導入事例
徹底的に議論に付き合ってくれたことで、
会社の文化を上手く取り入れた人事制度を
構築できました。
人事部人事課 課長 T.N氏
日本の“Monodzukuri”を武器に様々なフィールド、地域で活躍する東亜電気工業株式会社。その歴史は創業から71年を数え、長きにわたって活躍をしてきた企業です。一方で、そのような長い歴史があるからこそ、社内の風土には前時代的なものがまだまだ残っていたとのこと。今回はそんな中で新たな人事制度の改定というチャレンジをした、人事部のT.IさんとT.Nさんにお話を伺いました。
新人が育たないという危機的状況
―御社の企業風土をお聞かせください
岩渕―弊社はもともと、個人商店的な営業活動で業績を伸ばしてきた会社で、いわゆる野武士集団のような、個人営業に長けた人間の集まりでした。人材育成も似たような形で、体系だったものがあるというよりは、先輩の後姿を見て良い部分を盗み取れ、という風潮がありました。
ただ時代が変わると、従来の考え方や成功体験が通じなくなくなってきました。「先輩の後姿を見て学べ」と言っても「どういうことですか?」とあまり通じなくなってきたんです。
―人事制度はどのような形でしたか?
岩渕―年功序列的に一律に上がっていく給与体制でした。でもこの体制だと、給料の高いベテラン社員の満足度は非常に高いのですが、仕事で成果を出している割に給料が少ない若手社員にはやはり不満が残ります。その結果、入社後数年でやめてしまう社員がかなりの割合に上るようになりました。
中西―ざっくりとはなりますが、新卒3年目までの離職率が4割くらいでした。2007年から2014年までの人数を計ってみると、残っている社員数より退職者数の方が上回っている状況でしたので。
―危機的な状況ですね。
岩渕―そうなんです。そのような状況の最中、社長の重田自らが「新人が育たないのは大きな経営課題である」と改革の旗を揚げました。私たち人事課もやるべき事は人材育成だと考えていましたので、人材育成を軸とするツールとしての「人事制度」と、育成担当と新人が共に育つ「新人育成の仕組み」。
この2つを整備するための取り組みを始めました。
会社全体に育成ムードを醸成
―このうちの「人事制度」にフォー・ノーツは関わらせていただきました。その前にまず「新人育成の仕組み」についてお聞かせください。どのように整備していきましたか?
岩渕―まず、中西と共に新人育成を3か年計画でやっていこうと決めました。具体的には、新人が入ってきたら育成担当者を決めて、その担当者が1年を通して育成に携わるというものです。年4回ある新人研修のうち2回は同席して、一緒に新人の年間目標を決めてもらいます。さらに四半期ごとに進捗度合いを確認します。締めくくりは1年が終わる3月に、社長、役員の前で目標達成の成果発表をします。新人はもちろん、育成担当者でも社長の前でプレゼンする機会なんてそうそうありませんから、育成にも自然と力が入りますよね。
中西―それから翌年の育成担当者には、この成果発表を参考に、担当する新人の目標を考えてもらいます。「新人はすぐに辞めてしまう」というイメージがある中で、「1年でこれだけ発表できるようになる」という実例が示せる一方、育成担当者が適切なモチベーションを持てるようになりました。
岩渕―3年続けたところ良いスパイラルとなり、会社全体に育成のムードができ始めました。なんせ毎年育成担当者は変わりますので、数年たてば育成担当経験者が増えていきます。次第に職場ぐるみで新人育成をするようになりましたね。その結果、現在では新人の離職率が4割から1割と大幅に下がりました。
―全体で育成ムードを醸成していったということですね。人事を単なる制度ではなく育成の一環に置くという意味では、フォー・ノーツの考えと共通しますね。
中西―フォー・ノーツさんと関わるきっかけとして、社内の育成ムードを盛り上げようという我々の観点と、西尾さんの育成に重きを置いている姿勢がマッチングしたから、というのはありますね。
―「人事制度」では、フォー・ノーツが提案するコンピテンシーを用いた等級制度をあらためて導入していただきましたが、反応はいかがでしたか?
