2021.07.05
コンプライアンス違反という言葉を目にすることが増えてきました。コンプライアンス教育の重要性は、日に日に増しています。そもそも教育の目的や意義とは何か? 今回は、人事のプロフェッショナル集団、フォー・ノーツ株式会社の代表であり、『超ジョブ型人事革命』(日経BP)の著者・西尾太が、コンプライアンス教育の目的や労働法規の事例、研修について解説します。
コンプライアンスとは、「法令遵守」です。簡単にいうと「法律を守りましょう」ですね。コンプライアンスが重視される昨今、法律違反は許されません。人事担当者は、労働法規の基礎的な知識は必須です。労働法規というルールの中で、適法に会社の仕組みを構築し運用することが求められます。労働法規は比較的頻繁に改正が行われるため、常に最新の情報を収集しておくことも必要です。
ただし、近年、企業に求められている「コンプライアンス」とは、単に法律を守ることだけではありません。倫理観や公序良俗などの社会的規範に従い、公正・公平に業務をおこなうことを意味しています。要は、不正やハラスメント、情報漏洩など、迷惑行為をしないということです。しっかりとしたルールを作って、社員と共有し、それを守っていくことがコンプライアンス教育の目的となります。
では、そのルールはどこにあるのかというと、就業規則にあります。就業規則には、服務規律という項目が必ずあって、「これはやってはならない」ということがすべて書いてあります。
中小企業やベンチャーでは、よくある就業規則の雛形を持ってきて、そのまま使っているケースが少なくありません。これは大変危険です。
こうした就業規則が、すべての問題を網羅しているとは限りません。社員がちゃんと仕事をしない、社内でネズミ講をやっている、社内で宗教活動をやっているなど、労務問題になり得ることは数多くあります。服務規律の定めが甘いと、トラブルが発生したときの対応が難しくなり、会社にとって致命的なリスクになる場合があります。そのトラブルについて「服務規律に書いてあるかどうか」が命運を分けると言ってもいいでしょう。
あなたの会社の服務規律は、あらゆるリスクが想定されているでしょうか?服務規律とは、業務を遂行するにあたって労働者が守るべき行為規範のことを言います。服務規律は、さまざまな労務問題を防ぐためにあります。服装や業務に対する姿勢、企業施設の使用についてなど、その内容は多岐にわたります。
人事は、職場で起こるさまざまなトラブル、いわゆる労務問題はつきものです。労務問題は人の数だけありますが、大きく分けると以下の10項目に集約されます。
①採用時の問題
履歴(学歴・職歴)詐称、病歴等の虚偽の報告、入社手続き書類の不備等
②退職に関する問題
不適切な退職勧奨、退職手続きの不備による退職後のトラブル等
③勤怠異常に関する問題
行方不明、無断欠勤、度重なる遅刻・早退、勤務態度不良等
④労働時間管理に関する問題
過重労働、36協定違反、不適切な労働時間管理等
⑤メンタルヘルスに関する問題
うつ、適応障害等の精神疾患
⑥ハラスメントに関する問題
セクシャルハラスメント、パワーハラスメント、マタニティハラスメント等
⑦人間関係に関する問題
不仲、他者への誹謗中傷、社員間の金銭貸借等
⑧上司や同僚・部下に関する不平・不満
業務に支障を来たす不平・不満
⑨プライベートの問題に起因するもの
プライベートの問題、家庭の問題、介護・育児の問題、多重債務等により業務に支障を来たすこと
⑩不正に関するもの
横領、不正な経費精算、窃盗、情報漏洩、無断での他社就業等
これらの問題は、どこの会社でも起こり得るものだと想定しておいてください。人事担当者はリスクに対する知識がないと、会社に致命的なダメージを与えかねません。労務問題は対処を誤れば、致命的なリスクになります。社員に都合よく解釈され、問題が起こる原因にもなります。就業規則には、服務規律をしっかりと書いて、あらゆるリスクを投げ込んでおくことが重要です。
就業規則とは、会社で受け継がれてきた「秘伝のタレ」のようなものです。うなぎやとんかつの美味しい店には、創業当時から受け継がれ、継ぎ足されてきた「秘伝のタレ」がありますよね。就業規則も同じです。何か事象が起こるたびに、服務規律を書き加えていく。創業当時に作れられたタレを受け継ぎ、さらに継ぎ足していくことが重要です。
例えば、近年でいえば、SNSに関する規定です。創業当時には存在すらしなかったかもしれませんが、現在の社会では、会社にとって致命的なリスクになり得ます。「ソーシャルメディア利用管理規定」などを作り、基本原則や禁止事項などを具体的に明記しておかなくてはいけません。
