2023.02.16
総合人事コンサルティングのフォー・ノーツ株式会社は、代表取締役社長・西尾太の著書『この1冊ですべてわかる 人事制度の基本』出版記念特別セミナー【聞いた後でジワジワくる‼西尾太の「地味な」人事の話】を2022年11月17日、TKP東京駅日本橋カンファレンスセンターにて開催いたしました。本記事は、このセミナーの内容を再構成・加筆をしてお届けしています。今回のテーマは、人事ポリシー。人事制度に関する「考え方」を明確にする理由について説明します。
人事制度とは、「道具」です。ゴルフも「自分に合った道具」は大切ですよね。僕も道具を変えたら、飛距離が伸び、方向が安定しました。ミスも出ますけどね。しかし、それよりも大切なことがあります。それは、ゴルフにどう向き合うか、です。
人事制度も、どう向き合うか、どのように考えるかが大事になります。人事は「やり方」より「考え方」ということで、ここからは人事制度設計に最も大切な「人事ポリシー」をご確認いただきます。
人事ポリシーとは、「企業の、そこで働く人に対する考え方」のことです。僕は人事のプロジェクトに入るとき、必ずここから話を伺います。これこそが「うちの会社はこう考える」という、企業の個性をまとめていただくもの、整理していただくものになります。
そもそも人事の目的というのは、同じ方向を目指す人を集め、「一緒に同じ方向を向いて頑張っていこうぜ」と促し、企業とそこで働く人のベクトル(方向)を合致させていくことです。
企業のベクトルは、ミッション、ビジョン、バリュー、あるいは、戦略や経営計画として示されます。これらを総称して「経営理念」ともいいます。一方、個人のベクトルは、キャリアビジョンとそこに向かうキャリアプラン、ライフビジョンとそこに向かうライフプランを指します。
それぞれのベクトルは、人によって違うでしょうし、雇用形態や契約形態でも異なり、会社によっても考え方の差があるかもしれません。
ですが、だからこそ、企業とそこで働く人のベクトルを「できる限り合一にしていくこと」が必要になってきます。採用にしても、配置にしても、育成にしても、企業が目指す方向を一緒に目指していく人を見つけ、活躍してもらう方向も、企業が目指す方向を実現するためのものであるはずです。
人事の領域とは、このようになっています。人事制度や人事管理、人材フロー、人材育成があり、これらをどのように考え、企画し、運用するのか、と指針を示すものが経営理念です。人事の目的の1つは、「理念の実現」ですから、これらは全部繋がっています。
経営理念は、企業がどのような価値を提供したいのかを述べており、人事ポリシーは「それをやるために、うちの会社は、人に対してこういうふうに考えているよ」ということを示すものになります。
人事の領域には、労働法規や雇用情勢といった汎用的で全国共通の部分から、経営理念や経営戦略、人事の諸制度といった自社オリジナリティの部分まで幅広い業務があります。
人事ポリシーは、人事領域の最上位である「自社オリジナリティ」の部分にあたります。人事ポリシーは、創業者の想い、業態、企業ステージによって異なるため、御社の大切な個性となるもの。これは会社によって全然違いますので、まずはここの整理から始めてみてください。
新たな人事制度を導入すると、いろいろな方面から疑問やクレームが来きます。経営陣から来るかもしれませんし、管理職から来るかもしれせんし、社員個々人から来るかもしれません。
人事制度は、「社員全員が幸せになる」とは限らないことが多いです。低評価者にとっては、不都合があるかもしれません。高評価者が期待通りに処遇を得られなければ、そこからクレームが来るかもしれません。運用の負荷によっては、管理職や社員からクレームが来るかもしれません。制度導入における成果を見て、経営陣から疑問が呈されるかもしれません。
ですが、人事担当者の皆さんは「それもそうですね」と簡単に応じてはならないのです。なぜなら毅然と対応する姿勢を見せないと、社員からの信頼を失ってしまいます。クレームが来たときは、「これは、このような考え方で導入したものです」と、きっぱり説明しなくてはならないのです。
そのためにも「自社がどのような考え方を持っているのか」という、人事施策のよりどころとなる指針をあらかじめ明確にしておく必要があります。これが人事ポリシーの重要な役割なのです。