岩渕-フォー・ノーツさんの等級制度の良いところは、自分が何を求められているのかを明らかになるところです。自分に何が足りないのか、どこを伸ばせば成果につながるのかが明確だから、社員からしても努力がしやすいんですよね。
中西―今までは役職でしか考えられなかった職場が、等級という価値観を得て大きく進歩することができました。次の等級に行くためには何が必要なのか、という話題が社員同士の会話で出てくるようになりましたね。
岩渕―今年の新人研修では「どうしたら2等級に上がれますか?」という質問も出てきました。以前だったら考えられないことです。人事担当としては、今後もさらに等級要件の重要性を説いていくことで、単なる評価指標にとどまらせることなく、「意味合い」をつけていかなければならないと考えています。
―人事制度について社員アンケートを取られたそうですが結果はいかがでしたか?
岩渕―もちろん賛否両論あったのですが、それでも人事制度を支持するという回答が一定数あったり、報酬面での納得度が60%を超えたりと、意見を積上げる機会が創出でき、良い方向には進んでいます。
それから多かったのが、フォー・ノーツさんが開発されたB-CAVtestⅡという適性検査についてのコメントです。とても好評で、「一度しかやらないのか」「できれば毎年やってほしい」という声がありました。人事としても、1年に一度しっかりと振り返って自分のことをきちんと見直したい、と思っている社員が一定数いることがわかって非常によかったですね。
中西―等級制度に慣れていない人は、言葉で説明されてもわからないと思うんです。でもB-CAVtestⅡというツールを活用することによって、行動要件を具体的に示すことができ、社員のスムーズな理解につながったんだと思います。
【理念とキャラクターにひかれて】
―フォー・ノーツをどうやってお知りになったのですか?
岩渕―研修会社からの紹介でした。「西尾さんという人が手厚い人事制度作りをやっているので、セミナーに参加してみませんか?」と。それが今から8~9年前だったと思います。その時から、「将来この人と一緒に仕事をするんじゃないか」という予感は持っていました。社内で育成ムードが出来上がっていくうちに、「社員育成のための人事制度を」という西尾さんの考え方はやはりうちの社風に合うのでは、と思いコンサルを依頼しました。
―フォー・ノーツに決めていただいたのは、そういった理由があったのですね。
中西―それから、西尾さんのキャラクターも決め手でした。うちの社員にはグーっと人に寄っていくタイプの人が多くて。西尾さんもグーっと行くようなタイプなので、似てるんですね。
岩渕-研修場面などでうちの社員もとてもよくしゃべるのですが、そんななかで、西尾さんがうちの社員に「ちょっと聞いて!聞いてぇー!」って大声で喋りかける場面もよく見ました。
【議論をして、お互いの理解を深める】
―西尾と人事制度を構築していくうえで、実際に問題になったことなどはありましたか?
岩渕―報酬関係はよく問題になりました。我々はいわゆる日本的な企業なので、給与体制に関しては年功主義に代表されるような、ある意味家族主義的な歴史背景です。一方西尾さんは、人事のプロとして時に合理的な厳しい方針を示される。私たちも人事制度改革をする中でも守りたい部分がある。それでよく議論になりました。
中西―でも、これは西尾さんだからできたことだと思います。他の人だったら遠慮して「そうですか」と言わざるを得ない部分もあったかもしれない。でも西尾さんのキャラクターがあるから、「うちの文化はこうなんですよ」というのをきちんと説明できて、西尾さんにも理解していただけるところは理解していただけたんだと思っています。
岩渕―以前他の会社にコンサルに入ってもらったことがあるのですが、その時は結構言われるがままでした。でも西尾さんは同じ目線で「一緒に作っていきましょう」という感じでしたね。
中西―もちろんぶつかっている時には「なんでわかってくれないんだ!」と思いますけどね。ただこれも、いいパートナーとして、議論に付き合ってくれてたんだな、と思い返してみると分かります。
【人事を通して経営層と共に理解を深めるという体験】
―社内からの反発はありませんでしたか?