労働基準法や労働法令もありますが、すべてが網羅されているわけではありません。「社内でこれをやっちゃダメだよ」と細かいルールを作って、秘伝のタレのようにしっかりと漬け込んでいく。何かが起こったときは、それを見て対処する。それは「自由度がなくなる」ということではありません。「守るべきものはしっかり守ろう」ということです。だから本当にちゃんとしている会社の就業規則は、すごく分厚いです。
就業規則こそが、コンプライアンスの規範となります。就業規則の内容は労働法規の内容を下回ることはできませんが、労働法規を上回る内容や、労働法規に定められていないことについては、さまざまに定めることができます。運用に不具合があるときや、定められていない事象に対して例外として対応を続けることが適切でない場合には、新たなに規定を作るなどして改定していきましょう。
もちろん規則を作るだけでなく、周知していくことも重要です。多くの会社では、入社式などで「就業規則はこれです」と言って終わりにしてしまいがちですが、それだけでは社員に伝わりません。定期的にコンプランス研修を実施する、各分野の専門家を招いてセミナーや勉強会を行って具体的な違反事例を伝えるなど、管理職や社員一人ひとりに考えてもらう機会を作ることが必要です。
人事担当者の皆さんは、労働法規や就業規則などの各種規定、コンプライアンスに関する基礎的な知識をしっかりと身につけ、事象に応じて、とんかつソースを継ぎ足していってください。
人事という職に就いたならば、読む“義務”がある1冊
成果主義、職務主義、年俸制、人事部廃止… 90年代から変わらぬ「人事」の構造、変わらぬ平均給与額が、日本を世界トップクラスの「社員が会社を信頼しない国」へと導いたのです。
なぜ変革が進まないのか、その背後に潜む「考え方」の欠如とは何でしょうか?
中学時代に習ったこと、覚えてますか?
多くの人にとっては、すべての勉強の基礎になっている大事な「当たり前」のことですが、思い出せと言われても思い出せる方は少ないでしょう。
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ー「なぜ、あの人が?」
なぜ多くの企業で「評価基準」が曖昧になっているのでしょうか。
どうすれば給与が上がるのでしょうか。
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テレワーク時代には「ジョブ型」に留まらず、「超ジョブ型人事」が不可欠。
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注目されている「ジョブ型雇用」は、
すべての会社にとって有効というわけではありません。
会社が人材についてどのような問題を抱えているかによって、
毒にも薬にもなり得るのです。
今回はジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用について、
そしてそのメリット・デメリットについて解説いたします。
年功序列による評価制度が崩れつつある現在ですが、
20代には20代の、30代には30代の、40代には40代の求められているものがあります。
自分の年代に求められているものは何か、しっかりと把握して評価につなげましょう。
採用担当者が就職活動にやってきた応募者に好印象を抱いてもらいたいと思うのは当然の気持ち。しかし、多数に嫌われようともターゲットを見定めてアピールすることも必要なことです。
採用担当者は採用する側だから、優位に立場である。
そういった意識を持っている人事は少なくありません。
この少子化の時代、その意識を捨てて自社を売り込む立場の目線を持つことが大切です。
人事制度の改革には反対意見がつきもの。
私たち人事はその反対意見に対して
どのように対処していけばいいのでしょうか?
今回は人事制度改革を行うにあたり、
意識しておくべきことをご紹介いたします。
学生が企業を「選択する」立場となった就職活動。しかし、多くの学生は選ぶ基準が分からずブランド力や知名度のある企業に流れてしまいがち。そんなときに試されるのが採用担当者の”営業力”です。
管理職の能力が不足している、期待した成果を出してくれない。そんな場合、人事はどのように降格を伝えたらいいのでしょうか? 年功序列の撤廃、ジョブ型の導入などによって、今後、人事は管理職に降格を伝える場面が増えていくでしょう。そこで今回は、人事のプロフェッショナル集団、フォー・ノーツ株式会社の代表であり、『超ジョブ型人事革命』(日経BP)の著者・西尾太が、降格人事の伝え方と、管理職の降格基準についてお伝えします。
人事5年目に必要なことを、フォー・ノーツ代表の西尾がお伝えします。
人事5年目ともなれば仕事ぶりも板についてきたはず。
このフェーズでは今やっている仕事に意味や理由を、
周りに説明できる能力が求められます。
さらにステップアップしたいという方は、5年後、10年後の会社の姿を考えて、
それまでに何が必要かを考えて行動してみましょう。