2020.07.31
コロナウイルスの影響で、賞与のカットや社員の解雇が話題となっています。 「一時帰休」というワードを目にすることも多くなったのではないでしょうか。 当然しないに越したことはない「解雇」ですが、この情勢下、それでも考えなければならない方も多いはず。今回は企業の業績低迷時に決断しなければならない、賞与カットや昇給停止、そして解雇について解説します。
業績悪化を乗り切るために、まずやるべきことは、当然ですが経費削減です。
昼休みの消灯、空調の温度を上げる。出張を減らして旅費を抑える、文房具を買うのを控える……と、まずは比較的すぐに着手できるところから始めましょう。飲み会の補助費など、法定外の福利厚生にかかるお金を削減することも考えられますね。
しかし、経費の削減は当然社員のモチベーションの低下にも比例します。他部署にも直に関わってくることなので、人事だけでなく、ほかの部署とも協力することが必要不可欠です。
残業代や賞与の削減も考えなければいけません。業績が悪い状況で残業させることは非効率です。社員を定時で帰すよう、管理職に働きかけましょう。残業代がなくなる=変動する経費が大きく減る、ということは、かなり重要と言えます。
賞与の削減も慎重に行わなければいけません。
賞与はそれまでの業績に応じて(大抵は半期ごとでしょう)決められるのが通常です。そのため、「今」業績が悪いから、「将来」業績が悪くなりそうだから、という理由で簡単に削減することはできません。
ルールを無視して賞与を減らすこともできなくはないかもしれませんが、当然社員の信頼は失います。
賞与を減らす決断をする前に、今一度会社のルールや考え方を整理しましょう。
次に、検討すべきことは採用の抑制。
採用抑制は、社員をやめさせるより実務的にも心理的にも簡単にできる施策です。しかし、会社内の年齢バランスが崩れ余剰人員が生じるなど、確実に将来的に問題が生じます。
採用の抑制を検討する場合には、将来の事業戦略に基づいているかどうかをよく考える必要があります。
非正規雇用の扱いについても注意が必要です。非正規雇用者を解雇してしまうのは、一番安易な手です。業績が良くなった際に再び働いてもらえるよう、シフトを減らすに留めるなど、会社に繋ぎとめておくことが重要です。
こちらも簡単に決められるものではありませんが、昇給停止についても会社全体で抑制を行うのか、それとも部分的に行うのか検討しなければなりません。
単純に昇給を減らしてしまうと、必要な社員はどんどん会社を離れてしまうでしょう。そのため、昇格を含め評価制度は評価制度として実施する必要があります。
また、こうした賞与のカットや昇給の停止を行う際は、同時に役員の待遇も見直すべきです。
役員の待遇だけがそのままでは、当たり前ですが社員の反感を買います。
冒頭にも触れましたが、社員の一時帰休も手段の一つ。会社の一部業務を休業するのです。通常通りの業務を行うべきか、業務を休止するべきか、雇用調整助成金などの補助金との兼ね合いで決めましょう。
もし、あなたの会社が、人員が足りていない会社(例えば同じグループ会社など)に、自社で持て余してしまっている社員を出向させられるというのであれば、それも一つの方法でしょう。社員を解雇することなく、経費を削減することができます。
このように、万事に至るまで手をつくしたうえで、それでも会社が立ち行かなくなってしまった場合に、いよいよ解雇を検討する必要が生じてきます。
企業と社員との契約解消の方法には、大まかにわけて下記の四つの形式があります。
①辞職(自己都合退職)
②自然退職
③合意解約
④解雇
一つ目の辞職(自己都合退職)とは、社員側からの退職届提出による一方的な契約の解消となります。退職は基本的には使用者の合意を必要としないため、社員の意志のみで成立します。
二つ目の自然退職とは、契約期間が満期になったため自動的に契約が解消される場合と、休職休業期間内に復職できない場合に退職となる場合の二つのケースがあります。
前者の例としては定年退職が挙げられ、後者の例としては病気のため復職ができなくなることが挙げられます。
三つ目の合意解約とは、企業と社員との双方が合意の上で雇用契約を終了させるものです。
企業側から社員へ雇用契約の解消を求めることがほとんどで、社員が契約の解消を望むならば退職願を提出することで合意解約は成立します。
四つ目の解雇とは、企業側からの一方的な契約の解消であり、懲戒処分や心身の故障などの社員に何か問題がある場合か、経営不振などの企業側の都合による場合の二つのケースがあります。
特に後者は整理解雇と呼ばれ、これを行うには原則として四つの要件(整理解雇の四要件)が充たされている必要があります。
1.人員整理の必要性
2.解雇回避努力義務の履行
3.被解雇者選定の合理性
4.解雇手続の妥当性
多くの企業ではリストラを行う際、様々なリスクをはらむ解雇をするのではなく、退職勧奨をして社員に合意退職するよう促します。
解雇は当然しないに越したことはありません。しかしどうしても実施しなければならない状況に直面した場合には、人事担当者は覚悟を持たなくてはなりません。
安易に解雇という手法を検討するのではなく、まずは出来る限りの対応を行いましょう。どうしても人員削減が必要になった場合は、「解雇」というかたちではなく、「希望退職」や「合意解約」が望ましいです。
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