人事ポリシーとは、人事的施策を企画・実施していくにあたって、そのよりどころとして、常に立ち返る考え方です。だからこそ、それぞれの人事施策の「一貫性」と「継続性」を確保できます。
会社の人事において、「一貫性」は極めて重要です。人によって極端に考えを変えてしまったり、場当たり的な対応をして後で不整合を起こしたりすることが最も社員からの信頼を失う行為になります。変えるなら変えるなりのポリシーがあるなら話は別ですが、人事が社員から信頼されなければ、会社も信頼されなくなります。その結果、人事部門は経営からの信頼も失ってしまいます。
人事ポリシーは、一度策定・確認したからといって変更できないものではありません。経営者の皆様には、「一貫性なんてずっと担保できないよ」と考える方もいらっしゃるでしょう。その通りだと思います。会社は変わります。企業ステージによって変更することも当然あります。
ただし、それは「例外」なのか「変化」なのかを認識しておかなくてはいけません。「変えるべきもの」と「変えてはいけないもの」も常に留意しておかなくてはいけません。
「一貫性」とは、同じ考え方に基づいて各施策が企画され、運用されていること。「継続性」とは、意図して変えていること。変えるべきと、変えてはいけないことが明確に整理されていることです。
人事の皆さんなら経験があると思いますが、人事は定性的な領域が多く、いろいろな人がいろいろな考え方や解釈を持ち込んできます。その最たる人が経営者でしょう。経営者の視点は幅広く、またネットワークが広いので、社会や社外の様々な情報を持ってきては、人事部門にいろいろなことをいってくださいます。それが人事ポリシーから逸脱していることもあるでしょう。
そうした指示を実施する場合も、そのときだけの「例外」として行うのか、未来永劫それを行うのかを確認する必要があります。「例外」で対応することはよくあります。しかし「将来的にも」ということであれば、それは人事ポリシーの変更となります。その確認のプロセスが大切なのです。
「継続性」とは、人事ポリシーが変更されるときに、「それまで」と「これから」が「どう変わったのか」が認識されているということ。「変わった」ことが認識されていないと混乱を招きます。
たとえば、新卒採用は1年半とか2年前から準備をしますよね。それをやっている間に「うちの考え方は変わった」「求める人材も変わった」と突然いわれても困るわけです。
人事は急に止まれません。採用にしても、制度にしても、配置にしても、教育にしても「うちの会社の考え方はこうなんだ」ということをしっかり整理して、経営と共有していただきたいと思います。
では、人事ポリシーとは、どのように作るのでしょうか。人事ポリシーは、人事部門だけで考えるものではありません。人事ポリシーを明確にする際は、経営者とのコミュニケーションが必須です。
僕は人事業務設計のコンサルティングを始める際に、必ず経営者と人事ポリシーの確認をしています。5時間程度の時間をいただいてヒアリングをしていきますが、経営者の皆さんから「頭の中が整理できた」「自分がどう考えているのか明確になった」と評価いただくことも多々あります。
人事ポリシーを明確化するときは、以下のようなフレームを使います。フレームは多岐に渡りますが、今回は人事業務の設計・運用に関する項目のみご紹介します。
このフレームは選択を伴いますが、必ずしもどちらかに決めるというものではありません。各種のフレームをツールとして、経営者に選択をしていただきながら、考えを引き出していくとやりやすいです。経営者の選択を受けて、明文化し、経営の承認を受けることになります。また、人事部内の共通の考え方として持っておくことにも価値があります。
人事ポリシー策定のフレームは、「これだけ」「これがすべて」というものではないので、上記を参考にしていただいて各社において工夫してみてください。
それぞれのフレームごとに経営者と議論することはとても意義のあることであり、経営者が人事ポリシーを明確に意識するきっかけにもなります。
人事という職に就いたならば、読む“義務”がある1冊
成果主義、職務主義、年俸制、人事部廃止… 90年代から変わらぬ「人事」の構造、変わらぬ平均給与額が、日本を世界トップクラスの「社員が会社を信頼しない国」へと導いたのです。
なぜ変革が進まないのか、その背後に潜む「考え方」の欠如とは何でしょうか?