中西―最初はありました。心が砕けそうな反応を受けたこともあります。しかし、推進していく中で制度の目指す姿を説明していく事で少なくなっていきました。また、その状況に甘えることなく、向き合うことが大事だと改めて感じています。
岩渕―社内、という意味では経営層もですね。最初はコンサルタントというものに対して警戒心があったことは確かだと思うんです。「言いなりにはならないぞ」というような。でも最終的には融和関係に変わりました。「これは私たちの従来の考え方を変えていかなくては」と。西尾さんとお付き合いしていく中で、西尾さんの考え方が非常に合理的で、求めるべき姿であると気づいたのだと思います。
中西―今年の4、5月に最終評価会議があったんです。全部で3回のシリーズで、すべてに社長が出席していたのですが、全部の回ですべてに賛成してもらえました。西尾さんと話していくうちにイメージを掴んでもらえたんだと思います。社員には厳しいことを伝えなくてはいけない半面、経営層を巻き込むことができた、というのは貴重な経験です。
岩渕―経営層と共に推進できれば、パワーに換えられますから。会社規模です。
中西―その感覚を得ることができたのは、弊社にとって大きな経験ですね。
【人事制度で会社のビジョンを達成する】
―今後は御社の人事をどのようにしていきたいですか?
中西―新人・中堅社員を対象にした育成制度のブラッシュアップはもちろんのこと、キーとなるリーダーの育成方法の策定、女性活躍を促進するというミッションがあります。この先は給料だけでなく、人を育てた歓びも感じられる会社にしていきたいですね。
岩渕―等級制度が明確になり、ベースはできました。これからは次世代の事を考え、キャリアステージを描ける人材マップ作りに着手しました。当然全員がリーダーになる訳ではありませんから、ある程度早い時間から次期リーダーの選定や育成が可能な制度が必要です。
それから、グローバル人材の育成も責務です。会話だけではなく異文化理解や一歩前に踏み出す力といったものを育てていかなければなりません。グローバル人材も全員がなれる訳ではありませんので、世界で活躍できるのは誰なのか、逆に海外にある現地拠点で優秀な人材は誰なのかを見極め、国内と国外の交流を密にして、「世界中のMonodzukuriを実現する」というビジョンを掲げています。ビジョンを実現させるための人事制度を構築していきたいです。
中西―私たちってこういった、実現したい事であれやりたいとかこれやりたいとかいう夢を語れるんですよ。
岩渕―人事制度を作った時もそうでした。夢がないと実現できないじゃないですか。現状維持路線ではなく、若い人が将来や夢を描ける会社にしていきたいですね。
【人事制度はあくまでもツールだということを忘れないで】
―最後に、人事制度に悩んでいる企業さんへ、メッセージを
中西―大切なことは、「何故人事制度を作らなければいけないか」という背景をつかむこと。人事制度は目的ではありません。あくまでもツールです。作れば何もかもが上手くいく魔法の杖ではありません。結果を残すためには自分たちがしっかりと運用していかないといけないんですね。制度作りに関わる事で学ぶ事が出来たと思います。
岩渕―まずはビジョンや夢とか、会社としてあるべき姿をどこに求めていくのか。そのために人事制度が手段としてどうあるべきなのか。まずはそこを描かないと意味がない。経営と人事は最終的にマッチングしていくものですから。
中西―それから夢を語ってください。夢のある人と話している方が、愚痴ばかり言っている人と話すよりも楽しくないですか?岩渕が言ったような夢を話して、それを一緒に追いかけるということも必要だと思います。
岩渕―そうですね。大いに夢を語って、ドキドキ感やワクワク感を味わってほしいです。フォー・ノーツさんの素晴らしいところは、私たちと同じ目線に立って、私たちと同じ夢を語ってくれるところなんです。せっかくコンサルをお願いするのなら、遠慮せずに理想や夢をガンガン伝えて、一緒に追いかけていってほしいですね。
会社名:東亜電気工業株式会社
代表者:代表取締役社長 重田 明生
設立:1947年6月17日
従業員:340名
事業内容:電子・電気材料・電子部品及び電気絶縁材料/工業材料及び関連機器/環境衛生機器及び関連部品
WEB:https://www.toadenki.co.jp/