2019.11.29
日本の人口の年齢別分布の現状と予想されている推移を考えると、
年功序列型の給与体系を維持するのは難しいと言えます。
年功序列型給与体系を脱却する糸口となるのが、「給与が下がる仕組み」です。
どのような基準で下がるのかを明確にする必要があります。

年功序列型の給与制度が根底に残り続けている日本の企業。最も多く給与をもらっている年齢は55~57歳ですが、その年齢が最も良いパフォーマンスを発揮できる年齢かというと疑問が残ります。出した成果には伴っていないものの、「今まで頑張ってくれているから」「ずっと給与を上げ続けているので今年は上げないとは言いづらいから」といった理由で給与を上げたり維持したりしているのであれば、それは立派な年功序列型にはまった給与制度と言えるでしょう。
さて、年功序列型の給与が続くと、日本企業はどうなるのでしょうか?
年功序列型の給与制度は、実際に成果を出している世代が、高年齢層の給与を支えています。以前は若い世代の方が企業にたくさんいたので、その給与制度を可能にしていました。しかしご存知のとおり、日本は高齢化社会を迎えます。
2020年、日本人の平均年齢は48.9歳になると言われています。この数値は先進国トップで、先進国だけでは平均年齢は40.2歳、全世界では30.9歳になります。高齢化社会が叫ばれて久しい昨今ですが、数値にも顕著に現れていると言って良いでしょう。
年齢別の人口分布図を見てみると、60歳までで最も多い年齢は、平均年齢と同じく45~49歳です。第一次ベビーブームが起こったのが大体今から70~72年前。その子供の世代が45~49歳で、人口は男性494.5万人、女性484.2万人です。一つ上、50~54歳の人口は男性436.2万人、女性431.4万人なので、ベビーブームの影響は色濃く受けていると見られます。
ただ、では45~50歳の方の子供の世代、つまり20代の方はどうかというと、20~24歳は男性316.3万人、女性300.3万人、25~29歳は男性317.0万人、女性300.3万人。30~34歳が男性333.7万人、女性320.1万人なので、増えているどころか減っています。そして、そこから年代が下がっていくにつれ、さらに減っていくのです。
今や採用は売り手市場。優秀な若手の人材は、自分の出す成果に見合った給与・報酬をもらえる職場を選びます。年功序列型の給与制度を支える若手はどんどん少なくなっているのです。つまり、年功序列型の給与制度は破綻の一途を辿っていると言えます。
対象となるのは大手企業だけではありません。中小企業も、昭和初期から続く企業も、そしてもっと古い時代から続いている企業の中にも変わろうとしている企業があります(ちなみに、私たちフォー・ノーツ株式会社はそのような企業のお手伝いをさせていただいています)
と、ここまで年功序列型の給与体系に警鐘を鳴らしてきましたが、「じゃぁどうすればいいの?」というのが本音だと思います。そこで見直してみてほしいのが、「給与が下がる仕組み」です。
「給与が下がる仕組み」を取り入れている企業は、けして少なくありません。しかし、正しくその仕組みが運用されている企業は、それほど多くはないのが現状です。多くの場合が「一度上がった給与は下げづらい」「給与を下げたら辞めてしまうのではないか」と二の足を踏んでしまいます。
企業の利益から「給与」として社員に分配できる金額は決まっています。出している成果以上の給与をもらい続けている人がいるのであれば、その分成果に見合っていない額しかもらっていない給与の人がいるはずです。つまり、下げるべき人の給与を適切に下げなければ、給与を上げるべき人の給与は上がりません。そして給与を上げることができなければ、優秀な若手人材はすぐにその企業からいなくなってしまいます。
ただ、給与は日常的にむやみに下げるものではありません。たとえば、とある企業では「SS、S、A、B、C」の5段階の評価を設け、評価それぞれでもらえる給与が決まっていたとします。この場合、上から3番目のA評価は「最初に立てた目標に到達した」という意味合いです。S評価、SS評価は、目標以上の成果を上げた時にもらえる評価になります。
ある社員は、2018年にS評価をとり、275,000円の給与をもらいました。2019年はA評価だったので、270,000円の給与をもらいました。2018年と2019年の給与を比べてみると、A評価をとっている、つまり目標に到達しているのに5,000円給与が下がっていることになります。目標にはしっかり到達しているのに、給与自体は下がった――この事実はその社員のモチベーションを低下させます。
ですので、一定の水準をクリアしている人の給与は下げるべきではありません。評価ごとに給与を決めるのではなく、安定して推移する基本給の部分と、評価によって細かく変動する部分を明らかにし、目標には到達しているのに給与が下がってしまうことのないようにすることが大切です。
ただその分、目標に到達しなかった場合、先の例で言えばB評価、C評価だった時は、情けをかけずに給与を下げる必要があります。そのような給与制度の構築を目指してみてください。

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