2023.11.13
あなたは「磯野波平さん」の年齢を知っていますか? そう、あの国民的人気アニメ『サザエさん』に登場する、サザエさん、カツオくん、ワカメちゃんのお父さんで、フネさんの旦那さん。家ではいつも着物姿で、ハゲた頭頂部に1本だけある髪の毛がトレードマークの波平さんです。
あなたは「磯野波平さん」の年齢を知っていますか? そう、あの国民的人気アニメ『サザエさん』に登場する、サザエさん、カツオくん、ワカメちゃんのお父さんで、フネさんの旦那さん。家ではいつも着物姿で、ハゲた頭頂部に1本だけある髪の毛がトレードマークの波平さんです。
アニメの公式ホームページを見て、私はびっくりしました。サザエさん一家のキャラクター紹介には、次のように書かれています。
磯野波平 NAMIHEI ISONO / いその なみへい
年齢は54歳。威厳と貫禄たっぷりのお父さん。曲がったことが大嫌いで気難しいところもありますが、情に厚くお人好しの面もあります。趣味はたくさんあり、囲碁・盆栽・釣り・俳句・骨董品の収集などなど。(『サザエさん』公式ホームページより)
なんとまだ「54歳」だったのです。波平さんのような「50代」って、あなたの周りにいらっしゃいますか? 私の知り合いには1人もいません。
私自身も50代です。波平さんより年上の56歳になりましたが、「威厳や貫禄たっぷり」なんてことはまったくありませんし、囲碁や盆栽、俳句、骨董品の収集もしていません。
髪の毛だって波平さんよりもあります。
実際の50代は、もっと若いですよね。今の世の中に波平さんのような50代は、たぶんいないと思います。現代の感覚では、波平さんは75歳くらいに見えます。
『サザエさん』の原作漫画が始まったのは、戦後まもない昭和21年。今から75年前の1946年です。アニメが始まったのは、昭和44年。ちょうど今、51〜52歳の人たちが生まれた1969年です。
『サザエさん』の物語は、基本的に時間が止まっています。波平さんは、75年前、あるいは50年前の54歳なのです。
でも、今の若い人たちにとっては、「50代」といえば、波平さんのようなイメージのままなのかもしれません。
いえ、若い人だけでなく、実際に50代になっている人ですら、そう思っている人が多いかもしれません。その「50年前のイメージ」が、昨今の早期退職・希望退職という名のリストラに大きく影響しているように思えるのです。
50年前の日本は、高度成長期でした。日本人はみな若く、平均年齢は20歳代。経済は右肩上がりに成長していました。終身雇用が保証され、リストラなんて言葉もなかった時代です。当時の定年は55歳。波平さんは、定年まであと1年です。
だから、あくせく働いたりせず、趣味を楽しみながら、残り少ないサラリーマン人生を謳歌されていたのでしょう。
一方、現在の日本は、少子高齢化が進み、平均年齢はほぼ50歳、定年は60歳まで伸び、65歳までの雇用確保義務が段階的に実施されています。2021年には、70歳までの就業機会の確保が努力義務になりました。
年金の支給年齢もどんどん引き上げられています。日本経済はバブル崩壊以降、30年にわたってほとんど成長できない状態が続いています。
この50年で、日本は大きく変わりました。にもかかわらず、50年前と同じ、年功序列型の給与制度を続けている会社が多くあります。
年功序列型とは、「後払い」の給与制度です。若いうちは給料が少ないけれど、40〜50代になったらたくさんあげますからね、という仕組みになっています。
1971年から1974年にかけての第二次ベビーブームなど出生数の多かった世代が、今では40〜50代になり、給与が最も高い世代になりました。
多くの会社で、この世代によって増えすぎた人件費が経営をひっ迫するようになり、このまま放っておいたら、あと20年も30年もこの状態が続くことになります。
だから企業は、45歳以上の早期退職・希望退職という名のリストラで、40〜50代の人数を減らそうとしているのです。年収1000万円の40〜50代を1人リストラすれば、300万円の20代を3人雇えます。
もちろん40〜50代であれば、誰彼かまわずリストラしようとしているわけではありません。パナソニックでは2021年7〜8月に実施した早期退職制度で1000人超の社員が退職しましたが、これについて楠見雄規社長は「退職を選んだ社員の中には、将来の活躍を期待していた人材も含まれていた」として、組織再編のねらいなど、社員への説明が不十分だったという認識を示しました。
