MBO(目標管理制度)では、「目標設定」ができたら、次のステップは「計画立案」です。計画を立てる際にマネージャーが留意すべき点は何か。人事評価をするすべてのマネージャーの必携書『この1冊ですべてわかる 人事評価の基本』(西尾太/日本実業出版社)から大事なポイントを抜粋して紹介します。

マネージャーがPDCAサイクルを回し、メンバーの成果評価につなげていく際、大きな効果を発揮する仕組みがMBO(目標管理制度)です。前回お伝えした方法で明確な「目標設定」ができたら、次に行うべきは「計画立案」です。
「計画立案」とは、無理なく目標を達成できる、考え抜かれた現実的な計画を立てること。目標達成のための計画立案では、途中のマイルストーン(確認ポイント)が設定されていることが大事になります。また、その計画には「いつ」「どこで」「誰が」「誰に」「何を」「なぜ」「どのように」「いくらかけて」(5W2H)が示されていることが必要です。
立案された計画は、ひとりよがりなものではなく、実行可能なものとして組織内で共有されていなければなりません。週次・月次・四半期などにおいても到達点が明示されており、計画通りに進んでいない場合、それを常に把握できる状態にしておきましょう。
計画には、目標達成を阻害するリスクも織り込んでおきます。物事は理想通りには進行しないものですから、どれだけリスクを想定できているかが目標達成のカギとなります。その想定されたリスクが発生したときのために「プランB」「プランC」まで用意しておくことが望ましい状態です。
【計画立案のポイント】
・計画には5W2H(Who、What、When、Where、Why、How、How much)が盛り込まれているか
・途中のマイルストーン(計画進行確認、修正地点)が明示されているか
・達成するための体制や役割は明確になっているか
・計画と実際の進捗との乖離が測定できる状態になっているか
・計画進行を阻害するリスクを想定しているか、その際の別計画は用意されているか
さて、ここで留意しておきたいのは、「目標」と「計画」の違いについてです。いろいろな場面で、マネージャーが「目標」と「計画」を混在してしまっている例を見かけます。目標は「あるべき到達点」であり、計画は「そこに向かっていくための段取り」です。
例えるなら、目標とは「明日の19時に大阪の肥後橋にある〇〇という居酒屋で一杯目のビールを飲み始める」といった、時間と場所と状態を明確にしたもの。19時ギリギリに居酒屋に着いても、ビールをまだ飲んでいなければ目標未達になります。
一方、計画とは、「19時にビールを飲み始めるためには、何時に居酒屋に着いていなければならないか、そして東京から向かうためには、新幹線に何時に乗らなければならないか、そのために東京本社を何時に出発しなければならないか」といったことを指します。
また、「飛行機を使う」「高速バスで行く」といった代替案「プランB」「プランC」も用意しておくことが必要です。新幹線が遅れる・不通になるなどのリスクを想定し、別の計画を発動させる用意をしておかなくてはいけません。場合によっては、もっと早く本社を出るという計画も成り立つでしょう。
目標しかなければ、「どうやってそこに行くのか」がわかりません。計画しかなければ、「どこに向かっていくのか」がわかりません。混在させてしまうと、「何をしているのかよくわからない」という事態を招きかねないのです。マネージャーは、目標と計画を混在させないように注意してください。それをしてしまうと、メンバーの仕事に多大な影響を与えます。
マネージャーの計画立案においては、「活動投入量」の見積もりも大事です。次の図は、「目標を達成するためには早期に活動量の投入を計画することが大切」ということを表しています。
計画と投入活動時間

点線の「学生シンドローム曲線」は、納期がわかっているのに(たとえば、いつテストがあるのかわかっているのに)、最初に少しだけそれに取り組むものの「まだ大丈夫だろう」と安易な見積もりをして(あるいは何も考えず)、納期直前になって慌てて行動を始める状態を表しています。
そして、土壇場になって「もっと早く取り組んでおけばよかった!」と後悔し、納期前後やテスト当日に修羅場を迎えて失敗する、というものです。私も学生時代から若い頃までは、まさにこの図の通りでした。
一方、納期を必ず守るマネージャーやビジネスパーソンを表しているのが「プロの仕事ぶり曲線」です。こちらは、余裕を持った計画とその実行ができている人が多いようです。最初に多くの活動量を投入しておけば、計画通りに進みそうか、そうではなさそうかも早めに予見でき、計画修正も容易になります。
優秀なマネージャーになるためには、「活動投入量」の見積もりを行い、適切な「計画立案」をすることが、タスクマネジメントにおける重要なポイントと言えるでしょう。
拙著『この1冊ですべてわかる 人事評価の基本』(西尾太/日本実業出版社)では、目標設定ツールBSC(バランスド・スコアカード)の視点を織り込んだMBOシート、BSCのチーム展開表と計画表など、より具体的な目標設定や計画立案の方法を紹介しています。こちらも参考にしてみてください。

『この1冊ですべてわかる 人事評価の基本』
西尾太(日本実業出版社)
「人事評価」をするすべてのマネージャーの必携書。本書を読めば、人事評価制度の意義と目的、評価者としての正しい態度・考え方、組織に合った評価指標の選び方、タスクマネジメントや目標管理の手法 、評価面談と評価会議の進め方、部下のポテンシャルを引き出すコミュニケーション方法などが一気通貫に理解できます。

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