中学時代に習ったこと、覚えてますか?
多くの人にとっては、すべての勉強の基礎になっている大事な「当たり前」のことですが、思い出せと言われても思い出せる方は少ないでしょう。
この「この一冊ですべてわかる 人事制度の基本」には、人事の当たり前が詰まっています。
ー「なぜ、あの人が?」
なぜ多くの企業で「評価基準」が曖昧になっているのでしょうか。
どうすれば給与が上がるのでしょうか。
11,000人超の人事担当者から絶大な支持を得るコンサルタントが、今まで9割の会社が明かさなかった「絶対的な指標」を初公開!
テレワーク時代には「ジョブ型」に留まらず、「超ジョブ型人事」が不可欠。
その一番の理由は、テレワークをはじめとするこれからの働き方には「監視しない事が重要であるから」です。
人事の“必須科目”を押さえる
プロの人事力
次のステージに向けて成長するためのキホン
人事担当者に必要な知識・学び方、仕事に対する心構え、業務との向き合い方、さらには人事マネージャー、人事部長へとキャリアアップするために必要な能力・スキルを一挙公開
いままで受け身の姿勢で仕事をしてきた人事が、急に主体的に動かなければならない
仕事を任されたとしてもうまく動けないことがほとんどでしょう。
そうした時に「社外の人事のプロ」に依頼することで
これまでの「受け身人事」の性質から脱却することができるかもしれません。
年功序列による評価制度が崩れつつある現在ですが、
20代には20代の、30代には30代の、40代には40代の求められているものがあります。
自分の年代に求められているものは何か、しっかりと把握して評価につなげましょう。
社員のモチベーションを上げたいと思った時、
効果的なのは社員が喜ぶ施策ではありません。
本当に必要なのは「働く考え方改革」であり、
仕事に対する意識の変革です。
人事制度の改革には反対意見がつきもの。
私たち人事はその反対意見に対して
どのように対処していけばいいのでしょうか?
今回は人事制度改革を行うにあたり、
意識しておくべきことをご紹介いたします。
第4次人事革命において最も重要なのは、「どこでも通用する人材」をつくる人事施策です。それができれば優秀な人材が集まります。「あの会社に入れば、どこでも通用する」というのは、どんな求人メッセージよりも強力です。今回は、フォー・ノーツ株式会社の代表であり『超ジョブ型人事革命』(日経BP)の著者・西尾太が、どこでも通用する人材=「超ジョブ型プロフェッショナル」のつくり方をお伝えします。
「頑張っていること」を評価したい、
という気持ちを持つのは悪いことではありません。
しかし、その気持ちを本当に評価に反映してしまうと、
社員の不満の元になってしまいます。
人事異動を拒否する人が稀にいます。拒否するにはそれなりの理由があるはずです。人事部はどのように対応したらいいのでしょうか? 今回は「人事異動」シリーズ第2回。『超ジョブ型人事革命』(日経BP)の著者・西尾太が、人事異動を拒否された際の正しい対処法について紹介します。
管理職の能力が不足している、期待した成果を出してくれない。そんな場合、人事はどのように降格を伝えたらいいのでしょうか? 年功序列の撤廃、ジョブ型の導入などによって、今後、人事は管理職に降格を伝える場面が増えていくでしょう。そこで今回は、人事のプロフェッショナル集団、フォー・ノーツ株式会社の代表であり、『超ジョブ型人事革命』(日経BP)の著者・西尾太が、降格人事の伝え方と、管理職の降格基準についてお伝えします。