50代の社員であっても、豊富な経験に基づく的確な判断能力や危機管理能力、長年の経験によって身につけた専門性の高い知識や高度なスキルに期待する声は多くあります。ただ一方で、成長意欲の低い50代の社員に関しては「新たな知識を取り入れようとしない」「昔のやり方に固執する」「やる気がない」「すぐにでも辞めてほしい」など、厳しい声もあがっています。
要は、これ以上、成長しようとせず、期待もできない人は、45歳以上になったら早期退職・希望退職をしてほしい、ということなのです。
「50代=波平さん」のイメージなのだとしたら、確かに今後の成長を期待するのは難しいかもしれません。波平さんがExcelやPowerPointを使いこなしたり、ZoomやSlackで部下とコミュニケーションをしたりしている姿は想像できませんよね。スマホさえ使えるのか怪しいものです。
でも実際の50代は、そうではありません。時代に適応し、成長している人も多くいます。ましてや40〜50代は、日本の人口の最大のボリュームゾーンです。
生産年齢人口(生産活動の中心にいる人口層のこと。15歳以上65歳未満の人口がこれに該当します)も多く、平均年齢(ほぼ50歳)ど真ん中の世代でもあります。
早期退職・希望退職を実施している企業は、会社の若返りを図っています。人気企業・有名企業は、新卒の応募もたくさんありますから、優秀な若手を選べます。中高年をリストラして、若返りを実現することは十分可能でしょう。
ですが、普通の中小・中堅企業は、若手の採用が難しくなっています。そもそも少子高齢化によって若者自体が激減しているのですから、「若手で若返りをしましょう」というのは、今の日本では非現実的なのです。
若手が少ないのなら、人口のボリュームゾーンである40〜50代が価値を出していかないと、日本の社会は立ち行かなくなります。この人たちを本当にリストラしてしまっていいのか、私は非常に疑問です。
実際の50代は、波平さんではありません。人生100年時代と考えれば、50代なんて、まだ若造です。まだまだ成長を期待できる世代なのです。
給与とパフォーマンスが見合わないのであれば、リストラをする前に、まずは「年収1000万円分の仕事をしてもらうためにはどうしてほしいのか」を正面切って話し合うべきです。年収1000万円の人に1000万円以上の仕事をしてもらえれば、本人だけでなく、会社も上司も後輩も、みんながハッピーなのです。
ただ、それはそれとして、50代になったことで「人生の終わり」のような気分になって枯れてしまっている人がいるのも事実です。
あなたが50代で、なおかつ「50代=波平さん」のような昔のイメージを引きずってしまっているのなら、その認識をアップデートしなくてはいけません。
2021年7月に厚生労働省が発表した2020年の平均寿命は、男性は81.64歳、女性は87.74歳。『サザエさん』の原作が始まった75年前よりも約30年、アニメが始まった50年前より10年くらい伸びています。
平均寿命が伸びているということは、今の50代は元気なのです。定年制度も伸びているのですから、自分たちが20代、30代だった頃の50代とは全然違うのです。50代になったからといって、枯れている場合ではありません。
私たちは70歳まで、あと20年は働くことになるでしょう。「会社にぶら下がろう」「このまま無事に定年を迎えよう」というスイッチの入れ方をしていると危険です。
企業も生き残るのに必死です。60歳の定年までは働けたとしても、65歳、70歳まではいられないように、必ず何らかの手を打ってきます。
「自分たちが頑張らないと、日本はダメになる、衰退してしまう。だから自分たちは、頑張らなきゃいけない世代なんだ」
そんな認識を持って、昔の50代のイメージをリセットしましょう。今の50代は、昔の30代後半。そのくらいの気持ちじゃないと、これからの時代は生き抜いていけません。波平さんのようになるのは、あと20年、30年先の話です。私たちが変化することによって、50代のイメージも変わるはずです。
次回に続く
人事という職に就いたならば、読む“義務”がある1冊
成果主義、職務主義、年俸制、人事部廃止… 90年代から変わらぬ「人事」の構造、変わらぬ平均給与額が、日本を世界トップクラスの「社員が会社を信頼しない国」へと導いたのです。
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この「この一冊ですべてわかる 人事制度の基本」には、人事の当たり前が詰まっています。
ー「なぜ、あの人が?」
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11,000人超の人事担当者から絶大な支持を得るコンサルタントが、今まで9割の会社が明かさなかった「絶対的な指標」を初公開!
