2026.07.24
管理職の大半が「好き」ではないという人事評価。自己評価が高すぎる部下の評価は、特に悩む上司が多いようです。人事評価をするすべてのマネージャーの必携書『この1冊ですべてわかる 人事評価の基本』(西尾太/日本実業出版社)から、その解決策を紹介しましょう。評価の鍵を握るのは、「しんどいマネジメント」と「楽なマネジメント」です。

人事評価にまつわる管理職の悩みには、さまざまなものがあります。なかでもよく聞くのは、「メンバーの自己評価が高くて下げられない」というもの。5段階評価で上から「SS・S・A・B・C」だった場合、標準評価「A」も怪しいような部下が「成果評価S・行動評価S・総合評価S」などと高すぎる自己評価をつけている。項目によっては、「SS」さえつけていることもあります。そんな場合、上司であるあなたは、どのように対応していますか?
クライアントの評価会議に参加していると、メンバーの自己評価をなぞるように「S」や「SS」評価をしてしまっている上司が少なくありません。その根拠を尋ねると、次のようなやりとりになったりします。
「なぜこのような評価をしたのですか?」
「うーん、正直いうと『S』は少し甘いかなと思いましたが、まあ頑張っていましたし、本人の評価はなるべく尊重してあげたいと」
「本人の自己評価では『SS』もありますよね。『SS』は、突出した成果や行動に対する評価。営業部でいえば、前年比150%が『SS』です。この方は、期初に定めた達成基準をクリアしていないのに、自己評価に『SS』をつけています。自己評価面談の際に、こうした評価基準について伝えていますか?」
「いえ、あの、メンバーそれぞれの考え方があると思いましたので、特には伝えてないです……」
上司としてOKと思っているならともかく、不足だと思っているのに本人の評価だからといって認めてしまう。そもそも評価の基準も伝えておらず、フィードバックも怠っている。これではマネージャーの仕事をしているとは言えません。
部下の誤った自己評価を上司が認めてしまったら、本人の勘違いはさらに助長してしまいます。こうした誤った対応の仕方は、評価だけの問題ではありません。日常マネジメントの問題でもあるのです。
マネジメントには、「しんどいマネジメント」と「楽なマネジメント」があります。評価会議や管理職研修の際、「日常的には特に目立った注意や指摘をせず、評価のタイミングで厳しいフィードバックを行う。これはどちらだと思いますか?」と尋ねると、多くの方が「楽なマネジメントですか?」と答えます。
実は違うのです。これが「しんどいマネジメント」です。普段から言うべきことを言っていないから、部下の自己評価が高くなる。さらには評価面談で本人が想像もしていなかったフィードバックをされることによって、無駄な軋轢を生み、しんどい状況になっていく…。このような事例が非常に多く見られます。
普段のコミュニケーションが適正に行われていないから、自己評価が高すぎる部下の勘違いを助長してしまう。また、評価の段階になっていきなり指摘するので、相互不信を招いてしまう。このような“うまくいかないマネジメント”のことを、私は「しんどいマネジメント」と呼んでいます。
「しんどいマネジメント」は、メンバーを日常的に見ていないか、見ていても「お友達」のような感覚で接していて、普段から問題点を指摘していない場合に起こりやすくなります。評価者がその調子では、メンバーは自分の足りない面に気づかず、「自分はイケている」と勘違いしてしまうかもしれません。
その結果、部下の自己評価が高くなり、評価面談で厳しい指摘をしても納得感が得られず、今後の成長も見込めなくなってしまう。部下の成長も阻む悪循環を生み出す行為、それが「しんどいマネジメント」なのです。
<しんどいマネジメントによる悪循環>
・日常の行動を見ていない。お友達感覚で接している
・メンバーはそれでいいと思う
・自己評価が高くなる
・評価面談でいきなり厳しい評価をする
・本人の期待未満の評価と報酬
・不満が残り、次につながらない、成長しない
では、一方の「楽なマネジメント」とは、どのようなものなのでしょうか。楽なマネジメントとは、日常的に不足している点を指摘し、改善を求め、評価者とメンバーの意思疎通がはかれている状態をいいます。これなら、部下は自分の課題を認識し、必然的に自己評価も現実に即したものになります。
日常的に評価者と部下で意思疎通ができていれば、自己評価と評価者の評価は近くなります。無駄な軋轢も生まず、有益なコミュニケーションがなされます。そして、本人と上司の評価をあらかじめ揃えておけば、評価の場ではむしろ「褒める部分」にフォーカスすることができ、課題点についてはすぐに今後の改善プランに入れることができます。
日常的に指摘し、褒めることもして、メンバーに問題点を理解させて改善を促していく。それが「楽なマネジメント」です。改善されればそれで良し。改善されなくても、適切な自己評価につながります。
普段は厳しく接していても、評価面談では「ここはよかったんじゃないか」といって自己評価以上の評価にしたり、あるいは厳しい評価のままでも、日常的なマネジメントができていれば、メンバーの納得感が得られます。適切な自己評価は、その後の成長にもつながる好循環を生みだすのです。
<楽なマネジメントによる好循環>
・日常のマネジメントでは、しっかり指導し、できていない点を指摘する(叱る)
・メンバーは適宜、問題点や指摘されるポイントを意識する
・自己評価が厳しくなる
・評価面談は、「褒める」場に
・本人の期待以上の評価と報酬への反映
・厳しい評価でも納得感が得られる
1on1や定期的な面談などを行い、普段からメンバーのことを理解するようにしていないと、適切かつ納得感のある評価にはつながりません。ぜひ「楽なマネジメント」を意識し、実践してみてください。
拙著『この1冊ですべてわかる 人事評価の基本』(西尾太/日本実業出版社)では、評価者としての正しい態度・考え方、評価面談と評価会議の進め方、部下のポテンシャルを引き出すコミュニケーション方法なども紹介しています。こちらも参考にしてみてください。

『この1冊ですべてわかる 人事評価の基本』
西尾太(日本実業出版社)
「人事評価」をするすべてのマネージャーの必携書。本書を読めば、人事評価制度の意義と目的、評価者としての正しい態度・考え方、組織に合った評価指標の選び方、タスクマネジメントや目標管理の手法 、評価面談と評価会議の進め方、部下のポテンシャルを引き出すコミュニケーション方法などが一気通貫に理解できます。

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