リストラに関わる非常に重要な問題です。人事もまさにそこを見ています。40〜50代で何らかの専門性を持っていても、同程度の専門性を持っている20〜30代の人材がいるなら、会社はそちらを選びます。
40代・50代になっても、ビジネスパーソンは学び続けることが重要です。今回は、40~50代からでも十分学べる「リストラ回避」のためのスキルをお伝えします。まずひとつは、「ロジカルシンキング」です。ロジカルシンキングとは、物事を体系的に整理し筋道を立て、論理的に分析する思考法のこと。管理職研修でもよくお伝えしているのですが、管理職の役割は全体像を見ること。全体を見たうえで、何が大事で何は捨てても良いのかを考える、物事を俯瞰的に捉えるスキルが必要となります。
新連載「人事の超プロが明かす、リストラ時代の生き残り戦略」 2021年4月1日、高年齢者雇用安定法が改正されました。これによって「70歳までの就業機会の確保」が企業の努力義務になりました。 少子高齢化が急速に進展し人口が減少する中で、経済社会の活力を維持するため、働く意欲がある高年齢者がその能力を十分に発揮できるよう、高年齢者が活躍できる環境の整備を目的として、「高年齢者の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)」の一部が改正され、令和3年4月1日から施行されています。