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人事の“必須科目”を押さえる
プロの人事力
次のステージに向けて成長するためのキホン
人事担当者に必要な知識・学び方、仕事に対する心構え、業務との向き合い方、さらには人事マネージャー、人事部長へとキャリアアップするために必要な能力・スキルを一挙公開
中高年のリストラが止まりません。東京商工リサーチ によると、2021年の上場企業における早期・希望退職の募集人数は約1万6000人。前年の2020年は約1万9000人でした。2年連続で1万5000人を超えたのは、ITバブル崩壊後の2001〜2003年以来だといいます。リストラを実施している企業は、赤字とは限らず、好業績でも早期・希望退職を募っているため、「明日は我が身」と不安になっている方も多いでしょう。では、会社での自分のポジションが、どうであったらヤバイ、どうであったらセーフなのでしょうか。今回は、その目安について、お伝えしたいと思います。
コロナ禍前後からリストラの対象となっているのは、おもに45歳以上の中高年です。しかし40代、50代になったからといって、誰もがリストラされるわけではありません。歳を取っても会社で生き残れる人には、3つの特徴があります。 1つは、マネジメント力があること。マネジメント力には、「タスクマネジメント」と「ヒューマンマネジメント」の2つのスキルがあり、どちらも重要です。
50代になると、地位の格差、立場の格差などが開いてきます。しかし役職の有無や、組織やチームの規模を問わず、リーダーシップが求められるようになります。 では、リーダーに求められる資質とは、どのようなものでしょうか。 私は企業のリーダー研修プログラムで「目指すべき人材像」を5つのポイントに分けて紹介しています。OK例とNG例を交えながら説明しましょう。
タレントの高田純次さんが、以前にテレビでこんな話をされていました。「年を取ってやっちゃいけないのは、説教と昔話と自慢話」その通りでしょうね。若い人たちからしたら、説教・昔話・自慢話は聞きたくないはずです。言いたいことがあっても、そこはグッと我慢する。それが私たち50代に求められている基本的なスタンスでしょう。
私たち50代がリストラ時代を生き抜くために避けて通れないポイントは、若い世代から「老害」と思われないことです。 「50代はまだ老人じゃない」と思われるかもしれませんが、年齢は関係ありません。老害とは、自分より若い世代に迷惑をかけること。 30代であっても、20代に迷惑をかけていれば「老害」と呼ばれます。
「年下上司と、どのように付き合ったらいいのでしょうか?」50代の方々から、このようなご相談をよくいただきます。かつての部下や後輩が出世して自分の上司になってしまう。たしかに悩ましい問題ですよね。そこで今回は「年下上司との上手な付き合い方」について、お伝えしたいと思います。
ここ数年、「50代についての意見を聞かせてください」というご依頼が増えてきました。当連載もそうですし、『人事の超プロが教える 会社員 50歳からの生き残り戦略』(PHPビジネス新書)という本も出させていただきました。やはり中高年を対象とした黒字リストラや早期退職・希望退職を募る企業が増えているからでしょう。今回も「人事は中高年を実はこう見ている」というリクエストをいただきました。私は人事部時代、中高年の社員をどう見ていたのか。今回はこうしたテーマで、率直な意見や感想をお伝えしたいと思います。
最近、日本の賃金が上がっていないことが話題になっています。日本の平均賃金は1990年代の半ばまで世界でもトップクラスでしたが、他国にどんどん抜かれ、現在はアメリカの半分程度。ドイツやフランスなどの欧米諸国はもちろん、韓国よりも低く、OECDの最下位グループになっています。